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第3回 北海道オホーツク版、ブロッコリーの基本栽培管理のポイントをまとめました!

新規就農1年目、2年目と2シーズンにわたりブロッコリーに病気がまん延。ブロッコリーはさいこうファームの主力野菜のはずだったのですが……。
しかし、気を落としてばかりはいられません、

「3年目となる今年はなんとしてでも病気に負けずシーズンを通じて安定的に収穫しよう!」

ぼくの強い思いから第1回ではブロッコリーの病気についてリサーチ、第2回ではコルテバ・アグリサイエンス日本株式会社の専門家の方へ農薬の上手な使い方についてインタビューしてきました。

そして、第3回となる今回のテーマは「ブロッコリーの防除、いつ、何をやるの?」です!

前回、コルテバ・アグリサイエンス日本株式会社の播本さんには「栽培地域によって、出やすい病気の種類と時期が異なってくるので、研究機関や普及センターに相談してベースの流れをつくるのが良いと思います」と助言をいただいています。

ということで、行ってきました。
地元美幌町にある網走農業改良普及センター美幌支所!
今回は、「北海道オホーツク版、ブロッコリーの基本栽培管理のポイント」について普及センターで相談してきました。
新規就農のぼくにも分かりやすいブロッコリーの防除暦をつくることが目標です!
相談に乗っていただいたのは美幌支所の普及指導員の斎藤さんと荒木さんです。

斎藤さん(左)と荒木さん(右)が、今回迷えるぼくを導いてくださいます!

2023年のブロッコリーは全道的に病気の被害が出ていました

ーよろしくお願いします。さいこうファームの吉田です。2023年の私たちの畑のブロッコリーは7月は調子良かったのですが、それ以降の8月9月と病気に完全にやられてしまって……。

荒木さん「そうなんですね。暑かったし、去年はねぇ……。さすがに作物にしたって、気象のせいにはしたくないけど、やっぱり限界はあったりするかもしれないと思いますよね」

斎藤さん「去年は例外的な年で、どこの畑も病気の被害を受けていましたね。農薬メーカーさんに聞いても、全道的に黒すす病が出ていたようです。やはり暑さが問題でしたね」

ー全道的にもそうだったんですね。うちでも初めはあれこれと頑張って防ごうとしていたのですが、もう止まらなくて。最終的にはブロッコリーを諦めて、他の野菜に集中することにしてしまいました。

オホーツクで発生が多い病気は軟腐病、花蕾腐敗病、黒すす病

ーとはいえ、どんな気候であってもある程度安定的に収穫できるように基本を抑えたいと思っています。今日はブロッコリー栽培の基本の流れや防除暦作りについて相談させてください!

斎藤さん「分かりました。まず、ブロッコリーの病害についてですが、軟腐病、花蕾腐敗病、黒腐病、ベト病、あと黒すす病などがあります。特に注意が必要なのは、軟腐病花蕾腐敗病、それと黒すす病ですね。去年は特に黒すす病の被害が大きかったです」

※ブロッコリーの病気の種類などについては第1回のnoteもぜひご覧ください!

ーうちの畑でも、その3種が多かった気がします。

花蕾腐敗病と軟腐病対策のために夏場の施肥は控える

斎藤さん「まず花蕾腐敗病と軟腐病についてですが、これは高温多湿の時に出ます。それと肥料(窒素)が多すぎても出ますね」

ー肥料が多すぎても出るんですね。

斎藤さん「そうなんです。なので、収穫が暑い時期に重なる晩春まき(※1)の場合は肥料を減らすことが推奨されています(※2)。これは、軟腐病対策ですね」

※1 晩春まきは道東の場合、5月中旬から6月初旬に播種し、8月に収穫する作型です。
※2 北海道の施肥基準については北海道施肥ガイドを参照してください!北海道施肥ガイド2020

ーなるほど、暑い時期には病気が出やすいから、施肥量も減らす方が良いんですね。

荒木さん「暑い時期は肥料の分解も進むし、もともと土壌にあった窒素分も使われるようになるので、施肥量を調整しないと窒素過多になってしまうというのもあります」

斎藤さん「北海道施肥ガイドでは10aあたりの窒素量について通常時は基肥量が18kg、晩春まきだと基肥量が4kg、花蕾ができるまでに追肥で10kgとなっています。ただ、このあたりの農家さんでは、基肥料をここまで極端に減らすのではなく、追肥も含めた全体の窒素分を減らす対応をされていますね」

ーそうなんですね。さいこうファームでは1年中同じ施肥をしていました……。肥料が足りなくてブロッコリーが柔らかくなってしまうのが怖くて、いつも多めに施肥してしまっていましたが、今年からは適切な施肥を心がけます!

斎藤さん「それと、ブロッコリーのカルシウム窒素比もポイントになります。これが窒素側に傾きすぎると発病するので、防除のときなどにカルシウム剤も散布してあげると病気のリスクは減らせます

ーカルシウム剤はやっぱり効くんですね。先輩農家さんにアドバイスもらって少し試したりはしていたんですけど、最初に買ったものがなくなったらそれっきりでした。今年からしっかり使うようにします!

斎藤さん「施肥以外については、畑の排水性を良くするのも大切です。多湿は良くないので。それと、ブロッコリーを傷つけないことも重要です。除草や虫害などでできる傷は病気の原因になります。除草のカルチをかけられる目安は定植後1カ月くらいまでですね。それ以上になるとブロッコリーが大きくなりすぎてしまうので」

ー傷は病気の原因になるんですね。除草もそうだし虫害でも傷つけていた気がします……。


花蕾腐敗病と軟腐病の防除は花蕾のでき始めが勝負

斎藤さん「それで、防除ですね。軟腐病と花蕾腐敗病の防除は、スターナなどもありますが、この辺りでは銅剤(※3)を使うのが一般的ですね。銅剤をブロッコリーの花蕾ができてから約1cmくらいになるまでの間に、中3日くらいあけて2回散布してあげるのがもっとも効果的です」

※3 ブロッコリーではコサイドやボルドー剤などがあります。

ー花蕾が約1cmまでの間に2回ですか!?それは、かなり難しいですね……。
(ブロッコリーの花蕾は大きく茂った葉っぱの中央にできるため、葉をかき分けて確認する必要がある上に、成長スピードが早いので気づくと1cmを超えてしまう場合が想定されます)

斎藤さん「そうですね、花蕾のでき始めに散布するのが重要なんです。2回散布できなかった場合は、なるべく早めに1回散布するほうが防除効果が高いという試験結果がでています」

ーなるほど、花蕾のでき始めに銅剤。頑張ります。

斎藤さん「ここで重要になるのが、ブロッコリーの生育がなるべく均一になることなんです。同じステージの(播種、定植タイミングが同じ)ブロッコリーでも成長具合にばらつきがあったりしませんか?」

ー確かに、かなりばらつきがあります。同じステージのブロッコリーでも生育が違うから何度も収穫に入りますね。

斎藤さん「そうですよね。でも最適な防除タイミングは花蕾のでき始めなので、できるだけ成長が揃っているのが望ましいんです。なので、定植の際の苗はできる限り同じ成長度合いのものを使ってください」

ー気をつけてみます!

花蕾のでき始めを見逃さないことが大切なようです!

黒すす病対策は定植の日から始められる

斎藤さん「次は黒すす病ですね。黒すす病対策の防除では、最近灌注処理の登録が増えた農薬があります。ですので、定植日から始めてみるのが良いかもしれません」

ーすみません、灌注処理ってなんでしたっけ?

斎藤さん「定植する前に、セルトレーに育苗している状態で農薬を散布することですね」

ーセルトレーにジョウロでかけるやつですね。さいこうファームではねこぶ病対策でオラクルを散布するときに同じ方法でやっています。全体への散布も簡単だし、それいいじゃないですか!灌注処理したらいつまで安心なんですか?

斎藤さん「灌注処理をしたからずっと安心というわけではなくて、定植後1カ月に1回、花蕾のでき始めに1回防除するのが良いと思います。防除のときは、耐性菌への対策のために、作用機構が異なる農薬(※4)を交互に使うようにしてください」

※4 作用機構(病虫害に対する農薬の効き方)に基づいてRACコードで分類されています。RACコードは各農薬のラベルやHPで確認できます。RACコードが同じものを使い続けると耐性菌出現のリスクが高まります。

ーなるほど、黒すす病対策は定植前、定植後1カ月、花蕾のでき始めですね。

斎藤さん「そうですね。ブロッコリーの場合は害虫対策も重要になるので、害虫対策用の防除スケジュールと病気対策の防除スケジュールを組み合わせてやると良いですね」

セルトレーで育苗したブロッコリーの苗。この状態で始める防除が灌注処理です。

暑さに強いブロッコリーの品種はSK9-099

斎藤さん「その他対策できるものとしては、ブロッコリーの品種選びかもしれません。軟腐病に強いというより、暑さに強い品種としてはSK9-099が挙げられると思います」

ーSK9-099は暑さに強いんですね!さいこうファームでも昨シーズンの序盤だけ試していました。ただ、そのときはまだ病気が深刻になる前だったんですよね。もしかしたらSK9-099を使っていたら、暑い時期の病気もある程度減っていたかもしれないんですね。

斎藤さん「去年、黒すす病がかなり問題になりましたが、SK9-099を使っているところではそこまで問題にならなかったようでした。以前に試験場で病気に対する強さを調べたときはそこまで他の品種と差がなかったようなのですが、去年の暑さの中では差がでていましたね」

ーそうなんですね!SK9−099についてはブロッコリーのでき上がりが早くて生育の揃いもいい印象がありました。

斎藤さん「でき上がりも早いですよね。それに生育の揃いが良いと収穫日数が長引かないというのは状態の良いブロッコリーを収穫できるので、品質面でもメリットがあります」

ーSK9-099が生育が早いことによるデメリットとかはないんですか?

斎藤さん「生育が早いので寒い時期の作型だと背丈が短くなるので、地際すれすれで収穫する必要がありますね。そのくらいだと思います」

ーなるほど。それじゃあさいこうファームではSK9-099に切り替えてしまおうかな。

斎藤さん「切り替えてしまっても良いと思いますよ。女満別でも切り替える農家さんがでてきています。去年病気がひどい中でも収穫ができていた農家さんが使っていた品種もSK9-099でした」

ーそうなんですね、切り替えることにします!

ー今日はありがとうございました。これで今年のぼくらの防除暦や栽培管理のスケジュールを考えてみます。

荒木さん、斎藤さん「何かありましたら、いつでもご相談ください」

ブロッコリーなどの野菜を担当されている斎藤さんが資料を開いて説明してくれました!

北海道オホーツク版ブロッコリーの基本栽培管理のポイント!

ということで、今回は農業改良普及センターで具体的な栽培管理、防除について相談してきました。
今日の学びのポイントをまとめます。

<ブロッコリーの病気対策のポイント>
(オホーツク地域で特に警戒すべき病気)
・細菌系の軟腐病、花蕾腐敗病、糸状菌系の黒すす病に要注意。2023年は暑かったことなどで全道的に黒すす病が多発した。
(施肥)
・窒素肥料をあげすぎない。特に収穫が暑い8月に重なる晩春まきでは施肥量を減らす。
・ブロッコリーのカルシウム窒素比が窒素側に傾くと病気が発生しやすい。カルシウム剤を葉面散布することで補給する。
(管理)
・畑の排水性を高くして多湿を防ぐ。
・カルチ除草などでブロッコリーに傷をつけないように注意。害虫による食害も病気の発生源となる。
(防除・軟腐病、花蕾腐敗病)
・銅剤を花蕾のでき始めに散布して予防的に防除する。理想は花蕾ができて1cm以下のタイミングで2回散布。
(防除・黒すす病)
・防除のタイミングは定植時(灌注処理)、定植後1カ月、花蕾でき始めの3回。
・防除は作用機構の異なるものを交互に行う。
(品種)
・昨年の実績からSK9-099が暑さに強い結果が得られている。
普及員さんに話を聞きませんでしたが、
(もしも夏が涼しかったら)
・涼しいときに発生しやすい病気であるべと病対策も取り入れる。
※2023年のさいこうファームではシーズンの序盤にべと病のような病斑が出ていました
(追肥のときにもしかしたら使えるかも?)
・肥料過多が病気の発生につながるとのことでした。とはいえ肥料不足でブロッコリーの品質低下も気になります。コルテバさんがこれから取り扱う予定のユートリシャNというバイオスティミュラント剤が使えそうです。

以上、「北海道オホーツク版、ブロッコリーの基本栽培管理のポイントをまとめました!」でした。
いよいよ暖かくなってきて農業シーズンが始まりますね。次回も一人前のブロッコリー生産者を目指して学んでいきたいと思います!お楽しみに!
このnoteは農薬メーカーであるコルテバ・アグリサイエンス日本株式会社さまの協力を得て作成しています!


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(登場人物)
ぼく:東京大学で農学博士取得後、ベンチャーで8年勤務。その後、北海道で新規就農。

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