「哀れなるものたち」の変すぎる世界に頭が・・【アカデミー賞ノミネート作品レビュー①】
今年もアカデミー賞当日までにノミネート作品をチェックしていく怒涛のシーズンが始まりました。筆者は下記の記事に従って見まくり始めました。
一本目は「哀れなるものたち」(Poor Things)。
前作「女王陛下のお気に入り」 (2018,The Favorite)が作品賞・監督賞を含む10部門でオスカーにノミネートし、オリビア・コールマンが主演女優賞を獲った、ヨルゴス・ランティモス監督の最新作です。
監督の前作「女王陛下〜」に限らず、近作「ロブスター」(2015,The Lobster)も、「聖なる鹿殺し」(2017,The Killing of a Sacred Deer)も、めちゃくちゃ変な話だったんですが、「哀れなるものたち」は、それらに輪をかけて変。
「自殺した女性が身篭っていた胎児の脳を女性に移植して甦らせたらどうなるか」という話です。笑
主演のエマ・ストーンは、外見は立派な大人なのに脳だけが胎児の状態から、言語を習得し、徐々に外見と内面が一致していくという難役を見事に演じ切っており、アカデミー賞の前哨戦ゴールデングローブでの主演女優賞受賞も頷けます。
作品のテイストとしてはジュネ&キャロの、のちにスチームパンクのはしりと言われた「デリカテッセン」を思い出しました。
エマ・ストーン演じる主人公は、性に対して奔放で、性に対して控えめな女性のステレオタイプとは対極の振る舞いをして複数の男性を翻弄します。
これまでの映画の世界は普通は逆で、自由奔放な男性が女性を苦しめるというステレオタイプ的な話ばかりなので、この映画では、そのようなジェンダーロールが逆だったらどうなるかの思考実験になっているような気もします。
上記のフランケンシュタイン的な要素とジェンダーロールへの挑戦が同時に進行しているので、ランティモスは本当に天才的かつ独創的な監督だな、と思います。
ただ、自分がこの映画を好きか嫌いかでいうと、正直嫌いです。
まず、頻繁に登場する性に取り憑かれた女性のセックスシーンを見るのが苦痛。
これは、多くの映画で使われてる明け透けなセックスシーンが女性のレイプシーンで採用されていることで、官能的というよりも、女性が被害者に見えてしまうという弊害があるんですよね。ラース・フォン・トリアーの痛い作品を見まくっている自分だけかもしれませんが・・
また、映画全体がこの監督の独特のリズムで進行し、次にどんな突拍子もないことが起こるか分からないというのが、なぜかワクワク感よりも居心地の悪い不安感に繋がってしまうんですよね。
これが2時間半という長尺で繰り広げられるのが、個人的にはダメなポイントでした。
ちなみにランティモス監督の近作「ロブスター」(2015,The Lobster)と「聖なる鹿殺し」(2015,The Killing of a Sacred Deer)の2本は、今ならアマプラで無料で見れるようです。
この2作もメチャクチャ変な話で、一見の価値があります。未見の方はぜひ。
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