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「目線を変える広告」の事例を集めてみたら、心が動かされた

広告には人目を引くためのアイデアが必要です。

さまざまなアイデアがある中で「目線を変える広告」というものがあります。

今回は4つのユニークな事例を紹介しつつ、コピーライターの視点から気づいたことを書きたいと思います。



目線を上げる広告

6月にこんな広告が話題になっていました。

思わず上向いてしまう広告の正体

就活支援サービス「OfferBox」が、新卒採用面接解禁日である6月1日に渋谷駅の通路に掲出した広告です。

白い横長の巨大ボードには、「このくらいの目線が、自信に効く。」というメッセージが大きく書かれています。

目を引くのはメッセージの位置。普通の広告と違って、上のほうにレイアウトされていますよね。

これはOfferBoxが就職活動に不安や緊張を抱く就活生に向けて、「視線を上げることで気持ちが前向きになる」ことを伝える意図があったからです。

就活生ではない自分もこの広告を見てポジティブな気持ちになったのですが、偶然ではなく行動心理学に基づいていると知って納得しました。学術的な観点からも効果的な広告だったんですね。

気分が落ち込んでいると、無意識のうちに視線が下がったり、姿勢が悪くなっていることがあるので、そういうネガティブな状態をリセットしてくれる表現が素敵だと思いました。

渋谷駅の他に、首都圏大学の周辺エリアに設置されている消火栓にも掲出されていたそう。

思わず上向いてしまう広告の正体

消火栓に広告をつけられることを初めて知りました。今まで全く目に留めていなかった…!実際に自分が通りかかったら気づくのかな?と気になるところです。


高さを感じる広告

続いて、現在は建て替え中の銀座ソニービルに掲出された有名な広告。

「もしも銀座に、津波が来たら?」 ヤフーが屋外広告に込めた想い

ヤフージャパンが、2011年3月11日の東日本大震災の当時、岩手県大船渡市で観測された最大津波16.7mの高さがわかる広告を掲出しました。

OfferBoxの事例と同様、目線を上げる広告ですが、こちらは「高さ」を感じさせる意図もあります。

縦長コピーの真ん中にある「ちょうどこの高さ。」という言葉が赤い線で強調されています。「なんだ?」と思って上からコピーを読み進めると謎が解ける。意味がわかった瞬間、スッと背筋が凍る怖さがあります。

写真で見ても伝わるこの高さ、実際に広告を見た人はもっといろんな感情が湧き上がったのではないでしょうか。

ヤフーのサービスでは、アプリの通知などでいち早く災害情報を知らせています。震災から時が経ち、メディアの報道も災害に対する意識も薄れてきた中で、災害情報を発信する企業として、人々の防災意識を啓発することが目的だったそう。

津波の恐ろしさはわかっていても、実際の高さとなるとイメージが掴みにくいもの。屋外広告だからこそ「リアルに想像してもらう」ことができる、災害の記憶を風化させないという目的も達成された優れたアイデアです。


目線を下げる広告

上の次は”下”です。バーガーキングの店舗に何やら一枚の紙が貼られています。

バーガーキング・ジャパンのXより引用

おいおいなんて見にくい位置に…と思った大人のみなさま、その通りです。

手紙の宛先は「アーニャさま」。人気漫画『SPY×FAMILY』の登場人物アーニャに宛てたものだったのです。アーニャというキャラクターは5歳くらいの女の子です。彼女の背丈に合わせて低い位置に貼ってたんですね〜。理由がわかるとほっこりします。

手紙の内容は以下の通り。

漢字は使わないアーニャへの気遣い

バーガーキングと『SPY×FAMILY』のコラボ施策だったわけですが、手紙を出すという形で知らせるのも一味違う手法で面白いです。

手紙は特定の店舗に貼られていたようですが、それだけでなく、バーガーキングのXでポストされていました。

続けてこんなポストが。

何店舗かをさまよい・・・

バーガーキングが出した手紙をアーニャに届けるまでが一連のプロモーションだったようです。SNSでの拡散やコミュニケーションも視野に入れたアイデア満載の事例ですね。


上を見て、下を見る広告?

最後の事例は、2箇所に目を向けさせるという挑戦的な試み!

Netflix「全裸監督 シーズン2」渋谷駅前ジャックに続き、新宿でも駅ジャックを実施

お待たせしました。『全裸監督』シーズン2の広告です。

タイトルを出さずに作品を象徴するセリフやコピーを使うことで、シーズン1の盛り上がりっぷりを伝えているのもアツい演出です。今どき文字だけでこんなに迫力があるのもすごい。

解体中の東急百貨店東横店ビルの上の方に「上を見ろ、星がある。」の文字。少し下に視線を移すと、「下を見ろ、」とあって、さらに下の渋谷憲章シート広告に「俺がいる。Netflix」とあります。

つなげると「上を見ろ、星がある。下を見ろ、俺がいる。Netflix」というメッセージに沿う形で見る人の目線が移動し、動きを感じられる表現になっています。

「下を見ろ、俺がいる。」というフレーズは、映画の主人公のモデルである村西とおるの言葉です。

解体中のビルの仮囲いと渋谷憲章シートの2箇所を使って広告を打ち出すという斬新で規格外な手法が生み出せたクリエイティブです。


目線を変えることで、どんな広告効果を生む?

4つの事例を紹介しましたが、みなさんはどのように感じましたか?

「目線を変える」アイデアは、大きく2つの効果を生むと考えます。

<1>SNSで拡散されて話題になる

この少し変わったアイデアに共感して、写真を撮ってSNSにアップした人は多いでしょう。実際にどの事例もSNSで話題になっていました。

目線を変えることで、少しでも心が動かされた。この体験を人に伝えたくなるのだと思います。

<2>記憶や印象に残りやすい

ここが一番大事な部分ですね。

冒頭でも伝えたように、広告には人目を引くためのアイデアが必要ですが、一瞬は注目を集めてもあまり印象に残らなかったという例は山ほどあります。

<広告を見た人の反応>
【1】広告を見る→【2】目線が移動する→【3】内容を理解する

紹介した事例は、通常の広告にはない【2】のアクションが入ることで、見る側に広告をより深く印象づけることに成功しています。また、屋外広告ならではのリアルに広告を体感できるメリットが相乗効果を生んでいると思います。

見る人の記憶や印象に残るということは、密なコミュニケーションができたということ。広告の役割を十二分に果たしたと言えます。


いかがでしたか?面白かった!実際にこの広告見たよ!という方は、ぜひスキやコメントしてくださいね。

今後も広告事例やアイデアを記事にしますので、気軽にフォローしてくれたらうれしいです!



文:ハギ
@よりみちコピーライター
Twitterもやってます ◆

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