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是枝監督の眼差しに触れて


今では有名な是枝監督の30年以上前の作品を観る機会があった。
映画を撮りはじめる前、1991年にテレビ番組のドキュメンタリー作品。
映像の原点になっている作品と思える。
子供、家族、社会、人、いろんな内面や繋がりの表現作品が多いと思う。
「そうか、是枝監督の眼差しって・・・」と思うひと時でした。

1本目「しかし・・・〜福祉切り捨ての時代に〜」

難病に苦しみ、生活保護の打ち切りをキッカケに自死してしまった女性。
一方で、厚生省、環境省の重要ポストを担い「福祉とは?」「しかし・・」と自問自答しながら、自分の思いと真逆の立場で対応を余儀なくされ、取材中に自死してしまったエリート官僚。
同じ時代、全く違う立場で福祉に関わった2人が行き着いた自死。
家族や友人の思い、本人のメモ、肉声、関わった病院のSW、行政側の見解、当時の政治背景、丁寧に取材され、社会の大きな波に人の個性が軽視されていく様を見せられた気がした。

「法律」「ルール」「枠組み」を頼りに、盾に、時に専門家の意見は都合よく捻じ曲げ利用され、個人の苦しみには手を差し伸べない社会、福祉、行政、支援者になっていないか?
何が常識なのか、何が正義なのか、何が理想なのか
より良くしようと努力を重ねる人もいれば、それは都合が悪い立場の人もいて、反対され阻止されてしまう。

SWとしての経験してきたこと、感じたこと、考えさせられてきたこと、オーバーラップする内容でもあったし、僕がまだ学生だった頃のこの映像に残された問いかけは、今でも変わらない社会や人の姿のように感じた。


2本目「もう一つの教育〜伊那小学校春組の記録〜」

長野県の小学校で「牧場から牛を借りて育てる」ことから子供達が様々なことを学んでいく姿が印象深いドキュメンタリーだった。
小屋を自分たちで建て、エサ代が年間いくらかかるのか計算し、どんなエサが良いかを話しあったり、草を刈りエサを作ったり、糞を肥料にして作ったとうもろこしを販売したり、ブラッシングなど日頃のお世話から、何故命が大切なのかを、交尾、妊娠、産まれた子牛が死んでしまう出来事を通して、子供たちが何を感じ学んだのかを発表している姿、お乳を搾ってお母さんたちにも振る舞ったり、「牧場から借りているから返すのか?6年生になると忙しいから牧場に返すのか?」と子供達に真剣に問いかける先生の姿・・・

教育とは何か、いろんな方法があっていいと思う。
しかし、・・・教え育てるのが教育。
教えるのは正解ではない。
テストでいい点を取るのが教育ではない。
考えて思ったこと、それが何故なのかをしっかり考察させる。
自分の意見、皆んなの意見、様々な意見から何を選択するか皆んなで決める。

そんな子供達の姿と、真剣に向き合う先生の姿に感動した作品だった。


考える力、想像力、思いやる力、助け合う力

映像が報じられてから、30年以上経った今でも考えさせられる。
教育の大切さ、何を次世代に伝え残していくのか。
政治や社会の大きな波に埋もれてしまう課題にどう向き合うのか。
自分が良ければいいのか。他人事なのか。
どんな社会が生き甲斐を感じるのか。
命の大切さとは何なのか。
お金の価値とは何なのか。
人の繋がりとは何なのか。
枠組みに囚われず、個々の思いを受け止め何ができるか考え行動できる大切さ。
そんなことを考えさせられた2本のドキュメンタリー映像でした。


最後まで読んでくださりありがとうございました。

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