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「アンネ・フランクの家」で見た'Democracy is yours'〜オランダ下院選挙の結果から、子どもたちと考えたい本当の「自由で平等な社会」【354】

 先週のオランダ下院選挙の結果から、オランダでナショナリズムが若干高まりつつあると感じました。
 私は、大学で近代化するヨーロッパの国家権力や労使関係を学び、卒業後は社会科教諭として、今の社会がどのような過程で築かれ、これからの社会はどうあるべきかを生徒たちと考え続けてきました。
 今回、私が暮らすオランダの選挙結果をニュースで見ながら、改めて民主主義の大切さを子どもたちと考えたいと強く思うようになりました。

「民主主義(デモクラシー)はあなたのもの」アンネ・フランクの家より

ニュース:オランダ極右政党が議席を伸ばす

 極右政党とされる「自由党(PVV)」が150議席のうち37議席を獲得。アムステルダムやユトレヒトでは、この結果に反対するデモも行われたという報道がありました。

 この政党は、イスラム系の学校やモスクを建てることに反対したり、移民・難民の受け入れ反対、脱EUを掲げている政党です。この政党が過半数には至らないまでも、第一党になったことを踏まえて、自由・寛容を象徴とするオランダの政策が今後変わる可能性があります。

 今回のニュースを見て、アンネ・フランクの家に訪問した時の'Democracy is yours'の映像を見たことを思い出しました。
 そして、今私が学習サポートをしている子たちと民主主義について考えたいと思い、この映像を用いた文章を作成し、この映像を見て文章を読み、みんなで考えを出し合おうと思いました。

 現在、戦争や資源・環境気候問題が深刻化しつつあり、社会不安が広がる中でナショナリズムの考えをもつことは、ある程度理解できます。自国民が不安・不満を持った状態で、国際貢献が必要といわれても難しいかもしれません。しかし、自国民を優先し他者排斥の考えが広がると、それは新たな対立を生むことになります。その結果、戦争で関係ない人々が巻き込まれたり、地球規模で物事を考える視野が欠落するために、環境問題がより一層深刻化する恐れもあります。それは、ナチスドイツのヒトラーの政策から学ぶ必要があると感じました。

 今この映像に含まれるメッセージにあるように、民主主義を支持することを明言し、自分の考えをここに残しておきたいと思います。

 以下は、子どもたちと授業の中で一緒に読もうと思っている文章です。継承語クラスもあるので、簡単な日本語文も作成しました。

 こちらは、「民主主義の完璧ではないものの、その大切さを多くの人に理解してもらう」ために作成しました。もし教材として文章を使いたいという方がおられましたら、ご自由にお使いください。

 私たちの住む地球、住んでいる人たちみんなが幸せになれる社会になるよう、自分ができることをしっかり取り組んでいきたいと思います。

'Democracy is yours'(民主主義はあなたのもの) 子ども用 日本語文

【小学校高学年、中学生用】

何百年も前に、人々は約束することにしました。
平和に共に生きるということを。

すべての人に自由と平等、自分の言いたいことを言うことができる自由、
異なる意見を持つということ、そして法律は誰にとっても同じであるということを。

この約束は、「民主主義」という名前で機能することになりました。
人々は、みんなそれを良いことだと考え、自分たちの社会のシステムに取り入れることにしました。
それは完璧ではないものの、それは自分の、自分たちによる、自分たちのためのシステムです。

時々、誰かがそれを壊そうとすることが起こります。
自由や平等、異なる意見を持つことに賛成しない人たちは、民主主義を傷つけます。

その人たちは、自由に自分のことを話すのをやめさせたり、自分たちの声を広げようとします。
その人たちにとって、みんなが平等と考えるのではなく、
人々をグループに分け、その一部の人たちを「社会を壊そうとする人たち」と決めつけます。

また、その人たちは、平和に共に生きることを認めません。
そして、自分たちの手で、自分たちの法律を作ります。

その人たちは、「1 + 1 = 2」であるような事実とは違う考えを持ちます。
例えば「1 + 1 = 47」というような、事実に基づかない考えを持ち、それが良い考えだという風に思う人たちが出てきます。

やがて、その考えが広がり、ルールのない世界、争い、恐怖を生み出します。
最初は、「1 + 1 = 47」という考えを聞くと、おかしいと思うかもしれません。
しかし、その力はだんだんと大きな力を持つようになるのです。

あるグループの人たちが、全てのことを決定できるようなシステムになっていきます。
そして、独裁政権という、いろんな権力が1つの組織に集められていきます。
ここまで来るとかなり危険な状況ですが、こんな状況まで来る必要はありません。

あなたの住んでいる場所でこのようなことが起こっていませんか。
そんな時にできることがあります。

それは、「やめる」ことです。
一人、もしくは他の人と一緒に。
あなたには力があります。

あなたは次のことができます。
事実とは違うことをしている人たちのグループと一緒にならないこと。
人をひきつけるような言葉で発せられた「民主主義に反対する考え」にだまされないことです。
一人だと大変かもしれません。しかし、勇気を出してください。
抗議する声が早く聞かれるほど、その効果が大きくなるのです。

民主主義を強くしようとする人や組織を支援します。
例えば、そういった活動をするグループ、新聞、図書館などです。
そのメンバーに関わり、自分がそれをサポートしていることをみんなに伝えましょう。

あなたの周りの世界をよく見てください。
嘘や憎しみの表現を見たり、聞いたりした時は、声をあげその人たちに質問してみましょう。
そして良い手本を示すことが重要です。
危険な状況につながらないようにする必要があります。

私たちは「批判的に」なる必要があります。
民主主義に反対する人たちは、事実をねじ曲げて、私たちに疑惑と恐怖を植え付けようとします。
彼らの言うことをすべて信じないでください。
情報の元を見つけ、それらをしっかりと読み、事実を確認しください。
そして、何よりも大切なことは、「人々のつながりを大切にして、対話を続けること」です。

自分たちだけの世界に閉じこもっていると、人々が対立するようになり、社会が壊れてしまうかもしれません。
私たちが団結していれば、大きな問題を平和的に解決することができます。
民主主義は、あなたのもので、私のものです、そして、私たちみんなのものです。

私たちはそれを守り続けなければいけません。
そのことを真面目に受け取り、民主主義を大切にして、
私たちが「自由の中で平等に生きられる」ようにしていきましょう。

民主主義はあなたのものです。

そして、あなたも民主主義です。

【小学校低・中学年、継承語クラス用】

百年よりも もっと むかしに、人は みんなで やくそく しました。

みんな へいわで、いっしょに 生きるという やくそくを。
みんなが じゆうで びょうどう。
じぶんの いいたいことを いうことができるじゆうを やくそく しました。
これを みんしゅしゅぎ といいます。
デモクラシーという ことば とも いわれます。

人は、みんなそれを よいことだと おもって みんしゅしゅぎの しゃかいを つくってきました。
みんしゅしゅぎは かんぺきでは ありません。しかし、それは わたしたちが わたしたちによって、わたしたちの ための システムなのです。
ときどき、それを こわそうと する 人たちが 出てきます。

じゆう、びょうどう、いろんな いけんを もつことに さんせいしない人たちは、みんしゅしゅぎを きずつけます。

その人たちは、じゆうに じぶんの いいたい ことを やめさせようとして、その人たちの かんがえを ひろげようとします。

その人たちは、みんなは びょうどう ではなく、みんなを いくつかの グループに わけて、その中から「わるい人たち」を かってに きめようと します。

また、その人たちは へいわに 生きることを みとめては くれません。
じぶんたちで くにの ルールを つくります。

その人たちの かんがえている ことは、じじつとは ちがうことが あります。

たとえば、1 + 1 = 2 ではなく、1 + 1 = 47という じじつとは ちがうことをいいます。

はじめは、すこし へんだと おもっていても だんだん それが 大きな力を もつように なります。

きまった グループの人たちが、いろんなことを きめられるような システムに なっていきます。
そして、「どくさい」という、いろんな力が そこに あつまってきます。
しかし、ここまで こなくても よいのです。


あなたが すんでいるところで こんなことが おこっていませんか?
そんなときに できることが あります。

それは「やめる」ことです。
それは、一人、もしくは ほかの人と いっしょに できます。
あなたには 力が あるのです。

あなたができることは、
じじつとは ちがうことを いう人たちの グループに入らないこと、
みんしゅしゅぎに はんたいする かんがえに だまされないこと、
そのことばは、すごく きれいな ことばで いわれます。

一人で するのは たいへんな こと かも しれません。
それでも、ゆうきを 出して ください。

はんたいする こえが 早く 出てくるほうが、こうかは 大きく なります。

みんしゅしゅぎを たいせつに している人たちを おうえんして ください。
みんしゅしゅぎを たいせつに する グループ、しんぶん、としょかん などが あります。
あなたが それを たいせつに していることを みんなに つたえましょう。


あなたの まわりの せかいを よく 見てください。
うそや にくしみの ことばを 見たり、聞いたりした ときは、その人たちと はなしてみましょう。

そして、あなたが お手本に なることが たいせつです。
きけんな じょうきょうに つながらないように しましょう。


わたしたちは、「ひはんてき」になる ひつようが あります。
みんしゅしゅぎに はんたいする 人たちは、じじつを かえます。
そして、わたしたちを こわい 気もちにさせたり、いまの じょうきょうに ぎもんを もたせるようにします。

そういう人たちの いうことを しんじないように してください。
その人たちが いっている じょうほうが どこから きたのかを 見つけて、
それを しっかり 読んで かくにん してください。
そして、いちばん たいせつな ことは、
「人と 人との つながりを たいせつにして、はなしあいを つづけること」です。

じぶんたち だけの せかいに とじこもっていると、
人と 人の なかが わるくなり、しゃかいが こわれて しまうかも しれません。
みんなが だんけつして いれば、大きな もんだいを へいわに かいけつすることが できます。

みんしゅしゅぎは、あなたの もので、わたしたちのものです。
そして、わたしたち みんなのもの です。

わたしたちは それを まもって いかなければ ならないのです。
そのことを まじめに うけとめ、みんしゅしゅぎを たいせつにしなければ いけません。

そして、わたしたちが「じゆうの 中で びょうどうに 生きられる」ように していきましょう。
「みんしゅしゅぎ」は あなたのもの です。
そして、あなたも みんしゅしゅぎ なのです。

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