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ポメラ日記 2020年5月10日(日) おかあさんテレビ、身の程を知る

朝方、雨が降っていた。
ぼうっと気持ちよくなる。朝に聞く雨の音はいいものだ、時々なら。
子どもたちの起床時間がずれこんでいるが、昨日あんまり遅くに寝たので、起こすのもしのびない。
どこかで立て直しをしなければならないのだが。

昨日に引き続き、今日もややぐだぐだであった。
朝方の雨の影響でピクニックは中止。
ぱんださんが、バナナケーキと海苔をお昼ごはんにしたいと言い出す。
「バナナケーキと、海苔」
思わず復唱した。
ちょっと暇な分、食べることに意識が持っていかれがちなのだ。これは太る人のパターンである。
しかし言い出したら聞かないので、バナナケーキと海苔をとりあえず食べさせ、やや早めのおやつの時間に本来の昼食を出した。
相殺みたいな気持ちであるが相殺できているのだろうか。

ふと居間を見回すと、よんださんがいない。えっどこ、と焦って声が出たがそれでもいない。ぱんださんが、「あっ! いた!」と指差したその先には、1人がけソファの下に潜り込んでシューズを狙うよんださんの姿があった。

夕方、これではいけないと、みなで外に散歩に出る。
ささださんと一緒だと、あまりひと気のない場所にもずんずん行けて楽しい。
たくさん散歩をして、知らない花をいくつかみつける。ドクダミの花ももう咲いていた。

お風呂でぱんださんが
「てれびがみられたらいいのになぁ」
というので、両腕で顔を囲むように大きな輪を作って、
「おかあさんテレビ」
と言う。
ぱんださんが笑いながら、
「そういうのじゃなくてぇ、ほんとの、かーぱとろーるとかみれるやつ!」
と言うので、対抗心に無駄に火がついた。
わたしがあの、車のキャラクターたちがカーシティで繰り広げる山なしオチなしの幼児アニメくらい再現出来ないとでも思うのか。ぱんださんの隣で、どれだけ繰り返し(強制されて)視聴したと思うのだ。
というわけで、
「<カーパトロール>」
と、定番の出だしを、ナレーションの声をまねする。
おっ、とぱんださんがこちらを見た。しめしめ。
「てっててれてっ♪ てっててれてっ♪(カーパトロールのBGM) やぁフランク、どうしたんだい? え? トムのガレージが火事だって?」
サービスで、カーパトロールと同世界観、かつぱんださんの最愛の『レッカー車のトム』の要素も入れる。ぱんださんが身を乗り出してくる。
いつものカーパトロールの面々、フランク、マット、ヘクターががトムのガレージのボヤを消し止め、ボヤの原因だったビザの釜でもう一度トムがピザを焼こうと挑戦するのに、「もう黒こげはよしてくれよ?」とオチをつけるところまで演じきった。
ぱんださんにウケた。思惑通りだ。
だが、幼児にウケるとどうなるか?
次を要求される。これは、予想するべきだったが想定が甘かった部分だ。
というわけでわたしはカーパトロールを、三話分、やった。完全オリジナルで、やった。
二次創作はグローバルに根付いたいわば文化の業であるが、カーパトロール二次創作を即興口頭オリジナルでやったのは世界広しといえどわたしくらいなのではないか。
いや、世界は広いから分かんないな。
ぱんださんは、それでも次を要求し、もうおしまいだよ! というと、
「じゃあ、あーてぃの、にかい」と言う。
アーティとは、これもぱんださんが愛しているアマゾンプライムオリジナルの工作アニメ、『クリエイティブ・ギャラクシー』の主人公の名前だ。
「に、二回はむり、一回だけ…」
と許してもらい、
「『やあ、ぼくアーティ!』『わたし、エティファニー!』」
第二幕の開幕である。
アーティは、相棒の謎の小生物エティファニーとコンビを組んでいるので、二役だ。
アーティの誕生日パーティに飾り付けが簡素すぎるという問題設定、「どうにかできるかも、アートの力で!」と決めぜりふを挟みつつ、クリエイティブ銀河内のキャプテン・ペーパーのところへ旅立ち、紙ナプキンでの折り紙、パーティ会場(家)への帰還、父母の賞賛(「まぁアーティ、すばらしいわ!」「自慢の息子だよ!」)、楽しい折り方の紙ナプキンに喜ぶ招待客の友だちたち…。
さあ最後の決めぜりふだ。
「ぼくの、自慢のアートだよ!」
終わった。やりきった。ぱんださんも満足そうに微笑んでいる。
ぱんださんは、可愛らしい満たされた微笑みのまま、こういった。
「お友達のところまで!」
解説しよう。『クリエイティブ・ギャラクシー』には、主人公アーティがアートの力で問題を解決するアニメ部分と、実写で子どもたちが同じ内容を作ってみる「お友達のところ」の二部構成である。
わたしは震えながら、吹き替えっぽい声を作る。
「『ハイ、アーティ!』『ぼくたちは、紙ナプキンで、アーティとエティファニーをつくります』」
全国の保護者に伝えたいことがある。
気軽な気持ちでテレビコンテンツと張り合ってはいけない。


寝かしつけの本は
『まよなかのできごと』
『虫ガール』
『まるのおうさま』
でした。
そういえば今日、うっかりお茶碗を割ってしまったぱんださんである。
『まよなかのできごと』と『まるのおうさま』のどちらにもお皿が割れるシーンがあり、ちらりとぱんださんの顔を伺う。
とくに何も気にしていないようで、にこにこしていた。
少しは気にしてくれてもいいんだよ。

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