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吉祥寺の愛すべき喫茶店 くぐつ草でラムココアを

吉祥寺の喫茶店といえば?
私がぱっと思い浮かべるのはこの3店。武蔵野文庫、ゆりあぺむぺる、くぐつ草。

武蔵野文庫。ピース又吉の小説「火花」にも登場する。ごろっと野菜の入ったカレーがうんまいんだ。

ゆりあぺむぺる。宮沢賢治の詩集から取ったという店名が素敵な喫茶店。ガーリーな古い洋館という感じで入ると時が止まる。料理もかわいい。

そしてそして、大好きなくぐつ草。今日はくぐつ草について書きたくて、会社から出た瞬間からソワソワしていた。

正式には「Coffee Hall くぐつ草」という。
吉祥寺駅北口のアーケードにあるダイヤ街を3分くらい歩けば着く。

階段を降りて地下の扉を開けると、洞窟のような空間が広がっている。天井が丸い。明かりは間接照明で柔らかく、入った瞬間コーヒーの匂いにつつまれる。

初めて入った時、その空間があまりに素敵で思わず泣きそうになったのを覚えている。

卒論に追われていた大学4年生秋冬、実験がうまくいかず提出できないかもしれない、終わらないかもしれない。うまく結果がでないかもしれない。不安ばかりが募って帰るに帰れず、ずっと気になっていたくぐつ草に入った。

木の扉を開けると、基地みたいな空間が広がっていた。広いわけではないのに天井が高いからか、木がふんだんに使われた店内だからか、山小屋のような雰囲気。濃厚なラムココアが終わらないかもしれない卒論を忘れさせてくれた。染みた。

くぐつ草のHPがまた素晴らしい世界観で、掲載されている文章がそっくりそのまま好きなので引用する。

くぐつ草という名前の由来
くぐつ【傀儡】
異民俗集団であったとも、共同集団であったともいわれていますが、権力と直結しない自由の民であったといわれています。 (中略)   その集団のひとつに“人形つかい”達が存在し、現在では“人形つかい”の代名詞として“傀儡師(くぐつし)”と呼ばれています。
くぐつ草は、人形劇団 結城座の立ち上げたお店のため、“くぐつ”と名付けられました。
『草』は後から付けた造語で、地下の店内に緑が少ないから…とか、吉祥寺の街に根付くように…など、 諸説あります。
よくお客様より「くぐつ草」という草は本当にあるのかと聞かれますが、くぐつ草は皆様の心の中に息づいていけたら、と思います。

(引用 くぐつ草HPより)

吉祥寺にあつまる個性的なアーティストたちがちょっと足を止める場所なのかもしれない。劇団仲間たちが始めたくぐつ草は、きっと昔から、夢を追う人々の憩いの場であっただろう。あるいは、演劇談義に花を咲かせるオタク空間だっただろう。あの地下を降りれば、都会の喧騒を忘れられる。周りのことを気にせず、無防備になれる。そんなふうに多くのひとが逃げ込む秘密基地だったのだと思う。

地下というのがまたいいんだ。そういえば私が大好きな西荻窪の「ダンテ」も半地下だ。私の逃げ込み喫茶は地下が多いみたい。ダンテについても今度語りたい。


先日ひさしぶりにくぐつ草に行ったら、可愛らしいモーニングセットを食べることがでた。厚切りパンにバターがジュワジュワっとしみこんだトーストセット1080円。コーヒーはストロングとソフトを選べます。12時までに駆け込むべし。

でもね、冬の寒い日にはきっとくぐつ草で、ラムココアを。(平松洋子さん風)


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