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【植物が出てくる本】『クスノキの番人』東野圭吾

植物が出てくる小説を紹介してみようと思います。

普段、あまりたくさん小説を読む方ではないので、うまくいくかどうかわかりませんが…💦

『クスノキの番人』東野圭吾(実業之日本社:2020年)

玲斗は窃盗の罪で留置所に入れられていた所を、亡き母親の異母姉である千舟に引き取られ、「クスノキの番人」をするように命じられます。言われるままに「番人」の仕事を続けるうち、見えてきたものは……?

この物語では、不思議な力を持つクスノキの大木が、重要な役割を果たしています。
クスノキの力に秘められた謎は徐々に解き明かされ、
最後はしみじみと「家族の絆」が感じられる結末となっています。

クスノキについて、以下のような描写がありました。

……恐ろしいほどの静寂の中、草木を踏む音だけが耳に入ってくる。
やがてクスノキ特有の樟脳の香りが漂ってきた。
繁みを抜けると、巨大な木の影が目前に出現した。懐中電灯の安っぽい光などで全体を照らすのを憚られるほどの、荘厳な気配が濃厚に迫ってくる。

クスノキには、神社の御神木として大切にされているものも多く、中には樹齢数百年の大木となり、天然記念物に指定されているものもあります。
そうした木を目の前にすると、このような印象を受けるかもしれません。

関東では公園にもよく植えられていますが、小さな黄緑色の葉が一杯につく中に、赤や黄色の葉がちらほら混じり、幹は細かくひび割れ、どっしりとしつつも爽やかな印象のある木です。

また、樟脳はクスノキの製油の成分で、葉をちぎって揉むと、スーッと清涼感のある香りがします。
樟脳はカンフルとも呼ばれ、防虫剤の他、医薬品の成分として使用されます。
物語中では、木に近づくときに落ち葉を踏むことで、この香りが漂ってきたのかもしれません。

実は私は、こういった「家」「家族」がテーマのお話はちょっと苦手で(深い理由はなく、何となくです)、読むのに時間がかかってしまいましたが……

いつの間にか、クスノキの不思議ワールドに心地よく浸り、最後には、玲斗の心の成長に、クスノキの香りのような清々しさを感じながら、読み終えることができました。

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