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女の子ばっかり応援してしまうわたしとしては

この文章をだれに向けて書いていいか分からなかったけど、
やっぱりあと10年後くらいに中学生になるわたしの大切なあなたと、
それから二十何年か前に中学生だったわたしに向けて書こうと思う。
その三十何年かの間に中学生だった誰かや、いつのまにかその親になった誰か、そう、あなたにも読んでもらえるとうれしい。


『Girls Who Code 女の子の未来をひらくプログラミング』という本を翻訳したよ。 https://www.amazon.co.jp/dp/482228977X
女の子がプログラミングやテクノロジーの道に進むのを応援する本。

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主な内容は

・コンピューターの歴史(それから、その歴史の中で活躍した女性たち)
・プログラマーらしい考え方(変数、条件分岐、関数、ループで『CORE4(大事な4つのこと)』だって!)
・プロダクトのアイディアの出し方、プロジェクトの進め方
・どんなプログラミング言語があって、どれが何に向いているか
・デバッグの方法
・ゲーム、ロボット、デジタルアート、アプリの各分野でのプログラミングの使い方

とか、そういう感じ。


この本はプログラミングの「入り口」の本だから、これだけ読んでもプログラミングが書けるようにはならない。
でも「プログラミングの始め方がわからない」「大事だって言われるけどそもそもなんなの? こわくないの?」っていう気持ちを「やってみよう!」に変えることができる本にはなっていると思う。
元気な女の子たちがわちゃわちゃ集まって、「あれが作りたい」「ここがわかんない」「これはできるかな」って話し合ってる感じで本は進んでいく。
著者のレシュマ・サウジャニのレクチャーを受けながらね。

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もしあなたがちょっとプログラミングに詳しかったら、「プログラミングの内容なんて男女関係ないでしょ、何が『女の子向け』なの?」って思うかもしれない。
でも、男女関係ないはずなのに、わたしがプログラマーをしている今、2019年、アメリカでもIT系のジェンダーギャップは大きいし、日本では女性のIT業界における割合は1-2割だ。
だからこの本は、女の子をめちゃくちゃ応援している。
コンピューターの歴史やそのほかのコラムででてくるのは「エイダ・ラブレス」や「マーガレット・ハミルトン」や「グレース・ホッパー」。
知ってる? みんなコンピューターの歴史に大きな功績を残した女の人たち。

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出てくる女の子たちはいろいろで、ビーズ細工やコラージュが好きだったり、ランチのタコスの中身が気になったり、ベースボールに興味があったり、弟の宿題の心配をしたり、絶滅危惧種の未来を憂いたりしている。
それで「自分の興味のあること」からプログラミングの考え方を学んでいく。
いわゆる「女の子らしい」趣味が出てきてうんざりしちゃうあなただったりするかもしれないけど(わたしはそうだったけど)、やっぱりそういう子もいるんだ。だからこれでいいんだと思う。

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ゲーム、ロボット、デジタルアート、アプリの章では、それぞれにプログラミングがどう使われるかって話といっしょに、
・各分野で活躍している女性プログラマーのインタビュー
・Girls Who Codeで実際に各分野のプロダクトを作った女の子たちのプロダクト紹介と、インタビューが載っている。
(言い忘れたけど、Girls Who Codeはアメリカの、女の子たちにプログラミングを教えるためのクラブ活動みたいなNPOの名前でもある。レシュマ・サウジャニが始めた活動だよ)

プログラマー・インタビュー

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Girls インタビュー

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これも女の子を応援する仕組みになってる。「ロールモデル」って聞いたことあるかな。
「こんな人たちがいるならわたしもなれるかも」っていう、そういう目標やお手本になる姿のこと。
「そんなの必要ないよ」「わたしはわたしのなりたいようになるよ」っていう気持ちをあなたが持ってるなら、それはとってもいいことだと思う。
でもわたしが中学生だったり、高校生だったり、職業を選んだりするときには、「プログラミングは男の人がやるもの」って考えてる人がたくさんいた。
たとえば、こんなふうに話したら、


すぐにいろんな話が出てきた。
「高校生の時、『女がSEになれるわけないだろう』って言われた」とか、「配属に関して『女性は技術職には向いてない。営業職の方が適してる』って採用側のマネージャーが言ってた」なんてね。

Girls Who Codeの本文にもその話は出ている。

 小さい頃から、決めつけられたイメージとして、世のなかの雰囲気として、時には先生からまで、わたしたちはあるメッセージを吹き込まれてる。科学や技術、工学、数学なんかは「女の子には向いてない」って。こういうシグナルを探してみたら、きっとどこにでも見つかるはず。ティーン向けの有名なショップに行って、「数学アレルギー」と書かれたT シャツを買うこともできる。TVのどのチャンネルでも、プログラマーは、コンピューターと一緒に地下室に引きこもっている、フードをかぶった男性として描かれてる。


だからこの本が書かれたんだし、だから、翻訳しようと思ったんだ。

誤解しないで。この本は「応援をする本」だ。女の子じゃないだれかを、のけ者にする本じゃない。今までのけ者にされがちだった女の子たちに、おなじスタートライン、おなじくらいにでこぼこしてない道を用意する手伝いがしたいって本。間違えないでね。

この本の、わたしが一番好きなところの話をしていいかな。それはなんとデバッグの章にある。
そこには、うまくいかないときの対処法が書かれてる。自分で考えることと、助けを求めること。
バグの分類や、ラバーダック・プログラミングや、エラーさがしや、printデバッグや、休憩や...実用的なバグとの向かい方は、それだけで役に立つ。実生活にもね。

でもその中でも一番輝いているのは、最後の「不完全さを受け入れる」のタイトルのところ。
全文引用したいくらいだけど、それだと全部通して読んだ時の爽快感がないから、いくつか抜き書きするね(それでも長いかも)。

 女性っていうのは、いつもいろんな種類の矛盾したメッセージを受け続けてる。女性に何ができるか、できないとかいう話題でね。良い子でいなければならない、感じ良くなければいけない、規則は守らなきゃ、親しみやすく、優しく、親切で、すてきで……完璧でなきゃ!
 わたしから言わせてもらえば、そう、大人の、仕事を持った女性で、母親でもあるわたしの言うことを信じてほしいんだけど、完璧な人間なんていない。
 とにかくチャレンジしてみて! 何か間違っちゃったらそのたびに、修正の仕方を覚えるってだけ。
 でも一番大事なのは、自分に優しくすること。ミスはするものだと思っておく。きっとやり遂げられる、理解できる、それから、完璧じゃなくても大丈夫だって自分に言ってあげよう。
 覚えていてね。いまこのときに集中して、学び続け、手を動かし続ける。プログラミングにチャレンジする女の子でいるために必要なことは、それだけ。

ね、最高でしょう。わたしはここが翻訳してて一番楽しかった。

あと10年。わたしの大切なあなたが中学生になるころ、この世の中はどれくらいよくなっているだろう。男の子とか女の子とか、大して気にしないで、自分の好きなことをみつけて、自由に進んでいけるように、どれくらいなっているかな。わたしはそのために、なにができるかな。

そのできることの一つとして、この本を翻訳しました。願わくば、この本がたくさんの女の子や、その進む道を応援したくてやり方がわからなかったり、プログラミングってものに戸惑ってる大人たちを励ます力になりますように。

それから10年後や、もっと先でも、あなたが「女の子だけへの応援なんてもういらないよ、時代遅れだよ」っていつか笑ってくれますように。


『Girls Who Code 女の子の未来をひらくプログラミング』 https://www.amazon.co.jp/dp/482228977X

kindle版: https://www.amazon.co.jp/dp/B07T3KH6QL

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