0309鳥貴族の奇跡のコピー

【第8話】恐怖の引っ越し費用、そして移動スケジュール

◇3月末は禁断の引っ越しシーズン!

 ジプシーのように頻繁に引っ越しをしている我々夫婦。たとえ大阪だろうが愛媛だろうが、楽勝楽勝……とタカをくくっていたが甘かった!! 3月末~4月頭は引っ越し屋さん超繁忙期。トラックがないと断られる、運良く残っていてもベラボーに高い! 

 ってことで、秒速で金の出ていく今日この頃なのであった。

 埼玉県蕨市~愛媛県今治市。夫がやっと見積もりにまで漕ぎつけた3社の金額は…

 ①Aート引越センター:55万円

 ②Aりさんマークの引っ越し社:42万円

 高いが負けてくれなんて言おうものなら、「あっそうですか、だったら別のところにすれば? こっちはお客さんが引く手あまたなんで」ってなノリである。残るは福山通運さま。ネットで調べたところ、「遠距離の引っ越しなら、常に輸送ルートを確保している宅配便会社のほうが安く収まる」とのことでエントリーした。

 ③福山通運:29万円

 値切り交渉をしたが数千円単位でもNG(泣) 仕方ないがベストの選択だ。泣く泣くフクツーさんにお願いすることに。ちなみに地域おこし協力隊の先輩O氏は、「もったいないなー。1カ月後には半額ぐらいに下がるから、4月の着任時は自分だけ身ひとつで引っ越し。5月ぐらいに嫁と荷物が後から来たよ」とのこと。ただウチの場合、その間いろいろ行き来することを考えると、旅費だけでやはり十万円以上かかりそうだ。やっぱりこうするしかないんだよなぁ。トホホ。


◇安い自動車店はネットに載ってない!

 埼玉在住とはいえ、都心に近い街暮らしの我々。電車&レンタカーですべて事足りていた。今回は軽自動車が必須となるので、どこかで手に入れなければならない。軽トラでもいいが、島は仰天の小道が多いので「普通自動車」では暮らせないだろう

 当初の目論見としては、埼玉で軽自動車を購入後、島まで直接乗っていくつもりだった。実は引っ越しの荷物は、搬出から搬入までなんと「3日間」もかかる。トラック→貨物列車→現地付近でトラックに積み替えというルートらしい。荷物より人間の方が先に着いてしまうので、布団などの当座の生活用具はすぐに使えるよう別便で運ぶ必要があるのだ。

 どうせだったら、車をこっちで買ってそのまま今治まで乗っていけば、生活用具も運べるので節約できるよね。今後は二人であまり長期の旅行できなさそうだから、そんな旅も楽しそうだし。

 しかし、事態はそう甘くなかった。 

 埼玉・東京で安全に乗れそうな中古の軽を調べたところ、高い! 外見ボコボコでも気にしないのに30万円とかするの?! ちょっと油断すると簡単に50万円越えという現実……。

(カーセンサー.netのスクリーンショット) 

Facebookで騒いだところ「あげるよ」と名乗ってくれた方もいたのだが、ビックサイズのボックスカーで走行距離27万キロということで、涙を飲んだ。

 車好きの弟に聞いたところ、その値段は妥当とのこと。さらに

整備が入るので、購入から納車まで3週間ぐらいはかかる

・「購入した県」と「ナンバー登録する県」が違うと、手続きが面倒

 とのことで、引っ越し2週間前にようやくネットで探し始めたこの状況は、絶望的と言ってもよい。途方にくれていたところ、前回書いた物件視察の際、ベリーナイスな車があったんですよ! それは農協がやっている中古車ショップ。車検込みで15万円の軽自動車。走行距離7万キロ。農協のお兄ちゃんに泣きついたところ、一度廃車になったものを整備して売ってもらえることになった。外見はボロでもいいという条件を出したのだが、結構きれいだった。

 Googleマップやネットで必死に探したときは、大三島の中古車屋さんなんて1件もヒットしなかったのに……実際にはあるもんですねぇ。ここは役所のボスに教えてもらって初めて知った。わざわざネットになんて載せなくても、地元の人は皆知ってるということなんだろうか。田舎あるあるってこういうこと?

◇頭を悩ます移動スケジュール

 前述のとおり、引っ越しの搬出→新居搬入までには3日もかかる。さて引っ越し前後のスケジュールはどうしよう? 車が現地調達となると、生活用具と一緒に移動するパターンは無理。でも荷が到着するまで冷たい床で寝るのはわびしいし……、他にも、クリアすべき課題はあった。

①当日の移動手段… 島のインターまではバスで行けそうだが、そこから新居への移動手段がない。(レンタカーを借りても返す拠点は島外だし、島内バスが運行している時間にはたどり着けない)

②新居の鍵問題… 今回は「地域おこし協力隊」ということで、役所から住居を提供してもらう立場だ。新居の鍵は役所で預かってもらっているので、閉庁の17時前までには着かなきゃダメ?(というか付けるのかしら?)

 結局、①②については協力隊の先輩O氏が我々のかわりに鍵を預かってくれ、しかもインターまで車で迎えにきてくださるということで一挙解決。当座の荷については、ゆうぱっくで先に送ることに。

 もう移住前から人にお世話になりっぱなしっす。オシャレでパクチー好きのO先輩には、あっちで手に入らなそうな素敵ハーブ詰め合わせを買っていくことにした。最初は「島だからどこでも草育つやろ!」と思ったのだが、どうやら先輩の庭とは土の質が合わないらしくパクチーが育たないんだって。

 そんなこんなで立てたスケジュールが以下の通りだ。

3/29(日)… AMゆうぱっくで布団やカセットコンロ、3日間の生活用品を事前に発送。30日午後到着指定。

3/30(月)… 9時引っ越し搬出。そのすぐ後に、電車に乗り新幹線で福山→バス→O先輩の車→新居(18時半~19時到着予定) ※午後:生活用品が到着

3/31(火)… 農協の中古車店で軽自動車を購入(中古車店までは徒歩)。納車までの代車をゲットし、足を確保。午後は近所の挨拶まわり。※事前に買っておいたあいさつ回り用の手土産は、午前到着

4/1(水)… 夫「地域おこし協力隊」に着任。原付きバイクが1台支給されるので、私の足も確保されることに(まだ自動車免許持ってないから)。

/2(木)… 13時、荷物搬入。ネットの開通。荷ほどき!!!

 事務手続きが苦手な私のために、夫がかなり頑張ってくれた。それでも遠距離での配送や島の事情が分からないため、このスケジュールにたどり着くためには結構な日数がかかった。ふうっ。

 ついつい怒涛の毎日に流されて、立ち止まって考えるヒマがなくなってしまったが、やっぱり移住へ踏み切ったきっかけも書いておこう。前にも述べたとおり、ちょうど自分の仕事がノッてきたこともあって、私は今年都会を離れることに大きな抵抗があった。

 だが先月、2人の先輩がかけてくださった言葉で心が動いたのだ。

ライターのヴァダ先輩 「すでにある“面白いネタ ”を探すんじゃない。どこにいたって“自分で面白くする”のがライターってもんでしょ!」

編集Hさん 「親から物理的距離を置くことで、客観的に過去の出来事をとらえられる。見えてくるものがあるんだよ」

 実は私、子供時代に自分に起きた出来事について本にしたいと思っている。でも、3年ぐらい何度書いても上手くいかなかった。たぶん「こんなこと公にしていいのか」と何かに気を遣っている。家族なのか昔の友達なのか、それとも自分自身になのか。わからないけど、ふっきれないのは確か。でもどう改善していのか分からず放置していた。

 他の仕事や取り組みが盛り上がってきて、そっちにかまけていたところ、Hさんから「書くべきものから逃げていないか」との厳しい指摘を受けたのだった。そんなつもりはなかったが、あの瞬間号泣してしまったし、1カ月以上もたった今でも毎日思い出す言葉なんだから、きっと潜在的に何か後ろめたい部分があるのだろう。

 Hさんからは「この表現をモノにできたら、きっとすごいと思うよ」と1冊の本を勧めていただいた。石牟礼道子さんという方の『苦海浄土』(講談社文庫)。水俣病について書かれたものだが、お涙頂戴でも怒りに任せたものでもない。病と共存する人々の肉体や営みを貴んでる感じがとんでもなくて、それは言葉でストレートには書いていないんだけど、描写の端々ににじんでいるのだ。裏テーマはんぱねぇ! 強すぎて、その生命力とか怒りとか踏みしめる力に毎ページぶっとばされて、こんなものは書けねぇとうなだれつつも、吸収できるエッセンスだけは何とか……と毎日鞄に入れている。きっと何度も読む本だ。

 …とまぁ、感動がせりあがってきてを突っ走ってしまったが、生まれ育った土地から初めてこんなに離れる―― 「800km」という距離が自分の魂や考え方にどういう影響を与えるのか、とても見てみたくなった

(ふざけているようですが、ふざけてません)

 もう「こうなる流れ」なのかもしれない。夫が心から欲したように、私にとっても必要なイベントなんだろう。なんだかすごく納得したのだった。

 さぁ、ここ数日が勝負! 明日は移住前最後の仕事だし、終わったらひたすら荷づめ作業なんだから。次回はおそらく新居ー―竹藪ハウスからのレポートになるでしょう。皆さん、それまでお元気で~。

                             (続く)

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