見出し画像

読書スイッチの話〜朝井リョウ『時をかけるゆとり』〜

かおりさんへ

こんにちは。急に秋になったねえ。毎日何を着たらいいか悩んでいます。

さて、半世紀近く生きてると、どうにもこうにもテンションが上がらなかったり、ともかくイライラしてどうしようもないなんてことがあるでしょ。

夜な夜なやけ酒飲んでみたり、ひたすらキャンディクラッシュとかテトリス的な消去系のゲームをしちゃったり、もう何も考えずにさっさと寝ちゃったりしてみたりするけど、なんだか気が晴れない……そんなときは余裕がないから、なかなか本を読む気持ちになれない。

だけど、いつまでもぐずぐず言ってたらダメだな、本でも読んで平常に戻さなくっちゃと思うんだよ。今回は、テンションがまったく上がらないときに気持ちを切り替え、読書スイッチを入れるのにぴったりな本を紹介しようと思います。朝井リョウの「時をかけるゆとり」。

この本はね、すごいのよ。まず、「お腹が弱い」話ばっかりだし、プーさんみたいな眼科の先生が診察中にはちみつのど飴くれる話とか自転車で東海道を走って静岡県を嫌いになる話とか。ともかく全力でアホな話が全開なの。抱腹絶倒という言葉がぴったり。

息子のショウが高校生くらいだったころに「何かおもしろい本ない?」って言うから、この本を貸したんだよね。ショウはうっかり通学の電車の中で読んじゃったらしくて「もう笑いを堪えるのに必死だったんだけど!電車で読んじゃダメだってなんで教えてくれなかったんだよ!」ってマジギレしてた。笑いを堪えるのに必死なくらいおもしろい本を貸してあげたのに、キレられる意味がわかんないよねえ。感謝して欲しいわ。

朝井リョウって、直木賞作家だし、ワセダだし、なんとなく身構えちゃうんだけど、さくらももこ先生をリスペクトしてるだけのことはあって、本当に頭を空っぽにしたいときにぜひ読んで欲しい。

この本は「ゆとりシリーズ3部作」の1冊目なんだよね。2冊目、3冊目と進むにしたがって、朝井リョウも少しずつ落ち着いていってしまうから……。やっぱりこれが一番おもしろいかな。この本の旧版の題名は「学生時代にしなくてもいい20のこと」っていうんだよ。題名からして何かを学ぼうなんて思わないでね!って言ってるから、個人的には旧版の方が好き。

なんで急に読書スイッチの話をし始めたかと言うと、本を紹介し合う往復書簡を書いているにもかかわらず、今はなんだか読書モードに入れない時期に入っちゃってるから。ま、そんなときもあるよね。かおりさんの読書スイッチを入れる本があったら、今度教えてね。

2023年11月3日
やすこより


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?