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「最初の終わりから、初めの日の始まり」蝦空千鶴

太陰太陽暦の新年を迎えて幾日
桜の蕾を見つけた
大空の向こうから
霊鳥が記憶のかけらを運んできた。

陽の光にさらさらと微かな音をたてる
記憶という名の意識も今にしかない
想い出という朧げな記憶も今にしかない


淡いそれでいて明瞭な輪郭を
浮かび上がらせては消えてゆく

時には影を落として影となり
雪原はいつしか川となり
流れる川はさらさらと微かな音をたて始める。 

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無限を孕んだ意識は有限と融合し
記憶のかけらは想い出となる
そこには“もののあはれ”が息づく

人の世では思い出が消える
それは悲しいことだという

意識とは何か

人間の生とは何か


想い出とは何か


流転する意識の中
どの記憶が「わたし」の

記憶なのかわからない。

あのとき、あの場所、愛する人たち
意識に旅の果てはあるのか

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ものがたりは暗闇から始まる
反転する光の翼
聴こえてくる懐かしい声
光も闇も声も知っている

光は純白に昇華した
やがて眼は開かれる
そこは純白の世界
さまざまな色が動いている。

浮かぶ表情、懐かしさ、あたたかさ
夢から覚めた「わたし」
たくさんの儚い想い

家族の団欒、幼い頃の友達との悲しい別れ
景色は移ろい春となり
満開のエゾヤマザクラ
見上げれば雲ひとつない快晴の空

両の掌の桜の花びらたち
セーラー服
桜並木の通学路

「昔の夢を見ていたの」
「人はいつ生まれたの?」
流動する人の意識
愛する人の思い出

人の夢、人の思い出
反転する景色
あざやかに浮かびあがる光景と情趣
生きていることの意味

「わたし」の還る場所
孤独とは何か

人間の考えでは思い出が消えるというのは
悲しいこと、それは人間の世界の話

生きるということは今を生きること

書き初め短編
「最初の終わりから、初めの日の始まり」

https://note.com/ezoranote/n/n75c2d18dfa20



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