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アートに宿る浄化の力|BEAT WEAVE掲載コラム

立川のGREEN SPRINGSでのイベントに向けて制作した冊子「BEAT WEAVE」。BEEK土屋さんの久しぶりの織物をコンセプトにしたZINEです。

冊子の中でFUJI TEXTILE WEEKの個人的なレビューを寄稿しました。芸術祭には、マーケットイベントとはまた違った魅力と意義があると思っていて、そうした想いを言葉にしています。こちらに全文を掲載します。

アートに宿る浄化の力

photo by 吉田周平

近年、全国各地で「芸術祭」が行われている。富士吉田でも3年前から「FUJI TEXTILE WEEK」が行われるようになった。「アートはお金にならない」。そういう価値観はまだまだ根強くあるだろう。それでも、今、人々はアートに地方を活性化させる一縷ののぞみをたくす。そこには何があるのか。芸術祭は街にいかなる影響をもたらすのか?

photo by 吉田周平

「FUJI TEXTILE WEEK」は、1000年以上続く織物の産地でもある山梨県富士吉田市の産業の歴史を根底に、伝統産業および地域活性を目的として2021年よりスタートした、テキスタイルと芸術が融合する布の芸術祭だ。テキスタイルに光を当て、アートやデザインを通じて、テキスタイルの新たな可能性を模索し発見するイベントとして国内唯一の立ち位置を取る。

photo by 吉田周平

イベントでは、産地を物づくりの起点として国内外の様々なコミュニティーと結ぶことや、使われなくなった織物関連の工場や倉庫、店舗などを展覧会場として再利用することで、産業の記憶の保存と街のアイデンティティ形成に取り組んでいる。立ち上げ当時から見ていて思うのは、街が確実に”きれいになっている”ということだ。アートは、宿命的に”美しさ”を求める。作品が作品として成立するのは”美しい”からであり、それまで発見されたことのなかった”美しさ”の発見こそがアートであると言えるだろう。そして、それを街で受け入れるということは、必然的に場所はきれいに整えられていく。

photo by 吉田周平

これはアートイベントとマーケットイベントを分ける最大の違いだろう。各地で行われている芸術祭は、公金に頼るものが多いという。しかしながら、集客や経済効果とは別に、この浄化作用によって、イメージが良くなり、人々に未来への期待を抱かせることにつながっていることはアートでしかなし得ないことだろう。