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【いちごる読書note】ジョブ理論~体現する者としての所感~

ジョブ理論』・・・この本は、『イノベーションのジレンマ』で有名な元HBS教授である故クレイトン・M・クリステンセン氏が2016年に世に出した(邦訳版は2017年)、いわば「イノベーション創出の方法論」を説いたものである。

イノベーションの種を見つけ、育てるための実践の書」といってよい。

彼は言う。

引用A「ジョブ理論によって、機会も、競争相手も、顧客が最も重視するものも、これまでとは異なった見え方をするかもしれないが、同時にそれらはきわめて明白な姿を現す。物事の見方は、後戻りできないほど変わるだろう。もちろんよい方向へ。」

『ジョブ理論』-p79

引用B「ジョブ理論のレンズを通してイノベーションを見ると、その中心にあるのは、顧客ではなく顧客の片づけるべきジョブである。差はごくわずかに―円弧の1度の60分の何度かに―見えるかもしれないが、このちがいは大きい。それがすべてを変えるのだ。」

『ジョブ理論』-p82

この辺りのクリステンセン氏の主張を、どのように受け取るかは、人それぞれかもしれない。

だが、イノベーションをまさに体現しつつある人であれば、その反応は似通ったものになると信じている。

それは、例えば以下のような反応になるかもしれない。

引用Aに対する反応
「クリステンセン教授。全くその通りです。自分自身が今まさに、その現場にいます。他の人と同じような市場にいるようでいて、見ている世界が全く違います。物事の見方も、変わりました。後戻りできないほどに。そしてもちろんよい方向に。」

引用Bに対する反応
「クリステンセン教授。全くその通りです。《コペルニクス的転回》という節で主張されている、天動説と地動説に例えた『似て非なるもの』の小さな違いがすべてを変えること。これもまさに日々実感しながら過ごしています。」

と。

厳密にいうと、前者の反応(A)(物事の見方が変わったことに対する反応)と、後者の反応(B)(コペルニクス的転回に対しての反応)は、ジョブ理論を実践した人の反応と、ジョブ理論と同様に革新的な方法論を創出した人の反応という点で、違いはあるかもしれない。

イノベーションを体現している人のうち、スキルやノウハウを獲得するためのメソッド(方法論)を発見・作り上げた方はAとB両方の反応をするだろうし、そういった類ではない商品やサービスにおけるイノベーターは前者の反応のみ、という可能性がある。

(この点は、そういったイノベーターが周りにいないので、実際に反応や感想を聞いてみないと分からない)

そして、僕自身はゴルフというスポーツにおいて、それをスキルとして身につけ、心行くまで楽しむための方法論(メソッド)を創り上げたという確信があることから、もちろん物事の見方が変わる感覚(反応A)もあったし、クリステンセン氏が「ジョブ理論がそれくらいインパクトがすごい」という点を主張するために用いたコペルニクス的転回の比喩についても、強く共感を覚えた(反応B)。

この本は、そんな僕にとってはいちいち的を射ていて、コンパクトに内容をまとめ、伝えるのが非常に難しい。

同書では、親切に各章に要約が記載されているが、それらをサラッと読むだけでは、到底役立つものではないということだけは言える。
(クリステンセン氏がいうとおり、既存の理論との「差はごくわずか」なのだから、要約されたものだけではその判別さえつかない)

ジョブ理論の内容が気になる方は、ウェブ上でのまとめサイトだったり、アマゾンのレビューで「あぁ、これって要は○○的なやつでしょ?」といって知った気になるだけではなく、ぜひとも実際に手に取って本文を読んでいただきたい。

そして、「これは良いこと言っているかも」と幸いにも直感したのなら、とにかく実践し、また本に立ち戻り、クリステンセン氏が文字としては伝えきれていないかもしれない、行間を読み取っていただきたい。

そうすれば、必ずや実りあるものになるはず。
そして、そういった実りを手にした人がいたら、ぜひとも語らい合いたい!

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