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あの日の風に会いに行く 23 ダディ

2023年12月10日 ホノル ルマラソン 走ります
68歳になってるテツと63歳になってるわたしで

それまでしばらくの間、人生の棚卸です
noteにアップしながら
2005年10月から書き始めたブログを
たどってみます


2007年04月04日

子育て

そのお父さんはとても大きなかばんを肩からかけ
左手で乳母車を押して、電車を待ってる私の前を通って行かれました。
地下鉄の長いホーム。
ハイキングにでも来てるような足取りで。
スーツにネクタイを締めた青い目のお父さん。
しばらくして―
金髪の3歳くらいの女の子がお母さんと
日本語でおしゃべりしながらやってきた。
私がもたれてた壁に貼ってある大きな広告の
トムとジェリーをその女の子が見つけて、
「ダディー!」、と呼びました。
日本人のお母さんは笑いながらご主人に向かって、
「たいしたことじゃないの」、といったジェスチャー。
でも。
ずっと先にいたそのお父さんは、
くるりと方向転換して
また乳母車を押して
大きなかばんをかけた身体をゆすりながら、
まるで何か宝物でも発見したかのような楽しげな少年の表情で
戻ってこられたのです。
ゆったりと。
ハイキングの足取りで。

その瞬間です。
その女の子がこの地球上で一番幸せな存在に思えた。
ダディはその女の子とそのポスターの前で二言、三言話して
また方向転換して歩いていかれました。
相変わらずハイキングの足取りでした。

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