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道草植物図鑑No.15「ヘクソカズラ」

思い返せばこの植物の存在を知ったきっかけは、有川浩さんの小説「植物図鑑」。
植物の名前を知る楽しさが、
いっぱい詰まった胸きゅんな小説です。

作中の登場人物と一緒になって驚いてしまったその名前は、「ヘクソカズラ」!!
植物の名前にそんな強烈な言葉を使うんだ?!

でも考えてみれば、植物に限らず生き物の名前には結構な悪口がいっぱいありますよね。

そんなわけで、ヘクソカズラは作中でも1番印象に残っている植物です。
漢字を当てるとそのまま「屁糞蔓」。
植物が発する臭いから付けられた名前です。

散歩道にこんな愛らしい花がちょこんと咲いていたら、触れたくなっちゃいます。

もっと近くで見たい!とツルを引っ張ろうもんなら、驚くほどの悪臭が漂ってきます。
個人的には、濡れた雑巾の饐えた臭いが近い気がします。
いずれにせよ、屁糞という言葉に思わず頷いてしまう悪臭なのです。

ちなみに、花の可憐さから「サオトメカズラ」という別名もありますよ!

それでは英名は?と調べてみると、
「skunk vine (スカンクの蔓)」
「stink vine (臭い蔓)」
やはり万国共通で臭いの印象が強いのでしょう。

この臭いは、茎や葉を食害する外敵から身を守るためだそうです。
ヒトでも除草をためらってしまう臭いですが、それは虫でも一緒なんですね!

また花をよく見てみると、中心にたくさん毛が生えているのが分かります。
この毛は、蜜を盗むアリの侵入を防ぐ役割をしているそう。
鉄壁の防御、セキュリティが完璧すぎる。

もちろん花もとても愛らしいのですが、
私は蕾が大好きです。

ムーミンにでてくるニョロニョロみたいで、それはそれは可愛いのです。
あとなんか、表面の質感が雪見大福っぽい。

さらにもうすこし季節が進むと、鈴なりになった黄金色の果実が見られます。
しゃんしゃん音が聞こえてきそうで、
これもまた魅力的な姿。
なんとなく想像はつきますが、有毒なので食べられないそうです。

どの姿も可憐で美しく、大和撫子のような風情漂う素敵な植物です。
特徴的な悪臭も、他の植物にはなかなかないパンチのある臭いなので、ぜひ一度嗅いでみてほしいなぁと思います。
見た目も臭いも、クセになると意外と愛おしく感じる植物です。


ヘクソカズラ
Paederia scandens
アカネ科ヘクソカズラ属

在来多年草
花時期 : 7月〜9月
生育地 : 路傍、荒地など


出典 : 植物図鑑/有川浩
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