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やめたくてもやめられないのは、なぜか?

“やめたいと思っているのにやめられない”
そんな経験をしたことがある人は
とても多いんじゃないでしょうか?

“家族の一人が
あるものにのめりこみ過ぎていて、
歯止めをかけたいんだけど、
何を言っても一向に効果がない”

そんな経験をしたことがある人も
少なくないと思います。

特定のものや行為を
やめたくてもやめられなくなってしまった
状態を依存症といいますが、
実は、この依存症は、
わが国で最も多い病気の一つなんです。

そして僕たちは誰もが、
依存症になってしまう可能性があります。
なぜなら、人間の心理は、
特定のものに依存しすぎてしまいやすい
性質を持っているからです。

この記事では
依存のメカニズムと脱出法について
お伝えしたいと思います。



<質問:家族が依存症になったらどうしたらいいですか?>


視聴者さんから
こんな質問がありました。

私の夫は、毎日のように夜遅く帰ってきます。
残業だと言っていました。
また夫は土日も休日出勤することが多く、
私はブラックな会社だなと思っていました。

ところが夫は、仕事が終わった後に、
パチンコに行っていたのです。
休日も出勤していたのではなく、
パチンコやスロットに行っていました。

このことが発覚したとき、私は夫を責めました。
嘘をつかれていたことがショックで、
裏切られたと感じたからです。

そのとき夫は謝ってくれ、
パチンコもスロットも辞めると言いました。
そしてその後2週間くらいは
早めに帰宅してくれていたのですが、
すぐに元の生活に戻り、
再び夜遅く帰ってくるようになりました。

今度は本当に残業だと夫は言いました。
しかしそれは嘘でした。
さらに200万円も
借金をしていることが発覚しました。
そのお金はパチンコやスロットに
消えたとのことでした。
私はやはり夫を責めました。

しかし、後で冷静になったときに、
責めるだけでは解決しないのではないか、
と思いました。

このようなケースでは、
どのように考えたらよいのでしょうか?
夫を責めるよりも、
もっと良い方法があると思うのですが、
私はどのようにすればいいのでしょうか?


自分の知らないところでお金を使われ、
さらに嘘をつかれたのはショックですよね。

いまだにやめてくれていないということで、
将来の不安、やるせなさ、無力感など、
いろいろな気持ちを
感じておられるんではないかと思います。

ご主人は、ギャンブル依存症の
可能性があると思います。

ちなみに大谷翔平選手の通訳をしていた
水原一平さんが
「自分はギャンブル依存症だ」
と言ったということが
今ニュースで流れていますよね。

ギャンブル依存症の方って、
少なくないんです。


他にも、いただいたご質問・ご相談の中には、

夫が万引きをくり返します、
というご相談や、

妻が一日中オンラインゲームをしています、
というご相談もありました。

それぞれ、
ご質問してくださった方の配偶者さんが、
それに該当するかどうかはわかりませんが、

万引きをやめられない、
という形の依存症を
「クレプトマニア」と言い、

ゲームをやめられない、
という形の依存症を
「ゲーム依存症(ゲーム障害)」と言います。


依存症の特徴として
ぜひ覚えておいていただきたいことがあります。

依存症になると、意志の力ではやめられない、
ということです。
これ、すごく重要なポイントです。

依存症の人の言動を見たとき、
「意志の力が弱いからじゃないか」
「倫理感が低いんじゃないか」
「家族を大切に思っていたなら抜け出せたはずだ」
などと考えてしまいがちですけど、
依存症というのは、
そのようなものではないんです。

意志の力ではやめられない病気。
それが依存症です。


なので、もしもご家族に依存症の方がいる場合、
逆効果になるのは、
倫理感や気持ちに訴える、ということなんです。

「家族を裏切らないで」とか
「ウソをつかないで」というのは、
逆効果になってしまいがちです。

ちなみに、ウソも依存症の症状の一つです。
なので、これも意志の力ではやめられません。

ですので、そこをついちゃうと
ますます本人は追い詰められて、
さらに依存対象に逃避するようになる
ことが多いんです。

依存症は病気ですので、
ちゃんと治療をする必要があります。
逆に言えば、
治療によって回復することが可能ですので、
悲観する必要はありません。


<「物質への依存」と「行為への依存」>


依存症を大きく分けると、
「物質への依存」と、
「行為への依存」
2つに分けることができます。

物質への依存には、
・アルコール依存
・薬物依存
・ニコチン依存
・カフェイン依存
・砂糖依存、糖質依存
などがあります。

行為への依存には、
・ギャンブル依存
・オンラインゲーム依存
・推し活への依存
・恋愛依存
・買い物依存
・ワーカホリック(仕事依存)
などがあります。

・配偶者や家族に対する
 DV(暴言や暴力)をやめられない
・パートナーがいるのに、
 不特定の相手との性行為をやめられない(セックス依存)、
・子どもへの過保護・過干渉をやめられない、
・自傷行為(リストカットや抜毛)を やめられない、
・万引きをやめられない
なども行為への依存です。


あとは物質、行為とは別に、
「人間関係への依存」という
第3のカテゴリーを設定する分類もあります。

このカテゴリーには、
上記の恋愛依存や
DVをやめられない、
子どもへの過保護・過干渉をやめられない、
などが入ります。


以上、依存対象による分類を紹介しましたが、
いずれの依存症であれ、
本人には依存症の自覚がないことが多いです。

「やめようと思えばいつでもやめられる」
と思っているケースもよく見られますし、
そもそもやめようと思っていない場合も
よくあります。


<ドーパミン型の幸せを目指すことのリスク>


依存症は、脳の病気とも言えます。
依存症の人の脳内では、
ドーパミンという神経伝達物質の分泌量が
正常ではなくなっています。

ドーパミンっていうのは
快楽ホルモンとも呼ばれる神経伝達物質です。

例えばギャンブルに勝ったとき、
高揚感を味わえますよね。
こういう興奮状態にあるときに、
ドーパミンがバーッと出てくるわけです。

買い物依存の人が
ブランド物の高級バッグを買って
高揚感を味わっているときも、
クレプトマニアの人が万引きをして
スリルを味わっているときも、
お酒を酔っ払うまで飲んだ人が
陶酔感を味わっているときも、
ドーパミンが分泌されます。

そしてこのドーパミンには、
中毒性・依存性があります。
脳がその快楽をさらに求めるようになる。
そしてまたその快楽を得る、
これをくり返すことで
脳の中に回路が出来上がってしまう。
これが依存症です。

ドーパミン自体は、
学習とか動機づけとか
意欲などにも関連していて
大切な働きもあるので、
決して悪者ではないんですが、

快楽によって大量に分泌され、
それがくり返されると、
ドーパミン中毒になってしまいやすい
ということです。


ここで大切なお話をしておきますが、
「ドーパミン型の幸せ」を目指すと
依存症になるリスクも高まるし、
メンタルも弱くなる傾向があります。

ドーパミン型の幸せっていうのは、
高揚感や陶酔感によって
幸せを味わおうとするということです。


ここで、小玉正博教授がされた
けん玉の実験をご紹介します。

初心者の人たちにけん玉を渡して、
これを習得してくださいと個室に入れました。
20分以内にを上げて放棄した人たちは、
打たれ弱い人たちと考えられますが、
この人たちに共通していたことがありました。

それは、ハイテンションになる人たちだったんです。
球が皿に乗るたびに、
「よっしゃー!」って声を出したり、
ガッツポーズをしたり、
飛び上がったり。

ハイテンション、興奮状態になっちゃう人。
ドーパミンをバーッと出しちゃう人です。
そういう人は、感情の浮き沈みが激しくなり、
打たれ弱くなる傾向がありました。

一方、けん玉の実験で
1時間以上続けることができた人たち、
つまり打たれ強い人たちに共通していたのは、
一喜一憂したりせず、
淡々と練習していたってことでした。

この実験からも、
ドーパミン型の幸せ(高揚感)を求めちゃうと、
メンタルが弱くなるということがわかりますね。


<セロトニン型とオキシトシン型の幸せ>


それでは、永続的かつ安定した幸せを
実現するためにはどうしたらいいのか。

それは、
「ドーパミン型」ではなくて、
「セロトニン型」「オキシトシン型」の幸せを
ベースにするといいんです。

セロトニンもオキシトシンも、
ドーパミンと同様に
脳内で分泌される神経伝達物質です。

ドーパミンが高揚感や興奮状態を
もたらすのとは対照的に、
セロトニンやオキシトシンは、
リラックスした状態や平常心で味わえる
幸福感をもたらします。


セロトニンは、
朝、太陽の光を浴びて歩きながら
「気持ちいいな」と感じるときとか、
自然の景色を見ていて
ほっとするときとか、
運動時あるいは運動後に
爽快感を感じるときとか、
「ありがたいな」と感謝しているときなどに
分泌されます。

つまり、セロトニンがもたらす幸福感は、
心身の健康な状態から生じる幸福感であり、
安らぎをもたらします。

また、オキシトシンは、別名、
思いやりホルモンとか愛情ホルモンと呼ばれます。

オキシトシンは、
心を許せる相手と交流するときや
スキンシップをするとき、
親しい相手に対して愛情の気持ちや
思いやりの気持ちを感じるとき、
子供を慈しむときなどに
分泌されます。


セロトニンがもたらす幸福感も
オキシトシンがもたらす幸福感も、
リラックス状態で味わえ、
深くかみしめることができ、
また、安定して長続きするので
駆り立てられることがありません。

一方、ドーパミンがもたらす高揚感は、
長続きしないので、
再びそれを求めて駆り立てられるように
なりやすいのです。


<ギャンブル依存症とは?>


ここでギャンブル依存症に
焦点を当ててみたいと思いますが、

ギャンブル依存症っていうのは、
パチンコやスロットとか、
競馬、競輪、賭け麻雀とか、
FX、株、先物取引などの
ギャンブル性の高い投機などに
過剰にのめり込んだ状態を言います。

実は日本は「ギャンブル依存症大国」なんです。
先進国の中で、一生のうちに
ギャンブル依存症になってしまう率は
日本が一番高いという調査結果があります。

海外の場合は、
ギャンブルの中心地になるカジノは
旅行先とかわざわざ出かけていくところにありますが、
日本は身近にパチンコやスロットがありますよね。
そういったところも、日本に
ギャンブル依存症が多い理由だと言われてます。

パチンコやスロットであれ、
カジノであれ、
ギャンブルが行われる場所っていうのは
勝ったときに、高揚感が増幅するような
仕掛けがあります。

それは電飾であったり、音響であったり、
その場の空気であったりするのですが、
それによって、よりドーパミンが
たくさん出やすくなっているということです。


ここでちょっと余談になりますが、
行動主義心理学の話をしますね。

行動した後に報酬が得られると
その行動は強化されます。
だけどそうやって強化された行動も、
リセットすることができる、
消去することができます。

では、どうすれば行動を強化できるのか。
どうすれば学習した行動を消去することが
できるのか。
そういったことが、行動主義心理学によって
研究されてきました。

行動主義心理学の有名な人で
バラス・スキナーという人がいますが、
彼が行った実験を紹介します。

Aの箱とBの箱の2つの箱を用意して、
それぞれの箱にマウスを入れます。
Aの箱はマウスがレバーを押せば、
その都度かならずエサが出てくる箱です。
Bの箱はマウスがレバーを押したとき、
エサが出てくるときと出てこないときがある箱です。

そこにしばらく入れておくと、
それぞれの箱のマウスは学習しますよね。
Aの箱のマウスは、レバーさえ押せば、
エサが出てくるんだということを学習します。
Bの箱のマウスは、レバーを押しても、
エサは出てくるときもあれば
出てこないときもある、ってことを学習します。

それぞれのマウスが学習した後に、
どちらの箱もエサが出てこないようにします。
さて、どうなると思いますか?

そうするとAの箱のマウスは、
レバーを押すことをやめました。
つまり、レバーを押すという
強化された行動が消去されたということです。
リセットされたということです。

ところがBの箱のマウスは
いつまでもレバーを押し続けたんです。
レバーを押すという強化された行動が
なかなか消去できない状況になっていた
んです。

エサが出たり出なかったり、
という状況で学習したBのマウスは、
なかなかその強化された行動をやめられなかった

ってことですね。

これ、ギャンブルも一緒ですよね。
勝ったり負けたりするギャンブル。
勝つこともあれば負けることもあるものこそ、
なかなかやめられない
ってことなんです。


<認知のゆがみに要注意!>


依存症になると、認知がゆがみます。

認知というのは物事のとらえ方ですが、
本人には自分の捉え方が歪んでいるという
自覚はありません。

たとえば、アルコール依存症の人は、
ネットのさまざまな情報に触れても、
アルコールの良い面を示す情報は覚えるけど、
アルコールの悪い面を示す情報は、
無意識にスルーして記憶に残らなかったりします。

認知が歪んでいるので、
自分にとって都合のいい情報だけ
認識していく
ということです。

ギャンブル依存症の人によく見られる
認知のゆがみの例としては、
「ギャンブルでの負けは、ギャンブルで取り戻そう」
「ギャンブルで勝って、今までの負けを
取り戻しさえすれば万事うまくいく」

といった考え方があります。

自分に損害をもたらしうるもので
自分を救おうとしてるわけですから、
これはかなり病的な認知と言われていますが、
本人にはそれが異常であるという自覚がないことが多いです。

そして、このような認知のゆがみによって、
人によっては借金をしてまで
ギャンブルにつぎ込んだりする場合があるわけです。
そうやってどんどんエスカレートするんですね。


人が物ごとを捉えるときのゆがみを
「バイアス」と言いますが、
有名なバイアスの一つに
「ギャンブラーの誤謬《ごびゅう》」という
ものがあります。

例えば3回続けて負けると、
「3回続けて負けたから、次は勝つはずだ」という
全く根拠のない考え方をしてしまうってことです。

ルーレットで説明すると、
赤の出る確率と黒の出る確率は
どちらも2分の1ですよね。
ですが、
「これまで3回連続で赤が出たのだから、
次は黒が出る確率が高いはずだ」
と思い込んじゃうのが
ギャンブラーの誤謬というバイアスです。

実際は、それまで連続して赤が出ていたとしても、
次に黒が出る確率は2分の1です。
つまり、次に何色が出るかの確率は、
それまでに何色が出たかの結果からは
 一切影響を受けないのです。
だけど、ギャンブラーの誤謬という
バイアスに影響されてしまうと、
「いや、次は黒が出る確率が高いはずだ。
黒に賭けて勝負に出よう」
などと考えてしまったりすのです。


あともう一つ、
ギャンブル依存症かどうかをチェックする
LOSTという基準をご紹介しておきます。
これは、依存症の専門家として有名な
松本俊彦先生たちが開発されたものです。

LOSTのLはリミット (LIMIT)です。
ギャンブルをするとき、
予算や時間のリミットを決めない、
あるいは決めても守れない、
ということです。

LOSTのOはワンスアゲイン
(ONCE AGAIN=もう1回)
です。
ギャンブルで勝ったときに、
そのお金をまた次のギャンブルに使おうとする、
ということです。

LOSTのSはシークレット (SECRET)です。
ギャンブルをしたことを隠す、
ということですね。

LOSTのTはテイク・マネー・バック
(TAKE MONEY BACK=お金を取り返す)
です。

ギャンブルで負けたときに、
すぐに取り返したいと思っちゃう、
ということです。

以上4つのうち2つ以上に当てはまる場合
ギャンブル依存症の疑いがある
と考えます。


<回復への突破口>


それでは、最初のご質問者の方のご質問に
話を戻したいと思います。

もしもあなたのご主人が
ギャンブル依存症の可能性があると思われるなら、
まず、「責めることは逆効果になる」
ってことを覚えておいてください。

ウソをつかれるってのは
とてもツラいと思いますけれども、
「もうウソをつかないで」と約束をさせて
追い込めば追い込むほど
依存症をより強化しかねない、
ってことを覚えておいてください。


依存症は病気ですので、治療が必要です。
まずは専門機関に相談することをおすすめします

本人は治す気がない場合も多いんですが、
まずは本人と話し合ってみるのもいいと思います。

例えば
「あなたがパチンコに行って、
ずっとやめずに続けていることで、
私達夫婦の間にもいろいろトラブルが起きているし、
私もすごく心配な気持ちになってツラいのよ。
だから一緒に病院に行ってくれない?」
と本人を誘って、
一緒に病院に行こうと促してみる、とか。

これで一緒に病院に行ってくれると
理想的ですね。


だけど、本人が
乗ってこないケースもあると思います。

そうなった場合、
まずは家族が相談する形でもいいので
専門機関に相談するってことをおすすめします。
家族がまず相談をするという形から
道が開けてくるということも多いです。

例えば、全国にある精神保健福祉センター。
電話で相談することもできます。
ここに相談して、
医療機関の情報や、
依存症の人の家族の会の情報、
自助グループなどの情報を
提供してもらえるケースも多いようです。

あとは、各支援団体もあります。
こちらも電話で相談できるところが
多いようです。
「ギャンブル依存症問題を考える会」とか、
「全国ギャンブル依存症家族の会」
などがあります。

依存症当事者の会としては、
ギャンブラーズ、アノニマスという
自助グループもあります。


以上ここまで、
ご質問者の方のご質問にお答えする形で、
ギャンブル依存症に焦点を当ててお話ししましたが、

ご家族が何かへの依存症になっているかもしれない、
と心配されている方は、
該当しそうな依存症に関して
どんな支援団体やグループがあるかを
ネットで調べてみられるといいと思います。

まずは精神保健福祉センターに相談されるのも
いいと思います。

大事なことは1人でなんとかしようとか、
家族の内部でなんとかしようとするのではなく、
外にサポートを求めるということ、

をしていただきたいっていうのが
僕からの提案です。

依存症というのは、
家族だけで抱えるにはあまりにも手ごわい病気です

専門機関に相談し、
治療に繋げるということが、
道を開くことになります。


<まとめ>


今回の記事は
ライブ配信(YouTube)の中で
質問にお答えしたものを
抜粋して記事にしましたが、

この話を
あなたの人生に役立てるとしたら、
どのように
役立てることができそうですか?

僕のnoteでは、読めば読むほど
「自己肯定感が高まり」
「人間理解が深まり」
「人間力が養われる」
コンテンツをお届けしています。

これからも確実に
自己実現へ向けて進みたい方、

ぜひフォローして
たくさんのヒントを
受け取ってくださいね。

ではまた、
次回の更新をお楽しみに!


依存症の種類と治し方についての、
より詳しく実践的な話を知りたい方はこちら↓


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