見出し画像

欧州 酒文化:食前酒を楽しむ

日本語として「酒文化」なる単語が存在するのかどうかは知らないが、お酒・アルコール飲料にまつわる考え方やその楽しみ方は国や地域によって大きく異なる。

数年前から仕事の関係でフランスに住んでいて、現地の人たちと一緒に食事やアルコール飲料を飲む機会が多くあるので、そのような「お酒・アルコール飲料にまつわる考え方や楽しみ方、(以降『酒文化』と言わせて頂く)」の違いを見聞き体験する機会が多いのも事実である。
ボク自身が「酒・アルコール飲料好き」と言うこともあるのだと思うが、ボクの周りには日本人・フランス人 その他の外国人 いずれにかかわらず「酒・アルコール飲料好きの方」、もしくは「レストランに行って、複数人でワイワイ食事をとるのが好きな方」が多いのは間違いない。

そんな中でボクには「酒文化・食文化」に関する外国人の師匠が4人いる。いずれも、以前一緒に仕事をしていて、当時、ボクよりも「偉い」人達で、それぞれ フランス人、ベルギー人、イタリア系アメリカ人、生粋のイタリア人の4人である。
ちなみにこの4名の方は、酒文化・食文化の師匠であることは間違いないが、それ以前に仕事の上でも大変お世話になった方々。 こういう方々と知り合いになれただけでも海外赴任で辛い仕事に耐えた甲斐があると思っている。

この4人の方に共通して言える「お酒の楽しみ方」は、食前酒からきっちりと楽しむという事である。

フランス・イタリアに限らずヨーロッパの多くの地域では、食事中に「ワイン」を飲むのは非常に一般的である。 日本で和食を頂くときにも、日本酒やビールを食事と一緒に飲むことは一般的ではあるが、食事の前に取り立てて「食前酒」として別個にアルコール飲料を頂くのはあまり一般的ではないと思う。日本における「とりあえず生(ビール)」は、あれはあれでれっきとした「食前酒」には違いないのだろうけれど、そのビールをそのまま食中酒にしてしまうことも多い。

ボクの酒文化の師匠と一緒に食事に行くと、いずれの場合もその食事の主導権をその方が仕切ることになり、どのレストランに行くのか? どの系統の食事をとるのかなどを決定するのは師匠にお任せという事になる。
ただ、皆さんに共通していることは、上にも書いた通り「まずは食前酒を楽しむ」と言うことである。
時間に余裕があれば、レストランに移動する途中にあるカフェ・ブラッスリー・バールに立ち寄りゆっくりと食前酒を頂くし、時間に余裕がなくても、例えば滞在しているホテルのバーで何か一杯飲むか、レストランに到着してから Waiting Bar で一杯飲むか、Waiting Bar に行かないにしてもテーブルに着いた直後にまずは食前酒を発注した後にそれを頂きながらゆっくりとメニューを選ぶ。

その食前酒の選び方も4者4様なのが面白い。

フランス人師匠の場合、王道は Champagne(シャンパーニュ) もしくは Champagne を使ったカクテルの Kirl Royal(キールロワイヤル)。 
泡がお好みでなければ Kirl Vin Blanc(キール ヴァンブロン)あたりに落ち着くのが一般的で、お目当てのレストランでテーブルに着いた直後、メニューを見ながらまずはこれらの食前酒で喉を潤しながらメニューの説明を聞いたり、メニューについてアーだコーだと話しあうことになる。

一方、ベルギー人の師匠の場合は2段階食前酒となることが多い。 
まずは Bar か Cafe で(ベルギー)ビールを食前酒として頂いたあとレストランに向かい、レストランでは Champagne 系の食前酒を頂きながらメニュー選定するというのはフランス流とほぼ同じ流れである。

ちょっと毛色が異なるのが、イタリア系アメリカ人の師匠。
まずはレストランに直行してレストランの Waiting Bar で食前酒を頂く。
食前酒としては、マティーニ、ネグローニ などのアルコール強めのショートカクテルであることが多い。
師匠曰く「この強いアルコールが胃を刺激して食欲が出るんだよ」とのこと。 確かに、それはそれで一理はある気がするし、アメリカ流の巨大ステーキをその後に食することを考えれば、事前に「胃を刺激する」と言うのは必要なことだとも思う。

イタリア人師匠は、ベルギー人師匠と同じく まずは Bar もしくは Cafe に行き食前酒を頂くのだが、食前酒のバラエティが他とは比較にならないぐらい多い。
王道としてはイタリアのスパークリングワインである Spumante(スプマンテ)をそのまま頂くか、Spumante を使ったカクテルを頂く。ミモザ(スプマンテ+オレンジジュース)、ベリーニ(スプマンテ+ピーチジュース)あたりは有名だが、カッシーニ(スプマンテ+イチゴジュース)と言うのがあるのは驚いた。
また、イタリアの食前酒ロングカクテルの定番は「Campali(カンパリ)」を使ったカクテル、カンパリソーダ、カンパリオレンジ、スプモーニ。
最近ではカンパリに代って「Aperol(アペロール)」と言うリキュールを使った、アペロールスプリッツ(アペロール+スプマンテ+炭酸水)なんかもおいしい。
個人的にはこれらのイタリア系の食前酒が大の好物。
食前酒だけで出来上がっちゃいそうである。
でひとしきり食前酒を楽しんだあとは、レストランに移動してドライな白ワインでも頂きながらメニュー決めとなる・・・。うぅ~考えただけでイタリアに行きたくなる。

食前酒に限ったことではないけれど、欧州の「酒文化」の多様さにはホント脅かされるというか幸せな気分になる。
最初にも書いたように海外に駐在して仕事をするのは無論貴重な体験であることは間違いないが、辛いこと厳しいことが多いのも事実ではある。

ただ、これらの経験を通して4人の師匠と出会えて彼らのお作法を教授してもらえたことで、がボクの「酒文化を楽しむスキル」が各段に向上したことは間違いないんだろうなぁと思う今日この頃なのです。

この記事が参加している募集

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?