見出し画像

(詩)君を忘れない

「君を忘れない」

あなたの戦闘帽をはずす
二等兵とか大将とか 肩書もはずし
さん で呼びかける

生まれた時に着せられた
国防色の産着まで
脱がせてあげたかったけど
せめてあなたを
枠のない写真立てに 飾り直す
今年の夏も
いっぱいの青空の下

しかしまた私は
気が付けば軍靴を履いている
線路の繋ぎ目で
列車がふいに弾み よろけると
靴底から響く 鋲の音

時の列車は 決して
種明かしをしない
過客を揺さぶり
視点を 過去にしがみつかせる

そしてまた
吊り革を握ったまま死んだ
私を
目の前の座席で
スマホを覗いたまま死んだ
君を
忘れない

と 言わせるのだろう

突然巻き込まれたと
嘘は
青空のよう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?