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旅行の満足度の考察

行程さん」という、旅のしおりを作成・共有できるサービスを作った吉川雅彦です(Twitter:@masahiko888)。行程さん株式会社では「旅をデザインする」ことをミッションに掲げています。

先日、「夏にやり忘れたことを1泊2日で全部やる会 in さる小」のことを記事にしました。このアカウントはデザインのことを記していくアカウントなのですが、あえて上記の記事を投稿しました。理由は、旅行の満足度について考察したかったからです(正直にいうと、イベントレポとまとめて書く予定でしたが予想以上に長くなったためです)。

さる小イベントの満足度

今回のイベントの満足度はかなり高かったです。

もともとそれほど旅行に行くことが少ない私ですが、以前に友人とフィンランド&ロシア旅行8日間に行ったとき(人生でたった一度しか行ったことがない海外旅行)と同じくらいに満足度が高かったです。

今回のさる小イベント(今回は旅行と同じくくりでとらえてます)を通して、旅行での満足度はどのように上げたら良いのかのヒントも得られた気がするので考察したいと思います。

考察

今回のイベントに参加してみて、旅行の満足度や幸福度に与えそうなことを書き出してみました。

・旅行前の期待値
・不確実性のある要素
・旅行前の期待値と不確実性のある要素の相乗効果
・予想していたことよりも上になる
・不確実性がありながらもトラブルの少なさ
・旅行やイベント自体が楽しさ
・体験したことのないことが体験できる
・依存関係がない(知り合いがいない、人数が適度に多い)

『「幸せをお金で買う」5つの授業』

『「幸せをお金で買う」5つの授業』という本に書いてあることを用いて、なぜ満足度が高かったのか、幸福に感じたのか説明ができそうなので紹介をしたいと思います。

・経験を買う
・ご褒美にする
・時間を買う
・先に支払って、あとで消費する
・他人に投資する

この5つがお金で買うことのできる幸福です。

物を買うとどうしても後で比べたりして後悔が残るものですが、経験の場合は後悔しにくい。いい「経験を買う」ことによって幸福になるのです。いい経験とは以下のようなものです。

・他の人々と交わることによって、社会的なつながりが生まれるような経験
・この先何年にもわたって楽しい気持ちで繰り返し語ることができる思い出話につながる経験
・あなたが感じている自分という人間、あるいはあなたがなりたいと思っている人物像に密接に結びつく経験
・他の選択肢と簡単に比較することができないめったにないチャンスを与えてくれる経験

知らない人と接し、その後も繋がりができました。今まであまりしたことのない体験をすることで繰り返し語れるような体験でしたし、他の選択肢と比較できるようなものではありませんでした。

私自身ものすごく旅行に行ったりどこかにイベントに行ったりするわけではないことも大きな要因です。つまり「ご褒美にする」のです。

「先に支払って、あとで消費する」形になり、「時間を買う」ことでいまに集中でき、お金という概念から離れて楽しむことに集中できました。時間をお金とみなすと幸福度が下がります。自分の時給を計算する方がいるかと思います。それ自体は悪くないですし、時間の大切さを知ることで何をすればいいかの指標にもなります。しかし、誰かと遊んでいても「俺の時給は○○円なんだぞ」というように時間を気にしすぎてイライラしてしまっては元も子もありません。気にしすぎると幸福度が下がるというのをわかっていただけたでしょうか。

不確実性も大きく幸福度に左右します。何が出るかお楽しみ、というやつです。今回のイベントに不確実性をもたらしたのは「主催者 対 個人」という関係性ではなく、それに加えて「個人 対 個人」の関係性になるような仕組みだったことが大きいように思います。どういった催しをするのかは過去の同様のイベントを見たり告知されていたりしたのですが、実際にそれが行われると何が起きるかわからないものです。エンジニアの人と会って話がはずんだり、即興でマイムマイムをみんなで踊ったり、素敵な写真を撮ってもらったり。

不確実性があればもちろんいいというわけではなく、嫌なことがなかったり、期待を上回っている必要があります。そこは主催者側、また参加者の事前の準備があってこそだと感じました。

不確実性は、「さる小」という場所も大きく影響しました。中学校くらいの修学旅行を思い出してみてください。よくありがちなホテルでよくありがちな部屋で寝て、行ける範囲が制限されている。そういった状況下では不確実性があまりなく、予測できる範囲内になってしまいます。今回は小学校といった意味では不確実性はあまりないかもしれませんが、それぞれが過ごした小学校との違いに驚いたり、どこへでも侵入できて制限されていなかったり、懐かしさを感じたりして、予想していた以上の心の振れ幅がありました。

では、事前に何も知らない方がいいかというとそうでもありません。想像できる余裕を残しておくことで、期待が膨らみます。もちろんその期待をさらに超えていくことが望ましいのですが、期待から外れても「将来のいいことを思い描くと幸福感が増す」(ベルギー、リエージュ大学の研究者の実験)、「期待との差をポジティブに埋められる」(心理学者ティモシー・D・ウィルソンらの研究)ことにより、期待していくこと自体も満足度や幸福度につながります。しかし、期待が大きすぎた場合は、満足度は高くならないでしょう。

ピーク・エンド効果(経験時のピークと終わりの感情で、経験全体を判断してしまう考え方)を利用してうまく設計すれば、体験全体の満足度も高められる可能性もあります(『幸せな選択、不幸な選択』という本では不幸な時間が長くても「あの経験はよかった」と錯覚してしまうという文脈ですが)。

しかし、旅行で後悔したり最悪な思い出になったりすることは実際に起こりえます。明確な目的があって達成できなかった場合もそうですが、他には(推測かつ一例ですが)「依存する関係」で旅行に行き「その関係性が悪化する」場合に満足度が下がるのではないでしょうか。「彼氏と旅行に行ったけど、予定通りにしないと気が済まない人で喧嘩になった」「友人3人でいったけど、わがままな人がいたせいで楽しめなかった」等。

旅をデザインする

おいしいご飯を食べて、すてきな景色を見て、仕事から離れ、ひとりや好きな人とや友だちとでのんびりと過ごす。それらが達成されると満足な旅ができそうですが、考察を通して、そういった「目的」以外の部分をデザインすることでも旅行の質が変わるのではないかなと感じました。

満足度を高めるために以下のような要素が旅の中にあると良いのかもしれません。

・依存関係がない(損得が発生しない関係)、もしくは依存できる関係が多い人と参加
・ある程度の期待が膨らませられる
・期待を超える不確実性を秘めている
・不確実性を高めるために非日常的な環境下に置く
・不確実性を高めるために予測しにくい人と接する環境下に置く

以上、考察でした。

Twitter→@masahiko888

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