何か創り出した2021年秋~星野源さんありがとう

Let’s take
Something out of nothing
Out of the ordinary
Breaking rules to create our own way
Playing everyday

Let’s chase
All the yellow magic
Till we count to a hundred
Running directly to you today
Playing over again

何か創り出そうぜ 非常識の提案
誰もいない場所から 直接に
いちを創り出そうぜ そうさYELLOW MAGIC
色褪せぬ 遊びを繰り返して

引用:星野源 オフィシャルサイトより「創造」Lyrics(以下、歌詞はすべてこちらより引用。)

 星野源さんが今年最初にリリースした曲「創造」。私は、仕事でも「ものづくり」に相当することを担っている。といっても、源さんの生み出されるような音楽、映画、ドラマ、エッセイなどの芸術作品ではなく、生活を豊かにする実用品でもなく、生活必需品でもない。では何かというのは、ものの特性上、私が露になってしまいそうなので、内緒。そういうわけで、とても響いたのだ。仕事を肯定してもらったようで。しかし、まさかその半年余り後、本当に"いちを創り出す"ことになるとは、今となっても"不思議"だ。
 そういう者に私はなれないと、諦めていた。小学生の頃、小説を書いたり、歌を作ったり、詩・短歌・俳句・川柳を書いたり、感想文を書いたりすることが好きだった。誰かに読んでほしくて、新聞に投書したりもした。現在取り上げられている社会問題について書かれた新聞記事と何ら関係もないものを書くことのほうが多かったのに、延べ十稿以上を採用してくださった大分合同新聞社の方々の懐の大きさに感謝している。子ども新聞記者も体験させていただいた。あのとき、物書きとしての自分の居場所をいただいたから、今がある。しかし、仕事にはできないなと中学生で悟り、現実的な進路を模索していった。大学三年生までの自分が、今ものづくりを生業にしていると知ったら驚くだろう。今の会社はたまたま見つけたところで、もともと全然違う進路を目指していたから。
 私が常々推しだと語ってきたのは、何を隠そう星野源さんである。もちろん、他にも、好きな方はたくさんいる。星野源さんは今の私にとって特別な存在なのである。役者として、お若いときから存じ上げていた。社会現象を巻き起こした「逃げるは恥だが役に立つ」は言うまでもないが、「タイガー&ドラゴン」「探偵学園Q」「未来講師めぐる」「真田丸」「コウノドリ」など、意図せず源さんの演じられている役に触れてきた。そして、私の好きな野木亜紀子さんが脚本を務められた「MIU404」が私の胸をぐわっと鷲掴んだ。「MIU404」は、後にも先にも私の大切な作品である。「MIU404」がなければ、今の私はない。それくらい、人生の分岐点となった作品だ。これもいつか語りたい。そして「罪の声」で感情を持っていかれ、気がつけばラジオリスナーになっていた。そのラジオと源さんの音楽とエッセイに、当時仕事でぼろぼろだった私は確かに救われた。今も救われ続けている。源さんがいなければ、私は今、そもそも仕事を続けられていなかったかもしれない。それくらい、追い込まれていた。個々の作品については、改めて別記事に綴りたいと思う。「宴会(配信ライブ)」「リスナー大感謝パーティー」「おげんさん」のことも書きたい!と思いながら、年の瀬が迫ってしまった。
 源さんのおかげで、たくさんの初めてを経験させていただいた。ラジオへ投稿した。感想はもちろん、歌詞を考えたり、ラジオドラマ脚本を書いたりもした。まだ採用されたことはないけれど、ドキドキしながら聴くのも楽しいし、常連リスナーさんの当意即妙な投稿、レベルの高いジングルやラジオドラマ脚本原案に感服する。放送作家さんやスタッフさんを好きになった。ラジオは子どもの頃から聴いていたけど、パーソナリティーさんが好きになっていて、放送作家さんやスタッフみなさんを巻き込む源さんのラジオに出会うまで、ラジオの創り手さんへの意識が薄かった。イヤーブックおまけのファンクラブのようなゆるいページに登録し、素敵なおまけをたくさん享受した。恥ずかしながら自分でCDを買うのは、源さんの音楽が初めてだった。いつも親のCDばかり聴いていた。配信サイトで曲を買った。ストリーミングを知った。イヤホンで帰り道に聴き、自宅で流しながら過ごし、日々が豊かになった。刺さる歌の声、曲、詞、演奏される姿に涙することもある。YouTubeのプレミア配信を観た。配信ライブを観て、グッズを買った。今まで妹がライブグッズを買っているのを横目で見ているだけだった。インスタライブを観た。エッセイ本を買って読んだのも初めて。さくらももこさんのを実家で読むくらいだった。ももこさんのエッセイもとても好きである。今では三ヶ月に一度のダ・ヴィンチの連載を毎度読ませていただいている。お茶目でユーモアがあり、心暖まる。
 源さんの作品に折に触れて思うのは、適度な距離感で寄り添う天才だということ。作品に、視聴者、読者に。好きな人たちへの愛が溢れ出していらっしゃるのも愛おしい。ファン以外の人々まで魅了するのは、源さんの姿勢の賜物だと思う。「創造」に、次のような歌詞がある。

あぶれては はみ出した
世をずらせば真ん中

死の淵から帰った 生かされたこの意味は
命と共に 遊ぶことにある

源さんが死の淵から生還し、諦めずに世をずらし続けてこられたから、今私たちは源さんのさまざまなものを享受できている。感謝してもしきれない。真ん中に立ちながら、普通の感覚も忘れず大切になさっている。本気で遊びながら、素晴らしいものを企画し、生み出し続けていらっしゃる。
 そして、心地よいポップスなのに、めちゃくちゃヤバい(褒め言葉)ことをなさっている。この「創造」では、任天堂への敬意が、歌詞にも曲にも余すことなく詰まっていながら、しっかりとご自分の曲として、「ものづくり」への思いを込めて創られてある。私はゲームを禁止された家庭で育ち、友人宅でマリオパーティやマリオカートをしたくらいだが、それでも耳にしたことのある音を、ちゃんとアナログシンセなどの楽器で弾き直して、曲として成立するよう組み込まれている。MVのコメントですべての音の出典を書いていらっしゃる方がいた。

 他の曲もそう。たとえば、「不思議」の次の歌詞。

きらきらはしゃぐ この地獄の中で

“好き”を持ったことで 仮の笑みで
日々を踏みしめて 歩けるようにさ
孤独の側にある
勇気に足るもの

極上のラブソングなのに、「地獄」「孤独」という言葉を用いるワードセンスが光る。でも、音楽に明るくない私にも伝わる。音像や詞から、これはやっぱりきちんとラブソングなのだ。毎話観ていたドラマに寄り添いながらも、源さんの曲になっている。地獄と愛を表現したMVも必見。「ラブソング」だけど、後に引用した「“好き”を持ったことで 仮の笑みで 日々を踏みしめて 歩けるようにさ」は、いろんな愛を彷彿とさせて、今恋をしていない私にも響く、個人的にとても好きな部分である。

 ダンスと融合した「Cube」。主演の菅田将暉さんが、「この楽曲をもって完成した」旨をおっしゃっているのを聞いて、さすがだなと思った。映画はまだ観られていないがぜひ観たい。「SUN」「恋」「時よ」「Pop Virus」「Week End」「アイデア」…と脈々と受け継がれるダンスミュージックとして、MVで映える。

 最近の曲ばかり貼っているけれど、私は昔の曲もとても好きだ。たとえばこの「未来」。初めて聴いたとき、涙が出た。

公式サイトにないため歌詞は割愛するが、最後の歌詞にぐっとくるのだ。「エピソード」というアルバムに収録されている。
 挙げたらきりがないが、昔から今にいたるまで、曲調は常に進化を遂げておられるが、根底に源さんが流れている。いつも、聴き手に寄り添いながら、ご自身のエッセンス全開で、殻を破りながら創られている。ライナーノーツやラジオ、音楽番組からもそれが窺える。Apple musicやSpotifyで、SAKEROCK含むすべての曲が聴ける。CDではさらに、ジャケット、ライナーノーツ、特典、デザインなど、「もの」としても楽しめる。
 エッセイも素晴らしい。よりリアルな話が綴られていて、面白く、時に壮絶で、日常を歌う源さんの(あえてこう述べるが)普通の日常が感じられる。『いのちの車窓から』のプロローグと「柴犬」の話が特に好きだ。
 役者の源さんも素晴らしい。(今期は残念ながら観られていないが)ドラマ好きの私が観ても、源さんの演技は演技らしくなく、その人の人生を生きている。源さんではなく、役の人として、自然と物語が入ってくる。本当に、存在しているような気持ちになる。
 私はそんな源さんと出会って、心底救われた。説明するのは難しいが、こう、魂をじんわり温めていただき、時に刺激され、まだ生きていたいと思わせられた。生きることがしんどいほどだったあの頃、源さんに出会っていなければと思うと恐ろしい。もっと早く出会って、生のライブに行きたかったし、舞台も観たかったけど、あのとき出会えたから今があると思うことにしている。
 そんな源さんの作品創りをただただ尊敬していたのに、源さんは人を巻き込むのがお上手だから、こちらも何か創りたくなってしまった。最たるものが「うちで踊ろう」だ。そして源さんの手でピリオドを打たれた「うちで踊ろう (大晦日)」。この前のパペトーーク!は痺れた。

でも、私に"創造"は無理だなぁと諦め、逃げていた。"そしたら"、「リスナー大感謝パーティー」で見事に巻き込まれた。歌詞作りは楽しかったし、それが生で創り上げられていく様を目の当たりにして、鳥肌が立った。作る喜びを知り、職場の先輩からこの場での表現を勧められ、今、趣味で創作活動をしている。激動の秋だった。来月で三ヶ月。短編小説とエッセイ合わせて、これを入れて三十作品。拙いながらも、ありがたいことにたくさんの方に読んで感想をいただけるようになった。これからも、"色褪せぬ遊びを繰り返し"ながら、仕事でも趣味でもものづくりに励み、源さんをはじめとするさまざまなクリエイターさんの作品を享受し、日々に彩りを添えていきたいと思う。
 源さん、本当に素敵な日々をありがとうございます。どうか、ご自愛くださいませ。

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