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ザワつく男

いよいよ、今年も残り10日を切りました。




そんな中、大晦日の「RIZIN.26」にて組まれる追加カードが、
押し詰まったこの時期に、新たに発表されました。




誰もが予測しなかった、胸躍る夢のカードが実現。






"RIZINスタンディングバウト特別ルール"


   五味 隆典  vs  皇治






契約体重は、五味選手の減量次第(笑)。


ほぼパンチのみによる、エキシビションとして行われます。





大晦日らしく、何か一つ話題性のあるものを持ってくる為に、
可能な範囲での工夫により生まれた、面白いカードだと思います。


これに対し、格闘技界隈では早くもザワついている様子(笑)。






皇治選手の一挙手一投足には、常に周囲を掻き回すものを感じます(笑)。







今年9月、長年戦ってきたK-1のリングを離れ、
違約金を払ってまでRIZINに参戦を果たした、
"なにわのKOエンペラー"皇治 選手。




試合前のビッグマウスと、その二つ名とは裏腹に、
K-1でのKO率の低さには(笑)目を見張るものがありましたが、
並み居る強豪選手達を相手に、持ち前の根性ファイトで、
"ギリギリ競り勝つ"その戦いぶりに、胸を打たれたファンの方も、
きっと多いのではないかなと思います。


そして、ファイターとして、ただリングで戦うだけでなく、
ファンとスポンサー、プロモーターを巻き込んで、
"皇治"という存在を、これでもかと世に知らしめた営業力。


試合前の、記者会見等でのビッグマウスにおいても、
ただ、"オレは強い"、"お前をブッ倒す"などといった、
テンプレートな小学生レベルのコメントから逸脱した(笑)、
ウィットに富んだ、おかしみのある挑発を繰り広げ、
ファンを沸かせ、相手を大いに怒らせてきました。




トークセンス、営業力、根性。




きっと、他の商売をやっていたとしても、
それなりに活躍していたのではないかと思います。







大阪府池田市で生まれ育った皇治選手。



大変おっかないお父さんに(笑)、ほとんど暴力に近い教育を受け、
4歳から、空手と日本拳法をやっていたという幼少期。



それに留まらず、サッカーでもジュニアチームで活躍するなど、
"蹴り"については、人並み以上の才能があったのでしょう。



その後、キックボクシングでプロデビューし、
2016年4月の卜部 功也 戦で、K-1に初参戦を果たします。




当時、スーパーフェザー級(60.0kg)で、世界最強の呼び声も高かった、
卜部兄弟の弟・功也選手を相手に、フルラウンド戦い抜くも、判定負け。



敗れはしたものの、記者会見の挑発から、試合での激闘も含め、
全国のK-1ファンが、皇治選手に注目をするようになりました。







決して、飛び抜けた才能がある訳ではなかった皇治選手。



しかし、ファンやプロモーターから、人一倍愛されてきた彼は、
その後も、国内外の強豪とのカードを組まれる度に、
イケイケの挑発の後、リングでは非常に紙一重な接戦を繰り広げ(笑)、
毎回、試合には"皇治軍団"なる、数千人規模のファン達が詰めかけます。





武尊、大雅、卜部兄弟、スタウロス・エグザコスティディス…、
スーパーフェザー級の猛者達と、鎬を削った4年半。



K-1での通算戦績は11戦7勝4敗、勝ち越しで卒業となりました。







意を決してK-1を離れ、練習してきたジムを離れ、迎えた今年9月。



RIZIN参戦を果たした彼の初陣の相手は、
キックボクシング史上最高傑作、"神童"・那須川 天心 選手。






当時、キックボクシング戦績は、35戦35勝(27KO)無敗。



もはや、この競技において敵無しと言われた、22歳の神童。



国内のトップ選手達が、簡単に1Rで倒されてしまう程の強さに、
下馬評では、圧倒的に那須川有利と言われていました。





結果、3Rをフルに戦い、那須川選手の判定勝利。







3分3Rの計9分間で、皇治選手のチャンスとなる場面は皆無でしたが(笑)、
またしても持ち前の根性を遺憾なく発揮し、史上最強の神童を相手に、
1ダウンも喫することなく、フルラウンドを戦い抜きました。



おそらく、1Rで秒殺負けするんじゃないかと想像していた私は、
3R通して、ダウンもせず試合を終えた皇治選手の打たれ強さは、
いよいよもって、本当に凄まじいなと大変驚いたのですが、
この試合の後ほど、格闘技界がザワついたことはないかもしれません(笑)。


twitter・youtube等のSNS上で、"皇治の完敗"、"100回やっても同じ"、
"皇治は弱い"、"打たれ強さを競う競技じゃない"などといった、
皇治選手に対する非常に辛辣な意見が、数多く寄せられたのです。




それを見て、今一つ釈然としない思いを、ずっと私は抱いていました。




ここ1~2年で、那須川選手と戦った国内トップの選手達は、
全く相手にもされず、1Rで秒殺KO負けを喫してきたのですが、
あっさり敗れ去った彼らより、フルラウンド立ち続けた皇治選手の方が、
その何百倍も激しい風当たりを(笑)受けてしまっている状況。






その様子を見ていて、全く彼とは次元が違いますが、
不器用な人間が、それなりに頑張って結果を出そうとすると、
なぜだか、周囲からメチャクチャ嫌われるという経験をした(笑)、
私の人生と、何となく重なる部分を感じてしまいました。





上場企業に勤めていた頃、仕事でなかなかうまくいかず、
評価を挽回しようと思い、社内で取得を要請されていた資格試験を、
4つ全て、1年間で取り切ったことがあったのですが、
新入社員がすんなり4連勝を決めたことを、先輩社員が面白く思わず(笑)、
それ以降、更にきつく当たられ続けた日々を思い出します。



忘年会の2次会では、カラオケの際に"頑張って盛り上げよう"と意を決し、
ユニコーンの「大迷惑」を、無理やり超ハイテンションで歌った所(笑)、
それを聴いていた役員達は「お前、おもろいな!」と大盛り上がりでしたが、
その様子を見ていた先輩達は、やはり面白くなさそうな表情でした。






優秀で器用な、最初から評価の高い人間だけが愛され、
そうでない人間は、一生下に居続けろという、蟻地獄のような世界(笑)。



皇治選手の叩かれぶりを見ると、かつての自分の過去が蘇って、
つい他人事とは思えない痛みを感じてしまいます。






さて、真面目で良い子ちゃんな選手が多かったK-1のリングを離れ、
格闘技界を盛り上げようと、最強の神童相手に決死の宣戦布告を敢行し、
大挙詰めかけた"皇治軍団"を前に、9分間、ひたすら根性を見せた皇治選手。







そんな彼を、容赦なく叩くのは、一般の方々ばかりでなく、
むしろ、プロ格闘家達の方が目立っていました。




おそらく、彼らの抱く嫌悪感や不快感の中には、
"なぜ、アイツが大舞台に?"という、嫉妬もあるのではないでしょうか。







圧倒的なスターではなく、完全無欠のチャンピオンでもない。







飛び抜けた才能は無くとも、並外れた根性と、自分を売り込む力で、
今日もスポットライトを浴び続ける、皇治選手。




コンスタントに勝ち星を積み重ねている選手達にとっては、
思わず、ハンカチを噛みちぎるような悔しさもあるでしょう。




しかし、彼が体現する"人生の作り方"を見て、
もしかしたら、学ぶべきことがたくさんあるのかもしれません。




大舞台に立つためには、何が必要なのか。




選手達にとって、これは永遠のテーマだと思います。







さぁ、もう間もなく、大晦日。



五味選手との試合当日、皇治選手は果たして、
どんな面白いヘッドギアを着けてくるのか(笑)、今からとても楽しみです。

その100円玉が、誰かの生きがいになります!