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銀河売りの旅へ

銀河売り歩く交差点
人は僕になど目もくれない
この街に銀河を求める人は
いないのか

私のスマホはGalaxy
銀河だなんて素敵でしょ
小さなスマホせかい
星のように情報が詰まってる
この街で星なんてあまり見えないけど
小説やテレビのなかで見る満天の星空
スマホのカバーと壁紙の銀河系
実際は肉眼でどれほど見えるのかしら

銀河いりませんか
対価はあなたの「だいじ」です
あなたの「だいじ」と引き換えに
銀河をひとつお売りします
銀河いりませんか
銀河いりませんか

今銀河って聞こえたわ
銀河いりませんかってたしかに
銀河売りっていたんだわ
昔読み聞かせで聞いたの
そんなの本だろって同級生は鼻で笑った
でもいたんだわ 銀河売り
耳を澄まして
まだきっといる
雑音がうるさい
静かにして
私は銀河売りに会うの

銀河いりま

銀河いります
銀河ください
おいくらですか

突然目の前に現れたのは
制服を着た女の子

あなた銀河売りなのね
私ずっと会いたかったの
小説で読んであなたに一目惚れ
会えるだなんて
母がスマホを買ってくれた
迷わず選んだGalaxy
カバーも壁紙も銀河よ
あなたに会える日を夢見て
私が出せる金額すべて出すわ
これっぽっちじゃ足りないかしら

対価はあなたの「だいじ」です
あなたの「だいじ」と引き換えに
銀河をひとつお売りします
あなたの「だいじ」はなんですか

私の「だいじ」
私の「だいじ」
スマホは「だいじ」
でもこれは母が買ってくれたもの
対価を払うのは母になる
私が払える対価
私の「だいじ」

形あるものでなくてかまいません
あなたの「だいじ」
聴かせてくれませんか

私の「だいじ」
母との時間
もう戻らない
父も早くに星になった
もう一度両親に会いたい
スマホなんてねだらなければよかった
ただ母といたかった
今は持たない母との時間
小さい頃の三人の記憶

ごめんなさい
私の「だいじ」は渡せない
これを失くしたら
私は何をよすがに生きればいいの
私は生きなきゃいけないの
ふたりの分まで生きたいの
「だいじ」を失くせば生きていけない
銀河は憧れ
銀河は夢
「だいじ」はよるべ
「だいじ」は胸に

そうですね
あなたの「だいじ」はいただけません
「きおく」は対価に大きすぎる
生きるため
夢を叶えませんか
あなたの「みらい」
くれませんか

「みらい」ってどういうこと

僕とともに
銀河売りの旅に出ませんか
僕に両親はいません
いたんだろうけど
生まれたときは
星降る丘にひとりでした
僕の命尽きるとき
おじいさんが現れました
おじいさんは言いました
銀河売りにならないか
自分はもうすぐ引退だから
引き継ぎをしたいんだと
ともに銀河を売り歩こう
君の「みらい」をくれないか
気づけば僕は銀河売り
僕が大人になる頃
おじいさんは星になりました
またおじいさんに会いに行く
君もご両親に会いに行く
そのために
銀河売りの旅に出ませんか

出ます

ではお嬢さん

私はアン

ではアン
僕はボーデ
ともに行きましょう

ボーデ 行こう
差し出した手のひらに
銀河をひとつ
憧れの夢の銀河
想像より小さくて
想像より魅惑的
不思議な触感
吸い込まれそう
でもしっかり手を握ってくれてるから大丈夫
私は一瞬手をはなし
銀河をハンカチに包み
カバンの奥底にしまう
ふたたび差し出した手を取り
ボーデは軽やかに前を行く
私もしっかりついて行く
お母さんお父さん
いつか会いに行くね

差し出された手のひらに
銀河をひとつ
目をキラキラと輝かせ
ハンカチに包んで大切にカバンにしまう
アンの「みらい」をいただいた
アンのご両親に誓う
必ず幸せにします
いつかご挨拶に伺います
アンの手を取り僕は行く
おじいさんと約束した
銀河売りの旅へ

🌠

今週も素敵なお題をくださった部長の小牧さん、ありがとうございます!

小牧さんの頭のなかを覗ける、エッセイ、すまスパもぜひ。エッセイを拝読した後、すまスパを聴きながら書きました。
私も「タイトル超大事説」を推します。
タイトルにこだわり、タイトル負けしないような作品を書く。小牧さんほど、系統的に素敵にはつけられませんが、以前エッセイにも書いた通り、タイトルは大切にしています。

詩を書こうとしたら、物語になっていました。
物語は久しぶりに書きました。
ちょっと詩っぽい書き方にしてみました。
ちぐはぐになっていなければよいのですが…
みなさんの作品もゆっくり読みに伺いますね。

読者のみなさん、今週も読みに来てくださってありがとうございます!
それではまた。銀河売りに誘われ、よい週末をお過ごしになれますように。
そして、ぐっすり眠って来週もよい一週間を迎えられますように。

#シロクマ文芸部

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