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ロートレック荘事件

筒井康隆著 新潮社

帯に「この本に出合っていなければ、私は書店員になっていない」と有ったので手に取ってみた。ミステリー作品である。著者はテレビ出演も多く変わったおっさんと言うイメージだけでどのような作風かは知らなかったが、これを読み他の著書も読みたいと思った。
内容は、少年期にけがを負い容姿にハンデを持った青年とそれを負わせてしまった“いとこ”を中心に描かれ、別荘を舞台に殺人事件が起こると言うストーリー。
夏の暑いなか別荘で起こる殺人事件、これだけで汗をイメージさせるじめじめとした殺人事件である。連続殺人なのでもちろんトリックがある。しかしこのトリックは巧妙であり、他のミステリーでは見たことのないトリックであった。改めて著者の「変わったおっさん」と言うイメージは強くなり、さらに作品に対する熱い思いや工夫を感じ、天才的な部分があるのかな?と感じた。
著者は、差別問題や言論の自由と言うようなデリケートな問題で、断筆宣言をしているようであるが、本作品もこれらの問題を中心に据えている様に思う。また読む側が知らないうちに(読み終わった時に)自分の差別意識の深さを再認識させられると言う二重のトリックを感じた。
残念ながらと言うか、やはり私の差別意識はかなり深いのかもしれない。他の人の感想を聞いてみたい作品である。

#夏の読書感想文

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