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飛ぶ教室

河合隼雄先生の著書で紹介されていて、以前読んだ本。
つい先日、地域でお世話になっている人との会話の中で出てきたので、再読してみました。世界的名作であるということを、前回読んだ時よりも感じました。

作品が書かれたのは、1932年のドイツ。寄宿学校に通う5人の少年たちと、2人の大人の物語。作者自身も「まえがき」にあえて登場し、大切なことを語ってくれます。

賢さを伴わない勇気は野蛮であり、勇気を伴わない賢さは何の役にも立たない。

子どもにも、悲しみや不幸はあり、大人より深い悲しみや涙の重みもある。

子どもの頃のことを、忘れてはいけない。

作者が語り、物語の中で先生も語ることで、深く読み手の心に届けてくれます。子どもたちに伝えたいことであると同時に、大人にとっても重要なメッセージではないでしょうか。

5人の少年たちは、それぞれに強みも弱みも持っていて、子どもたちの社会を作り、懸命に生きています。僕たちの子ども時代にも教室にいたような子どもたちです。子どもの社会に生きながら、大人たちのこともしっかり見ています。そのことを理解している先生がいて、尊敬と信頼が築かれている様子は、うらやましさも感じました。

理想的な家族の姿だけでなく、親の都合に振り回されてしまった悲しみや、貧しさに耐える姿も描かれています。真実から目を背けないでと、教えてくれているかのように。もう90年も前に書かれた作品で、今では移動の速さや手軽さ、連絡をとる手段の便利さは格段に上がっています。でも、子どもたちが抱える悲しみや不幸は、消えるどころか、深刻になっているかもしれません。
印象深いもののひとつが、貧しくて休暇にも家に帰れない少年が描いた、「十年たったら」という題の絵。家族に対する愛情が詰まった、少年の将来の夢です。今から十年後は、この作品が書かれてからおよそ百年後。大人が子どもの頃を忘れず、もっとお互いに助け合えるような社会になっていてほしいと思いました。

タイトルの「飛ぶ教室」は、5人の少年たちが寄宿学校のクリスマス会で発表する自作劇の名前。授業の内容を現地で学ぶために、飛行機で世界を巡るもの。勉強をただ机の上だけで終わらせず、現場で体験することが大切だとさりげなく語ってくれているようです。

読書のきろく 2020年20冊目
「飛ぶ教室」
#エーリッヒ =ケストナー
#江口四郎
#講談社青い鳥文庫
#児童文学


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