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「ポイズンドーター・ホーリーマザー」 湊かなえ著 光文社文庫

正しさと弱さは、親が子供を苦しめるもっとも効果的なツールです。正しさの名の下に子を支配・コントロールし、その支配・コントロールの理不尽さに気づき反逆して来た子どもには、「あなたのためを思ってやって来たのに、そんなことを言われて悲しい」と泣き崩れればいいのです。子供は、「ごめんなさい」と言うしかありません。


こうした親は、最近では、好きな言葉ではないのですが、「毒親」と呼ばれるようになりました。毒親は、やがて子供から激しく糾弾されるようになるでしょう。「私が苦しいのはあなたのせいだ!」と、子供はいつまでもいつまでも訴え続けるのです。本書には、そうした毒娘についても描かれています。

実は、毒娘(毒息子)も同じメカニズムで親を非難します。すなわち、正しさと弱さによる支配とコントロールです。親が「あなたのおっしゃる通りです」と反省し行動を改めるか、「自分が悪かった」と謝ることを期待するのです。でも、それが実現したからといって、毒娘(毒息子)の攻撃は止まりません。

親が子どもの痛みを子どもの視点から見ることができ、それがいかに辛いことだったのかを理解することができたとき、そのサイクルは止まるかもしれません。でも、そうしたことは、なかなか起こりませんし、実現するとしても相当先のことになることが多いと言えるでしょう。

両方とも、期待するのをやめればいいんです。そして、それでも苦しかったら、逃げてしまえばいいのですが・・・。それもなかなか難しい。


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