「我慢」すると、言葉は強くなる。
わたしはコピーライターです。コピーライターは、商品やサービスを宣伝するための言葉(コピー)をつくることが仕事。
しかも、単なる言葉ではなく、「いい」つまり魅力的なコピーをつくらないといけません。
そこでみなさんに質問なのですが、いい言葉をつくる、いいコピーを書くために一番大事なことはなんだと思いますか?
センス? 読書量? 体力? 経験?
どれも重要ではありますが、一番大事なのは「我慢」です。
…ちょっとピンとこないかもしれません(笑)
今回は、コピーライターが実践する、いい言葉やいいコピーを書くための「我慢」について書きたいと思います。
我慢その1 〜すぐにコピーを書きたい誘惑に耐える〜
コピーライターは依頼があったらすぐにコピーを書いている、と思っている人も多いようです。
おそらくその人たちは、机の前に座って腕を組みじっと考え込んでいる人物を思い描いているでしょう。
パッと電球が点くように言葉がひらめき、サラサラとペンを走らせると素晴らしいコピーが完成している…みたいな。
夢を壊すようですが、それは誤解です。
締切まで時間がない時でさえ、コピーライターがすぐにコピーを書くことはありません。
なぜか?
「調べる」からです。
いいコピーを書くためには、「調べる」ことが重要なのです。
新発売のポテトチップスのコピーを書くなら、原材料のじゃがいも、ターゲット、市場、競合商品、社会情勢などなど…調べることはいくらでもあります。
では、どうしてそんなに「調べる」のでしょうか。
それは、自分の引き出しだけではいいコピーを書けないからです。
コピーライターの橋口幸生さんがわかりやすく説明しています。
わたしはせっかちな性格なので、すぐに書きたくなってしまうんですね。
でも、いつもこの橋口さんの言葉を思い出し、もっと外の世界の情報を調べよう、と思いとどまります。
書きたい気持ちをグッとこらえて、ひたすら「調べる」。その積み重ねがいいコピーを生むことにつながります。
これはつまり、「たくさんの情報をインプットする」ということ。
いい企画やアイデアが浮かばない.…なんて時も、インプット不足。とことん「調べる」ことをおすすめします。
我慢その2 〜すぐにPowerPointを使いたい誘惑に耐える〜
仕事では、企画書やプレゼン資料を書く機会があると思います。
わたしたちコピーライターも、PowerPointを使って1枚のスライドに1案という具合にコピーの企画書をつくります。
でも、それをやるのは締切ギリギリです。すぐにはやりません。
コピーライターにとって、PowerPointはかなり危険なシロモノだから。
PowerPointで言葉を打つと、大したことを書いていないのによく見えてしまうのです。
実際に、その恐ろしい認知のゆがみを体験してみましょう。
まず、こちらの手書きメモを見てください。言葉はまるでミミズ(!)のようです。
ここから一文抜き出し、PowerPointで打ってみるとどうでしょう。
とたんに、「何かいいことを言っているように」見えてきませんか?
整えられた字は説得力が増すからでしょう。でも、コピーとして優れているかどうかは別の話。
PowerPointで見た目をきれいにすると、目がだまされて「いい」と思い込んでしまいがちです。
なので提出する前日くらいまでPowerPointは触らず、あえてメモ帳に書いていく。
すると自分が選んだ言葉や書いたコピーが本当にいいのか、そうでもないのか判断しやすくなります。
我慢その3 〜ダメ出しに耐える〜
調べに調べてコピーを書き、最後にPowerPointで整え、ようやく提案できても、コピーライターの仕事は終わりではありません。
むしろ、ここからが本番。
そう、ダメ出しの時間です。ダメ出しというとネガティブですが、実際はもっと前向きなもの。
コピーを書くのは自分ですが、多くの人の目にさらされることでブラッシュアップされます。
「別の案も見たい」「言い方を変えてほしい」など要望がたくさん出てくるので、アップデートしていく。
商品の企画会議でも同じですよね。いろいろな人からフィードバックをもらい、細かく調整することで完成に近づく。
ダメ出しされたあとも、わたしは「調べる」ことに戻るようにしています。
すでにあるコピーをこねくり回しても、似たような案しか出てきません。
それでは行き詰ってしまうので、自分の外の世界を調べにいき、新鮮な表現や言い回しを探してみるのです。
我慢強さが、言葉を強くする
いい言葉をつくる、いいコピーをつくるというのはインプットとアウトプットのくり返しです。
書く前には準備としてたくさん調べないといけないので、正直とても大変です。
でも、新しい情報を知れば知るほど、自分が書ける言葉は広がっていくんです。
そしていい言葉、いいコピーを書くために、ぎりぎりまで耐える。
我慢強さが言葉を磨き、強くするとわたしは考えています。
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文:シノ
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