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【児童書】失敗は怖くない! 大野正人著『失敗図鑑』紹介【私の失敗談】

 先日、私の誕生日でした。ファンの方々からいろんな誕生日プレゼントをもらったのですが、その中に本が一冊ありました。それが今回ご紹介する大野正人著『失敗図鑑』です。私に本を渡したらすぐに書評にしますよ(リクエストも待ってます)。

 本書は偉人たちの数多くの失敗談が収録されている児童書……かな? 振り仮名とイラスト多めで、小学生から楽しめる本となっています(帯には「十歳から読める新しい心の教科書」とあります)。とくに期待せずに読み始めたのですが、これが、めちゃめちゃ素晴らしい本で、ページをめくる手が止まらなくなりました。

 ただの失敗談が書かれている本なら今までもあったはずです。本書ではもうワンステップ進んで、その失敗からどんな学びが得られるかというところまで切り込んでいます。

 たとえば、一番最初の項目は「ライト兄弟」です。ライト兄弟といえば世界で初めて飛行機を作ったことで有名ですよね。彼らがどんな失敗をしたかというと、「技術を真似されることを徹底的に嫌ったこと」です。世界中が彼らの成功を見て、一斉に飛行機の開発をはじめたのですが、特許を口実に同業他社に訴訟を起こし続けたそうです。結果、裁判に時間と労力を奪われてしまい、技術のさらなる発展にエネルギーを注げなくなってしまったのです。

 そこから何が学べるかというと、「ライト兄弟の本当の失敗は成功にしがみついたこと」なのだと著者は言っています。〈成功とは「守るもの」ではなく、次の成功のために「使うもの」。〉なのです。同じように自分が何か成功をしたら、それを威張って秘密にするのではなく、周囲に分け与えることで、その分野の技術の発展につながり、巡り巡って自分に返ってくるのです。

 ね、おもしろいでしょ。

 他にも、ダリの章では「天才」について書いてあったり、ベートーベンの章では「孤独」について書いてあったり、大人でも見逃しがちな物事の本質が書かれていて、失敗を恐れてチャレンジできなくなってしまった大人たちにこそ読んでもらいたいです。

 単に知識が増えるだけではなく、失敗から立ち直る勇気をくれる書籍です。

マジシャン蓬生の失敗談

 じつは某テレビ番組から「失敗談を聞かせて欲しい」というアンケートが来ていて、ちょうど失敗談に敏感になっているところでした(まあ、まだ出られるかわかりませんけど)。

 私も失敗にかけてはちょっと自信ありまして、自分の講演でもちょくちょく話しています。笑える失敗から人に言えない失敗まで、数え切れないくらい失敗をしています。

 たとえば、私はマジックバーに勤めているのですが、まだ店がオープンして間もない頃にこんな失敗をしました。

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 私の勤めているマジックバーにはステージがついていてショータイムがあります。その日、私は持ちネタの中でも確実に笑いの取れる演目で挑むことにしました。それは、大勢の観客からはすべて丸見えなのにステージ上のアシスタントだけがタネに気がつかずに笑い者になるという、マジックの世界ではど定番の、いわゆる「アシスタントいじり」でした(ぜひ、本物を見にきてください)。

 このトリックは観客選びが非常に重要です。あまりガードが硬い方だとリアクションが引き出せず、かと言って軽すぎる方を選んでも演技に面白味がでないのです。また、オチを知っている方もNGですので、私は自分の番が回ってくるまでに、別のマジックを観ているお客様をしっかりと観察し、品定めをしていました。

 さあ、自分の出番が回ってきました。私は真ん前の席で熱心にマジックショーをご覧になっている女性に声をかけました。しかし、その女性は頑なにアシスタント役を拒むのです。「きっと、慣れない環境で緊張しているのだな」と私は考えました(オーディエンスの前でスポットライトを浴びることに慣れている一般人なんて滅多にいません)。

 ショーの時間が押していたことや、再度アシスタント選びをするのが難しかったことなどの理由があり、私は他のお客様たちに拍手を求める形で、半ば強引にその女性をステージに上げました。ステージに上がった後はそれほど拒否する様子もなかったので、「これはイケる!」と思い、マジックを始めました。

 パフォーマンスは無事に終わり、手応えもありました。ところが、私のパフォーマンスを見ていた仲間のマジシャンがステージ横でクスクス笑っているのです。気になって理由を聞いてみると……

「さっきステージに上げた女性、世界的プロマジシャンのマネージャーの方だよ!」

 確かにその顔には見覚えがありました。その方は、マジシャンの間では知らない人のいないくらい有名なプロマジシャン緒川集人さんの敏腕マネージャー、小林恵子さんだったのです(マジシャンなら事の重大さがわかりますよね)。小林さんはマジシャンでもあり、私は中学生の頃からご活躍を拝見していました。しかし、まさか目の前にいらっしゃるなんて思いもよりませんでした。

 そんな方に向けて私は、「マジック生で観たことありますか?」とか「緊張してますか?」など、とんでもなく失礼なことを言いながら、ど定番のトリックをドヤ顔で演じてしまっていたのです。血の気の引く音って、本当にするんですよ。

 ショーが終わった後、私は猛ダッシュで駆け寄って土下座で謝りました(その後SNSで繋がっていただきました)。

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 この仕事をするまで失敗が怖くて怖くて仕方ありませんでした。ただ、人前に立って話をする機会が増えてくると、あることに気がつくのです。人は失敗談が大好きなのです。オリジナリティーが高く、誰も傷つけずに笑いを取れる、それが失敗談なのです。それからというもの、話のネタになると思うと失敗が美味しく感じられるようになって、チャレンジする回数が増え、必然的に成功の回数も増えてきました(もちろん、失敗の方が多いですが)。

 世の中には「失敗したらどうしよう」「笑われたらどうしよう」と、物事を始める前から緊張して、そのせいで100%の力が出せなかったり、二の足を踏んでしまったりして、失敗したり後悔したりすることがままあります。「失敗してもそれを糧にできる」と思い込んで臨むことで、「本当の失敗」は無くなります。本当の失敗は「失敗を失敗のまま放置すること」なのです!

 ……ああ、いいこと言った。



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