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日本共産党はなぜ7年間で4割も得票数を減らしたのか - しばき隊と癒着した帰結

松竹問題について、党執行部による除名処分を支持する声も上がっている。小林節きっこだ。当初、いわゆる文化人たちが猛烈な勢いで党執行部を非難し、松竹伸幸への支持を連発する怒涛の動きが続いた。内田樹、山崎雅和、平野啓一郎、想田和弘、斎藤幸平、伊勢崎賢治、望月衣塑子、上野千鶴子、金子勝らである。ここへ来て、そのラッシュが一段落し、逆に松竹伸幸を批判するツィートが増え、除名を是とする側の押し返しが始まっている。少なくともネット世論の現状は両者拮抗という空気感にある。松竹伸幸は「(党に)付いてきてくれる文化人・知識人も一人だけ」と言い、きっこの存在を無視しているが、ネット空間でのきっこの影響力は決して小さくない。エッジの利いたきっこ発言の投擲は、ネットの左翼全体が雪崩を打って松竹伸幸側に転ぶのを防ぐ歯止めの役割を果たした。

今回は、日本共産党の得票数がなぜこの7年間で4割も激減したのか、606万票(14年衆)から361万票(22年参)までゴッソリ減ったのか、その理由について考えたい。最初に結論を言えば、答えは、間違った「野党共闘」路線に舵を切ったからである。9条と25条を守る革新護憲の政党のはずが、ずるずると基本政策を変え、日米安保容認の方向性を示し、10年前は言ってなかった新奇な政策(ジェンダー・マイノリティ・LGBT)を看板に押し出したからである。時代に迎合して党の基本理念を疎かにし、リベラリズムの党(アメリカ民主党日本支部)に変貌したからだ。さらに言えば、日本共産党の活動のイメージが暴力集団しばき隊の跳梁跋扈と重なる弊害が目立ったからだ。この10年間で組織のイメージを毀損し、従来の支持者が評価してきた嘗ての集団の価値を失ったからだ。

■ 中野晃一の「野党共闘」路線で得票は減少の一途

2016年参院選の得票数は601万票、2017年衆院選の得票数は440万票。1年で160万票も減った。無論、そこには「枝野立て」の劇場ドラマがあり、判官贔屓の風があり、その影響を受けた点は否めない。だが、それだけではないだろう。日本共産党は2015年のSEALDs運動を契機に「野党共闘」路線に転換し、市民連合を通じて民主党(立憲民主党)に抱きつく戦略に変わった。中野晃一としばき隊が舞台主役で踊る政治へと変容した。政策とイメージを大きく変えた。2017年からの4度の選挙の敗北と得票減は、2015年から始まった党の戦略転換に対して有権者が出した通知表の結果である。私が当時からずっと指摘していた問題は、党が有権者に触れるコミュニケーションの接面がネットであり、しばき隊のネットでの暴力三昧の所業が党の評価に直接に悪影響を与えているという事実だった。

明らかに、日本共産党はしばき隊をネットの用心棒として飼っていた。ゴロツキの暴力集団を、党の政見や方針をネットで物理的に防衛する<暴力装置>として活用していた。「ネトウヨ」と喧嘩させたり、党とは異なる立場の左翼の意見の封じ込めに重宝していた。国政選挙や都知事選のときは、しばき隊が応援ツイートを連打し拡散する主力部隊を担っていたし、しばき隊文化人が応援演説に入って宣伝カーの上に立った。対立する勢力を路上から排除した。ネットでの日本共産党周辺のイメージは、急速に暴力的になり、乱暴で野蛮で有害な性格となり、侮辱と罵倒と恫喝と威嚇と嫌がらせが日常の言語文化となった。野間易通は通算で10回以上アカウントを凍結されている。前科10犯の札付き。だが、「野党共闘」路線に舵を切って以降の日本共産党は、ますますしばき隊との癒着を深め、二人三脚から一心同体の蜜月へと進行し、幹部がしばき隊Tシャツの着用を誇示して同志宣言する関係になって行く。

■ コロナ対策で国民を代弁しなかった小池晃

一瞥して、党の中でそれを主導した首魁が小池晃だ。だから私は小池晃を買わない。小池晃本人は、長く党務に就いてきた経験から、おそらく動機と信念があり、日本共産党がマルクスから離れ、社会主義や平和憲法を捨て、宮本・不破路線から脱皮した方がいいと確信しているのだろう。しばき隊やのりこえねっとの「多様性」路線を主軸に据え、党名変更し、リベラル左派政党として生まれ変わるのがベストだと本気で思っているはずだ。加藤周一や津川武一と違って資本論も読んでないだろうし、日本と世界のマルクス関係の理論史にも興味関心がないのだろう。党の番頭として、老舗の組織を倒産から守るため、世間から孤立しないよう苦心し、時流に合わせて生き残る方法は何かと焦っていたのだろう。その帰結が、しばき隊・のりこえねっととの一体化であり、アメリカ民主党左派日本支部として再出発する保身策なのに違いない。

前回、新執行部人事の提案に当って、私は小池晃にはどのポストも与えなかった。直近の2021年衆院選から2022年参院選の1年で、党は50万票も得票を減らしている。何が要因か。この時期、国民にとって最大の政策の関心事はコロナ対策だった。コロナ問題が第一の争点だった。小池晃は、2020年から2021年にかけて、何度もTBS報道1930に出演し、コロナ対策を議論する生放送で見解を発している。だが、隣に田村憲久がいて武見敬三がいるのに、小池晃は彼らを厳しく非難して論戦を挑もうとしなかった。まるで番組の台本があってそれを読んでいるかの如く、皮相的な野党の要求と主張を平板に並べ、ヘラヘラした顔で松原耕二の方を向いたまま、慣れ合って雑談するように放送時間を流していた。PCR検査態勢を拡充する気がないのに、ウソを言って詭弁と駄弁で逃げる自民党を追い詰めなかった。小池晃の責任は重い。

■ 永田町既成野党化としばき隊癒着体質の定常化

庶民の怒りを代弁して論破しなかった。国民の声をストレートに代弁し、渾身の怒りを見せたのは倉持仁である。共産党がやるべきことを倉持仁がやっていた。私はテレビの前で歯噛みし、憤懣爆発を繰り返したが、必ずこのリターンは選挙で共産党に鉄槌されるだろうと予想した。コロナ問題をめぐる報道1930での小池晃の対応は、党内で問題にならず、党員から批判が上がらなかったのだろうか。不思議である。他のボンクラ野党や公明党と全く同じで、上っ面を緩く撫でるだけで、庶民が期待する迫真の追及や糾弾とは全く違う図柄だった。そこに共産党の議員がいるとは思えなかった。小池晃は、政府の無策に苦しむ庶民の怒りよりも、ルーティンの政治紙芝居を流す松原耕二の思惑と企図の方に寄り添い、番組の準レギュラーの地位を保全していたのである。無難に手抜きで済ませていたのだ。次もゲストで呼んでもらうために。

2014年に606万あった日本共産党の得票が、2017年以降400万票台に落ちた原因について、私は、①支持者の期待や信条にはそぐわない「野党共闘」路線に転換し右傾化したからと、②党が癒着し一体化したしばき隊の暴力三昧が支持者に嫌われたからだと分析している。しばき隊リンチ事件が表に出て、左翼界隈の関心事になったのは、2016年の半ばからだった。事件は未だにマスコミ報道の対象になってないが、ネット情報や口コミの浸透で少なからず日本共産党に打撃を与えたと推測される。しばき隊の暴力は、決して誹謗中傷攻撃の言葉の暴力だけではなかった。2015年から2018年頃の暴力性表象の中核をなすキャラは野間易通だったが、2019年以後は主役が変わり、木下ちがやがその方面の素行の悪さを代表するゴロツキ筆頭となる。「限界系」だの「リッケンカルト」が飛び交う喧嘩空間が出現する。

■ 木下ちがやのれいわ叩きと「野党共闘」派の消耗・分解

2019年の参院選で、山本太郎のれいわ新選組が台風の目となって躍進を遂げた。比例で228万票を集め、日本共産党の448万票の半分に達する勢いとなった。ここからネット左翼内のヘゲモニー争いが始まり、「野党共闘」陣営で左翼の票をれいわに流すまいとする者が轟然とれいわを襲って叩く組織行動が始まる。しばき隊が主力だったが、旗を振った中心に木下ちがやがいた。れいわ支持者側も反撃応戦し、20年、21年と見苦しい修羅場が展開された。22年の参院選の後、事実上「野党共闘」が崩壊し、泉健太の立憲民主が維新に接近する幕となる。それに伴い共産支持者と立民支持者の間隔と距離が広がり、「野党共闘」派の各自がどちらかの立場に寄らざるを得ない状況となった。木下ちがやは立民側に寄り、しばき隊主流派と袂を分かつ。そして、立民側の論理で共産に工作を仕掛ける急先鋒となり、今回の松竹プロジェクトでも有力メンバーの一員として動いている。

共産の票に社民とれいわを加えた3党の比例得票数は、この10年ほど700万票から800万票の間で安定している。日本共産党の票は4割減ったが、その分(150万票)はれいわなどへ散った勘定になる。直近の推移を観察すると、共産は2019年参の448万票から2021年衆の416万票へと32万票減らし、さらには2022年参の361万票へと1年で55万票減らしている。日本共産党にとっては痛いマイナスだ。3年間で87万票も減らした。私は、この要因の一つに、木下ちがやらの醜悪な内ゲバ抗争に対する幻滅と反発があると想像する。嘲罵と難癖と挑発の行動パターンは同じだった。しばき隊の暴力仕様そのもの。木下ちがやの暴言とれいわ叩きの独善は、結局、共産支持の固有票を剥がし、投票先をれいわに切り替える逆効果に導いたのではないか。木下ちがやは元しばき隊(当時序列No.3)である。2012年、野間易通と一緒に反原連幹部として官邸前で活動し、2015年、SEALDsをプロデュースした黒幕だ。

■ ポリコレ政策のメッセージは票になるのか

ジェンダー・マイノリティ・LGBTの「多様性」の価値にフォーカスしたいわゆるポリコレ政策が、選挙では票を集める武器にならないという認識と指摘を、私はブログで何度も述べてきた。その問題意識と関連して言うと、直近の3度の選挙で日本共産党の半分以上の得票を得て存在感を示しているれいわ新選組は、感覚として、あまりポリコレ政策を強調していない。最近の山本太郎の公約の目玉は「奨学金チャラ」だが、これは大胆で印象的な訴えだった。ポリコレ政策を熱弁する日本共産党と対比して、れいわ新選組は格差・貧困の問題に注力しているように窺え、山本太郎のその視座姿勢は一貫しているように見える。れいわ新選組の得票の大部分は、日本共産党から浮気で移った票であることは疑いなく、だからこそ木下ちがやとしばき隊が半狂乱でれいわ叩きを絶叫していたのである。左派の有権者が求めているのは、ポリコレ政策ではなく格差・貧困を解決する政策なのではないか。

もう一つ、小さな出来事だが、社民党の得票数が2022年参院選で増えている。2012年衆院選よりも24万票増えた。政党要件がかかった背水の陣だったこともあり、危機感が票を集めたとも言えるが、この選挙で福島瑞穂が強く訴えたのは憲法9条で、ポリコレ政策群ではなかった。10年間を振り返ると、過去に遡るほど社民党の方がポリコレ政策のアピールに執心し、最近になるほど日本共産党がそのお株を奪ってきた感がある。社民党の方がポリコレのエバンジェリズムでは先輩だった。一足先にリベラリズムの党に転身していたからである。今回、社民党の票が増え、日本共産党の票が減った事実を確認して、私はポリコレは票にならないと再び自信を持って断言する。何だかんだ言って、投票所に足を運ぶボリューム層は高齢者なのだ。選挙には行かないという行動様式が若年層の標準プロトコルなのである。それがリアルな現実だ。お客様は高齢者であり、お客様のニーズに合った商品を揃えないと売れない。



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