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怨霊とはなんなのだの話〜冲方丁『月と日の后』〜

かおりさんへ

こんにちは。
年が明けましたねえ。大変な年明けになってしまったけれど、一日も早い復旧をお祈りしながら、私たちはできることをやっていきましょう。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、年が明けたので、新しい大河ドラマ「光る君へ」が始まりました。「紫式部を大河ドラマでやるの?!正気か?!」と思いましたが、ゴージャスな衣装など楽しみです。そして、せっかくなので、予習をしようと思って冲方丁の『月と日の后』を読んでみました。紫式部の話というよりは、紫式部がお仕えしていた彰子様のお話。

藤原道長の娘である彰子はわずか12歳で一条天皇の后となった。幼なすぎる世間知らずのお姫様が、「国母」として朝廷で確固たる人間関係を築き、信頼と権力を持ち「平安のゴッドマザー」として成長していく物語。

一条天皇の愛した定子の忘れ形見である敦康を心から愛し、最後まで大切に慈しみを持って育てたこと、敦康を守るために一条天皇の母である詮子にアプローチし、怨念のこもった朝廷で起きている話を聞いたこと、一条天皇と少しずつ心が通じ合っていく様子、紫式部と出会い、揺るぎない絆を結ぶまでのこと、どの話も心が揺さぶられるんだよね。私の好きな「戦いながら成長していく話」で、物語自体はとてもおもしろい。

ただ、生きている時代が違うから当然といえば当然なのだけど、どうしても腑に落ちないのが「怨霊」の存在。本当にすぐに人は呪い殺されてしまうのよ。水飲み病(糖尿病)や疱瘡(天然痘)や熱病やそういう病気で人がバタバタ死んでしまうのは、ろくな薬もない時代だから仕方ないかなと思う。お産で女性がなかなかな頻度で死んでしまうのも理解ができる。でも、さまざまな霊異が現れ、物の怪が跋扈していて、「怨霊」に取り憑かれて死んでしまうというのが、現代に生きている私にはなかなか飲み込めない。

結局、この時代はみんな体も弱くて、何か原因のわからない病気にかかってしまうことをうまく言い表せないから、ひとまとめに「怨霊」に取り憑かれたと言っているのかなあ……と思い始めた。「恐ろしい恨みによって、死んでしまう」というのも痛み止めや抗生物質とかがないから病気での苦しみようが半端なかったんだろうかと思ってみたり。

娯楽もない、科学も発達していない、人間関係もとても狭い中で完結してしまう時代は「あの人がああだ」「この人がこうだ」ということが世界の全てであっただろうから、さぞかし息苦しかったんだろうね。「呪い殺してやる!」というような感情も湧きやすかったのかもしれない。だからと言って、本当に「怨霊」に取り憑かれて人は死ぬもんなのかなあ。現代はそんな話聞いたことないし。なんだか、消化不良な気持ちになってしまったことも事実。

かおりさんは、「怨霊」についてどう解釈する?今度ぜひ聞かせてね。

2024年1月12日
やすこより


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