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「相手の窓から外を見なさい」

カウンセリング技法・理論だけでたちどころに回復・・・なんてことはありません。

一つの技法でクライアントが回復するあるいは成長するということはないとは言いませんが、その範囲は限定されています。最近、例えば、「これからは、認知行動療法だ」とおっしゃる先生方がおられますが、僕は賛成できません。

認知行動療法は有効ですが、当然のことながら、限界もあります。それは、それ以外のすべての技法・理論に言えることです。
クライアントに合わないやり方を選択すると、クライアントを混乱させてしまう可能性もあります。中には「最新のやり方でも治らない自分」に絶望してしまう人もいるかもしれません。
特定の理論に無理やりクライアントの状況を当てはめようとすると、クライアントが歪んだ認知を持ってしまうことがあります。近年、ACの理論、DVの理論、発達障害の理論、愛着理論などが、広く認知されるようになりましたが、これらの「流行の」理論を安易に適用してしまった例も残念ながら少なからずありました。理論で「人の心理過程がすべてわかった」つもりになってしまうことも起こりえます。これは、とても危険で、最悪の場合、理論の信奉者たちがカルト化し、別の可能性を排除するようにさえなってしまいます。

欧米のカウンセラーの多くは複数のカウンセリング技法・理論を適用しています。自己心理学の理論を適用しながら認知行動療法の技法とマインドフルネスを使い、家族の問題については精神力動的視点から解釈するなんてことは、当たり前のようにあります。

それでも、技法・理論だけでは、クライアントをサポートすることはできません。

大事なのは、クライアントと共にいて、一緒に感じ考えることだと思います。アメリカのセラピストのアーヴィン・ヤーロムはこんなことを言っています。

・私は患者との関係を「旅の仲間」と考える方が好きだ。(ヤーロムの心理療法講義 P.25)
・相手の窓から外を見なさい。患者が見ているように世界を見ようと努力するのです。 (ヤーロムの心理療法講義 P.35 )

これは、 セラピスト、ソーシャルワーカー、精神科医、看護師等にとって、とても大事な姿勢だと思います。このような姿勢を持つためには、クライアントに対する好奇心が必須なのではないかと思います。「この人はなぜ、この場面で感情が平坦化してしまうのだろう?」「何がこの人を不安にさせているのだろう?」「一歩前に踏み出そうとしているのにブレーキをかけているものはなんなのだろう?」といった好奇心であって、上から目線でクライアントをジャッジするのとは全く別のスタンスです。

僕は、これまで何人かの魅力的なセラピストに出会ってきました。彼らには共通の特徴があるように思います。みなさん子供のように好奇心が旺盛でした。ユーモアのセンスがあり、基本的に楽しい人が多いように思います。だけど、「私」を持っていて、「周りがこうだから」という理由で、誰かに忖度したり、納得してないのに何かに迎合することはなく、クライアントを第一に考えながらも自分自身を大切にする人たちでした。

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