アメリ:映画感想文

練乳をかけた食パンを焼いた。練乳は焼くとふくらんで、すこしこげた。甘くて、フレンチトーストみたいに少しやわやわとしたその食パンを午後3時のわたしは食べた。
いまは、オーブントースターのまわりがほんのりと甘い香りがするくらいしか、その事実の断片はない。けれども、その香りがわたしを少し幸せにする。おいしかった記憶と共に。

映画をみた。「アメリ」をみた。とても素敵な映画と感じた。
ただ、アメリという人そのものが変人かわいい、という所をクリアしないと多分観られない映画だろうなとは思う。
ネタバレ含む感想を書きます。

アメリ自身が、幼少期あまり人と関わらず暮らしていて、いわば内気な性格なのだと思う。それは、表情にも見てとれるところ。
序盤、大家さんらしき人と会話しているシーン等でかなり表情や対応がぎこちなくなっているところがあり、
私はてっきり、本題と逸れた長話に疲れているのかと思った。
確かにそれもあるのだろうが、話が進んでいくと、恐らくそういうコミュニケーション自体が不得手なんだろうな、と予想がつく。

彼女は基本的に、ひとりのほうがいきいきと生活しているように見える。
それでも何かしらの「接点」を欲している(または、ただ悩んでいる)
その気持ちはよくわかるし、実際、自分もそう思う。
わたし自身の話になるが、わたしも基本的にひとりで居たほうが空想は捗るし、いきいきしている気持ちになるのだ。それは、大勢いる人間という存在の波に私が流されるせいだけれど……、
その反面、そういう「空想癖」を捨て去らないと(波に流されないと)、社会とのほんとうの接点は持てないんじゃないか。と思っている。
そういう所で、すこし共感ができた。

アメリは空想癖があるけれど、洞察力にも優れていて
野菜屋さんの若いお兄さんが、店主よりもよほど野菜のことを想っているのに店主には馬鹿にされている。
そのことを知って、ふとしたきっかけから店主にささいな復讐をしてみたり(この復讐が、悪意の無さも相まってただのいたずらっ子にしか見えずほほえましくなる。けれど、実際にあったらものすごい怖い)
また、骨が弱く外に出られないおじいちゃんに、テレビの映像や、また絵の中の少女にアメリ自身を投影して話す(これはアメリ自身がヒントが欲しかったのかもしれないが)ことで「外の刺激」を与えていたり
結果はともあれ、恋のキューピッドをしてみたり(あまりに無邪気な言動をするので、観ていて驚いた)
お父さんに旅行を勧める為に、ドワーフの旅行写真を送りつけていたり。
場面によっては、誰のどこを突けばどう動くか、よくわかってやっているようにすら見えた。

そんなアメリが、恋をする。
恋愛に関してはとても苦手な様子の彼女は、似たような「変な」男性に恋をしたのだ。
アメリが行うアプローチはものすごい回りくどい。
呼び出しておいて一方的に見つめているだけで、本当は会いたい癖に、直接会って話すということは絶対にしなかった。
遠巻きに見て、気付かれないようメモを置いていったり、とにかく内気の極みのような動作をする。わかる。
けれど、その時点でアメリがどういう人間かはなんとなくつかめていたので、じれったくもないしアメリらしいアプローチにすら見えた。
そんな彼女は、結果的におじいちゃんの後押しもあり男性と結ばれるのだが、
最後に恋人と一緒にいるアメリの表情は、心から笑っている表情で本当によかった。

色んな証明写真撮影機?に写っている男性の正体がわかった時、わたしもアメリや、その変な男性と同じような表情をしてしまった。
様々なところで、何となく波長の合う映画だったので、ストレスなくみることができた映画だった。

アメリ自身が、世界のどこかや、ある人の空想をするように
世の中ではわたしが想像もつかないような出来事がものすごくたくさん起きていて、それを空想することは楽しいことだ、と思う。
そして、アメリが恐らくそうあれたように、わたしも空想の世界を捨てずに居られたらいいのにな、と考える午後でした。

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