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世界と比較、日本の特異性【世界憲法集】岩波文庫チャレンジ78/100冊目

「憲法義解」で大日本帝国憲法と日本国憲法を比較読みした。次は日本と世界を比較したい(チャレンジを通して岩波文庫「白」を1冊は読みたかったという理由もある)。

日本・アメリカ・カナダ・ドイツ・フランス・スイス・ロシア・中国・韓国、なんと9カ国の憲法が読めて、ポケットサイズのお手頃価格は本当にすごい。

*今回読んだのは第2版、条文は本書の内容に基づいて記載しているため、最新の改正までは捉えられていません。注目箇所はなるべく最新情報を調べていますが、その点何卒ご容赦願います。

超大ボリュームですので、目次から興味のある箇所だけ読まれることを最初におすすめしておきます🙇(低頭)。


比べて初めて分かった事

<憲法は国の歴史>

各国それぞれの歴史を踏まえて制定されているのがよく分かった。特に前文は特徴が出ていて面白い。その国で1番大切なものが第1章。日本の憲法が天皇を第1章に掲げているのは日本の特徴の1つ、良い事ではないかと思った。

国によって過去の惨事を繰り返さないための方針が組み込まれていたり、国民性が現れていると感じる所は、読み物としても面白い

環境やプライヴァシーなど、新しい権利を取り入れている国もある。個人的に思うのは、環境やプライヴァシーを守りましょう、と書いてあるのは良い事にも思えるけれど、現代人には常識の概念ではないだろうか。

「憲法は国の歴史」という前提からすると、世界共通の認識をわざわざ憲法に載せるのも面白味がない

むしろ「書いてある」事により、それが破壊された歴史があったのかと疑ってしまう。他国の例を見て自分の国は過ちを犯さない、という崇高な理念として掲げている場合もあるだろうから、一概には言えない。しかし崇高な理念ならおそらく世界共通で、そうなると、国ごとの憲法とは一体・・と考えたくなる。

気になる5項目を各国比較

項目ごとの比較はキリがない。個人的に「気になった」項目の比較。

①安全保障
②人権という言葉
③結婚規定
④新しい権利
⑤憲法改正回数と改正の国民投票

以後、日本(日)、アメリカ(米)・カナダ(カ)・ドイツ(独)・フランス(仏)・スイス(ス)・ロシア(ロ)・中国(中)・韓国(韓)と表記。

①安全保障

そもそも「憲法」とは
国の最高法規であると同時に、本来権力者が守らなければならないルールを定めたもの。従って(従わなくても)、「国」として存在する事が大前提であり、各国共通に「安全保障」の項はある。

唯一ないのが日本

(米)合衆国は、この連邦内のすべての州に対して共和政体を保障し、侵略から各州を保護する(第4条第4節)

(独)連邦領土が武力によって攻撃され、またはかかる攻撃の直接の脅威が存することの確定(防衛出動自体)、確定を即時行うことができる状況にないときは、この確定は行われたものとみなされ、かつ攻撃が開始された時点で交付されたものとみなされる。管轄を有する連邦機関が必要な措置を取ることができず、かつ状況が不可避的に要求するところにより、即時の自主的行動が求められる時は、ラント(市町村単位)政府または指定官庁等が措置を取る権限を有する(第115条、中略あり)

(仏)共和国大統領は、国家の独立、領土の無傷、条約の遵守の保障者である(58年第5条)

(ス)スイス連邦は、国民の自由及び権利を保護し、国の独立及び安全を保持する(第2条)

(ロ)ロシア連邦は、領土の保全と不可侵を保障する(第4条)

(中)中華人民共和国市民は、国家の統一及び全国各民族の団結を守る義務、祖国の安全を守る義務を有する(第52条)。祖国を防衛し、侵略に抵抗する事は、一人ひとりの市民の神聖な職責である(第55条)

(韓)国軍は、国家の安全保障及び国土防衛の神聖な義務を遂行することを使命とし、その政治的中立性は遵守される(第5条)

*カナダは後述

どの国にも明記されている文言が、日本には見当らない。その代わりの日米安全保障条約と思えば、うんそうなのだろう。軍隊もなく兵役もない日本人が平和な毎日を過ごせる”特権”を享受している一方で、世界の当たり前が当たり前でない事は感じておくべきと思った(いつまで米軍が日本を守ってくれるのか、その選択権が日本にはない)。

日本は、
「国土を守る」とは言っていないが「平和宣言」はしている特殊な国。

他国はどうか、
独仏韓は「侵略しない」と書いている一方で「戦争をしない」とは言っていない(独:第26条、仏:1946年前文、韓:第5条)。自分の国は自分達で守る。

領土記載をしている国もある。これらの国と領土問題があるのは皮肉だろうか。

(ロシア連邦の領土)
ロシアは大陸棚及び排他的経済水域に対する主権を有し、かつ管轄権を行使する(第67条)

(韓国の領土)
大韓民国の領土は、韓半島及びその附属島嶼とする(第3条)

②人権という言葉

「基本的人権の尊重」として学校で習う憲法の言葉。

(日)国民は、すべての基本的人権の共有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる(第11条)

「人権とは暗黒時代の欧州(革命・魔女裁判・拷問)で生まれた言葉」で、それまで「人権」という概念自体存在しなかったのだという(以下8つの理由より)

ではなぜ日本の憲法に入っているのか、欧州以外は入っていないのか、気になったので各国の書き方を調べてみた。訳し方にもよると思われるため、明確に線は引けないが、欧州圏とアジアにこの言葉が見られる。

「人権」という言葉、最たるはフランス人権宣言(以下前文)

国民議会へと構成されたフランス人民の代表者は、人の諸権利についての無知、忘却または軽視が公衆の不幸と政府の腐敗の唯一の原因であると考え、人の自然的で不可譲かつ神聖な諸権利を1つの厳粛な宣言において提示することを決議したが、それは、この宣言が、社会体のすべての構成員の心に常に存在し、彼らに絶えずその権利と義務を想起させんがためにであり、また、立法権や執行権の諸行為が、その都度あらゆる政治制度の目的と比べ合わせられる事が可能となって、より一層尊重されるようになるためであり、また、市民の諸要求が、今後簡明で異論の余地なき原則に基礎づけられて、常に憲法の維持と全員の幸福に向かうようになるためである。
 それゆえに、国民議会は、至高の存在の面前で、かつ、その庇護の下に、人及び市民の以下の諸権利を承認し宣言する。

(独)ドイツ国民は、世界におけるあらゆる人間共同体、平和及び正義の基礎として、不可侵かつ不可譲の人権に対する信念を表明する(第1条)

(中)国家は、人権を尊重し、及び、保障する(第33条)

(韓)すべての国民は、人間としての尊厳及び価値を有し、幸福を追求する権利を有する。国家は、個人の有する不可侵の基本的人権を確認し、これを保障する義務を負う(第10条)

その他の書き方

(米)何人からも、生命、自由または財産を奪ってはならない(修正第14条)

(カ)何人も、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有し、基本的正義の原理に基づかなければこれらの権利を奪われない権利を有する(82年憲法第7条)

(ス)人間の尊厳は尊重され、保護されなければならない(第7条)。すべて人は生命に対する権利を有する(第10条)

(ロ)人間及びその権利と自由は最上の価値である。人及び市民の権利と自由を承認し、遵守し、かつ擁護する事は国家の義務である(第2条)。人の基本的権利と自由は、奪うことができず、出生とともに各人に帰す(第17条)。各人は自由及び人身の不可侵に対する権利を有する(第22条)。

「人権」=人としての権利、人だから人として扱われる権利、混迷時代を抜けた今となっては当たり前のようにも思えるし、あえて書く必要はないという意見もあるようだが、「色々な書き方がある」というだけの気がした。

ちなみに、死刑を禁止している国はドイツ(第102条)・フランス(第66条)・スイス(第10条)・ロシア(第20条)。
*フランスだけ巻末索引の死刑廃止欄にないのは誤記か?

③結婚規定

前回記事、日本国憲法にだけある内容に「家族生活における個人の尊厳・両性の平等」があった。当たり前体操として一蹴してしまっていたが、改めて他の国を見てみたい。

(日)婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない(第24条)

(独)婚姻及び家族は、国家的秩序により特別な保護を受ける(第6条)

(仏)国は、個人と家族にその発展に必要な諸条件を保障する(46年前文)

(ス)婚姻及び家族の権利は保障される(第14条)

(ロ)母性及び児童、家族は国家の保護下にある(第38条)

(中)婚姻、家庭母親及び児童は国家の保護を受ける。夫妻双方は、計画出産を実行する義務を有する。(第49条)

(韓)婚姻及び家族生活は、個人の尊厳及び両性の平等を基礎として成立し、維持されなければならず、国家はこれを保障する(第36条)

両性の合意」と書いてあるため日本では同性婚が違憲とされている。

*調べてみると、同性婚を求めた訴訟の判決は分かれているようだ。最近は、札幌高裁で「同性婚を認めないのは違憲」という判決が下ったばかり。裁判官が勝手に憲法解釈した権限濫用に当たるという見方もあり、自由に結婚できたら良いだけなのに、憲法が絡んで問題が大きくなっている。

他国を見る限り、問題になる表現がない。アメリカでは同性婚を認めるか否か判断するのは州。そう、国レベルの問題ではないような
*調べてみると、
ロシアでは2020年改正で同性婚を除外し、多様化の流れに逆行する場合もある。

日本は、条文にはないけれど、タイトルに使われる「家族生活における個人の尊厳・両性の平等」の方が的を得ているのではないだろうか。

④新しい権利

日本にはないが、盛り込まれている国もある。国ごとの特徴はなく、どの国も似たような記述。

プライヴァシー権、個人情報保護
(ス)すべて人は、私生活など尊重を要求する権利、個人情報の不正使用からの保護を要求する権利を有する(第13条、中略あり)

(ロ)第23条や(韓)第17条・18条にも同様の記載。

知る権利
(ロ)各人は、任意の法律的手段によって情報を自由に探索、教授、伝達創出及び流布する権利を有する(第29条)

(中)市民の通信の自由は保護を受ける(国家の安全又は刑事犯罪を追求する必要により、警察機関、又は検察機関が法の定める手続きに従って、通信に対して検査を行う場合を除いて)(第40条)

あれ?中国ってGoogle使えなくなかった?

*調べてみると、元々は中国にも提供されていたが、サイバー攻撃や検閲行為などを理由に2010年に停止。括弧の但し書きが効いてくるのですね。

⑤世界は何回憲法を改正しているのか

1度も憲法改正がされていない日本と比べて、各国はどうなのか。
*スイス以外は、国立国会図書館資料より抜粋(ロシア以外ロシア

(米)6回
(カ)19回
(仏)27回
(独)67回
(ス)1874年から140回もの改正、回数が夥しいため1999年に全面改正
(ロ)15回
(中)10回
(韓)9回

改正に国民投票が必須としている国は、この中で日本・韓国・スイスのみ。国民投票で否決されて改正に至らない時もあるだろう。この国では国民投票すら回ってこない。政治家の仕事とは🧐

また、下の条文に倣うと、現在1文字だけあると言われる日本国憲法の誤植(「8つの理由」より)は直せる範囲になるだろうか。誤植を直すぐらいならとも思うが、内容変更を伴わない文字だけの変更が可能なら便利だと思った。

(独)基本法は、基本法の文言を明示的に変更または補充する法律によってのみ変更することができる

フランスには、日本国憲法で削除された条文がある。歴史を踏まえるなら復活しても良さそう。

(仏)領土の保全が害されている場合には、いかなる憲法改正手続きも開始、あるいは続行することができない

いずれにしても日本だけ、あまりにも長い間、数えること2024年でなんと78年間改正がされていない。完璧すぎて直す所がないならいざ知らず、今の価値観に合わない所が色々あると思う(改憲すべきという論旨ではない。客観的に見た時にただそう感じる)。

戦後復興期を数えないにしても約半世紀とは・・マッカーサーの呪いだろうか。「日本は外部から制御しなくても、今後100年間近代戦に備えるような再軍備はできないだろう」というマッカーサーの言葉が思い出される。

各国の注目ポイント

ここからは国ごとのポイント。自分的に面白かった憲法前文と共に記そうと思う(前文を加えると全体が長くなってしまうが、それだけその国が感じられる)。

・日本(1946年)

*前文は、前回記事で若干触れていますが、全文はリンクをご参照願います

唯一独特は「戦争放棄」。他国の例でも見る「侵略しない」に加えて、特徴は「軍隊を持たない」事。改正議論に上がる題目なのでここで一々取り上げない。

その国で大事なことから順番に条文にしている事を念頭に「天皇」「戦争放棄」「国民の権利」と続く現憲法を眺めると、第2条に戦争放棄が入るのは敗戦の色があまりにも濃く、未だにGHQの定めた方向を向いているかのよう。

制定当初は仕方なかったろうが、いまだ第2章なのは、世界から見た時に、日本は今でも「敗戦国のまま」だと、自ら宣言しているような順序。

連邦国家が「連邦」を第1におき、「大統領や女王」は連邦の次にくる事を思うと、「天皇」が第1章に残ったのは、GHQにも配慮があったからだろうか。

また、第18条「何人もいかなる奴隷的拘束も受けない」とあるが、これは各国で唯一「奴隷制度廃止」の項があるアメリカに倣ったのだろうか。アメリカには奴隷制があったかもしれないが、日本にはなかった。「人間の尊重」という項に包含されると思うのだが。

・アメリカ(1788年+修正27条)

我ら合衆国人民は、より完全な連合を形成し、正義を樹立し、国内の平穏を保障し、共同の防衛に備え、一般的福祉を増進し、そして我らと我らの子孫のために自由の恵沢を確保する目的をもって、ここにこの憲法をアメリカ合衆国のために制定し、これを確立する。

前文、全文

1776年にイギリスから独立したアメリカ。独立後まもなくは各地で武装蜂起が起きるなど、政情が不安定だったため、前文に見えるように連邦と州の連合・権力関係が強調されている。第1にくるのは「議会」。続いて「大統領」「司法」「連邦制」等続いていく。

そのほか特徴的と思うのは、
・「コモン・ロー」(裁判所判決の積み重ねにより生み出された判例法)
・「武器の保有権」(修正第2条)、人民が武器を保有・携帯する権利
・「奴隷制度の廃止」(修正第13条)、1863年リンカーンの奴隷解放宣言

毎回注目度の高いアメリカ大統領選挙、今年2024年11月5日に行われる。有権者は、大統領を選ぶのではなく、大統領選挙人を選び、大統領選挙人が大統領を選ぶ(間接選挙)。過半数を獲得すれば大統領。この辺りが詳しく書かれている。

・カナダ(1867年、1982年)

カナダ、ノヴァ・スコシア及びニュー・ブラウンズウィックの植民州は、グレートブリテン及びアイルランド連合王国の王位の下に、連合王国の憲法と同じ原理の憲法を有する1つの自治領に連邦として統合する希望を表明し、
 また、このような連邦はこれら植民州の繁栄に寄与し、かつ大英帝国の利益を増進するものであり、
 また、議会の権限に基づく連邦の創設にあたっては、この自治領における立法権限の構成を規定するのみならず、執行府の性格を宣言することが適当であり、
 また、英領北アメリカのその他の地域が、将来この連邦へ加入するための規定を設けることが適当であるため、以下の通り定める。

前文、全文

アメリカの北に位置するカナダは、アメリカ同様イギリスの植民地だった名残で、前文でも分かるようにイギリス連邦の一つ

イギリスマグナ・カルタを始め成典化されていない不文憲法(慣習法とも呼ばれる)を持つ一方、カナダは、成分憲法と慣例の集合体で構成される憲法体制。

「序文」から始まり「連邦」「執行権」等続くが、この執行権は「女王」に帰属(法案裁可や軍の最高指揮権)する。

また、上院議員の定年75歳と憲法で定めているのが特徴的。

*調べてみると、
日本は、政党によって候補者公認時に73歳未満、任期満了時に70歳以下など定めている一方で、94歳で引退した例もある。選挙で選ばれる以上は国会議員であり続けられる。

個人的には、いくらその人が優秀で人望があったとしても、次世代へバトンを渡す事は大切だと思う。ビジネスでもリーダーの役割は次のリーダーを育てる事って言いませんか。

・ドイツ(1949年ボン基本法)

ドイツ国民は、神及び人間の前での責任を自覚し、統合されたヨーロッパの対等の構成員として世界の平和に奉仕する意思に鼓舞されて、その憲法制定権力に基づき、この基本法を制定した。(地域名のため中略)ドイツ人は、自由な自己決定において、ドイツの統一と自由を完成させた。これによりこの基本法は全ドイツ国民に適用されることになる。

前文、全文

鉄血宰相と呼ばれたプロイセン王国首相ビスマルクがドイツを連邦国家として統一に導く(1871)、。第一次大戦(1914ー1918)を経てワイマール共和国となる(1919が、その中でナチス政権が誕生(1933)し消滅。第二次大戦(1939ー1945)後、東西に分割され、英米仏が西ドイツ、ソ連が東ドイツを統治した歴史がある。

1919年に制定されたワイマール憲法が、合法的手段でナチス独裁体制を成立させ、ヒトラー独裁のための基礎を作り上げたとして、現憲法にはこの教訓が生かされた政治体制を敷く。

「自由で民主的な基本秩序を侵害もしくは除去し、またはドイツ連邦共和国の存立を危うくすることを目指しているものは違憲」(第21条)など。人権などの「基本権」を第1におき「連邦(ラント)」「議会」「大統領」等続いていく。

「実際に使える」規定としているため、非常に細かい数字、割合を定める。防衛出動事態、緊迫事態、立法緊急事態、激甚自然災害など、有事想定が豊富。防衛出動事態の項は厚く、該当機関が判断を下せない時は下へ下へと権限が降りていく様子がはっきり分かる(各国比較①参照)。

また、日本の自衛隊と違い、自然災害発生時に地方からの要請だけでなく、政府が軍隊を出動させることができる。ご存知のように、日本では自衛隊は自らの判断で救助に向かえない。

・フランス(1958年)

フランス人民は、1789年宣言により規定され、1946年憲法前文により確認かつ補完された人の諸権利と国民主権の諸原理に対する至誠、及び2004年環境憲章により規定された権利と義務に対する至誠を厳粛に宣言する。
これらの原理及び諸人民の自由な決定の原理の名において、共和国は、加盟意思を表明する海外諸領に対し、自由・平等・友愛の共通理念に基礎づけられ、諸領の民主的発展を目指して構成されたところの新制度を提供する。

前文、全文

革命で多くの血が流れたのち、1789年「人権宣言」(各国比較②参照)。当然第1に「主権」がきて「共和国大統領」「政府」「国会」等続いていく。

2004年に「環境憲章」が追加

個人的に1番難しい制度(賛同できないのではなく、ややこしいの意)

・スイス(1999年)

全能の神の名において!
スイス国民及び州は、被造物に対する責任を自覚し、世界に対する連帯及び解放の精神において、自由及び民主主義並びに独立及び平和を強化するために同盟を刷新することを決意し、相互に配慮し、尊重しつつ統一の中の多様性のもとに生きる意思を有し、共同の成果及び将来世代に対する責任を自覚し、自由を行使する者のみが自由であると言うこと及び国民の強さは弱者の幸福によって測られると言うことを確信し、次の通り憲法を制定する。

前文、全文

最大の特徴は、憲法改正の発議を国民(10万人の投票権人)ができること。他国のほとんども、日本が国会議員の発議によるように、国民発議ではない。ロシア韓国は大統領も発議する事ができる。

また、議会は対等の権利を持つなど、衆議院優越がある日本とは異なる政治体制。第1に「総則」、次に「基本権、市民権、社会目標」「連邦、州・市町村」等続いていく。

・ロシア(1993年)

我々ロシア連邦の多民族からなる人民は、わが国における共通の運命に結ばれ、人権と自由、市民の平和と合意を確信し、歴史的に形成された国家の統一を護り、諸民族の同権と自決の普遍的原則に基づき、祖国への愛と尊厳、善と公正への信頼を我々に伝えた先祖を偲び、主権国家としてのロシアを復興するとともに、その民主的原則の揺るぎなさを確立し、ロシアの幸福と繁栄の保証を目指し、現在と未来の世代を前に、祖国への責任に基づき、自らを世界の共同体の一員と自覚し、ここにロシア連邦憲法を採択する。

前文、全文

ペレストロイカを経て、ゴルバチョフ大統領辞任と共にソ連が解体、初代ロシア大統領エリツィンが誕生。エリツィンの政策は“諸地域と妥協しすぎて、国を混乱と無秩序に落とし入れた“と批判され、プーチン政権に移行する。

憲法自体は三権分立の資本主義形態をとるが、社会国家であり、”相応な生活と人間の自由な発展を保障する条件を創り出すことが目的”と掲げている。あらゆる連邦構成主体は、相互に同権

大統領の権限が極めて大きいのが特徴。

憲法では大統領の3選を禁止しているが、他の人間を挟めば同一人物が何度でも大統領になれる。実際、プーチンが大統領に初めてなったのは2000年、2期を終えてメドヴェージェフ大統領が1期(4年)を務めたが、2012年に再度プーチンが大統領に選ばれ、任期を4年から6年に延長。

*調べてみると、
本来なら2024年に任期満了だった
が、2020年の改正により事実上任期は撤廃。実は今がロシア大統領選の真っ只中、再戦すれば2036年まで続投が可能になるが、再戦はほぼ確実視されている。

こんな条文もある。

(文化財保護)
歴史的遺産及び文化的遺産の保護に配慮しなければならず、なおかつ歴史的及び文化的記念物を大切にしなければならない(第44条)

*調べてみると、
日本では憲法にはないが、文化財保護法という法律がある

・中国(1982年)

中国は世界で歴史が最も悠久な国家の1つである。中国各民族人民は、輝かしい文化を共同して創造し、光栄ある革命の伝統を有している。(孫文先生による辛亥革命毛沢東主席が中華人民共和国を建てた)中国新民主主義革命の勝利及び社会主義事業の成果は、中国共産党が中国各民族人民を領導し、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想の手引きのもとで心理を堅持し、誤りを正し、多くの艱難険阻に戦勝して得たものである。

中国人民は、わが国の社会主義制度を敵視し、破壊する国内外の敵対勢力及び敵対分子に対して闘争を行わなければならない台湾は、中華人民共和国の神聖な領土の1部である。祖国を統一することを完成すると言う大業は、台湾同胞を含む全中国人民の神聖な職責である

中国は、独立自主の対外政策を堅持し、主権と領土の完全とを相互に尊重すること、相互に侵犯しないこと、相互に内政に干渉しないこと、平等に互いに利益となること、平和に共存すること、と言う5原則を堅持し、各国と外交関係及び経済、文化の交流を発展させる。

前文、一部(歴史を記載しているので長い)

大陸としては悠久の歴史を持つ中国、中華人民共和国として成立したのは1949年。この中では、唯一の社会主義型憲法(権力集中)。第1条で、”組織又は個人にも社会主義制度を破壊することを禁じ”る。「総綱」に始まり「基本的権利」「国家機構」等続く。

特徴が出ている条文
・節約を励行し、浪費に反対する(第14条)
・経済立法を強化し、マクロコントロールを完全なものとする(第15条)
・資本主義、封建主義及びその他の堕落した思想に反対する(第24条)

国家権力最高機関、中華人民共和国全国人民代表大会(全人大)の代表は、2013年から総書記は習近平が務める。”通常任期5年、2期を超えてはならない”と定められていた。

*調べてみると、
2018年憲法改正で任期を撤廃
、2023年3月に再選したばかり。どこまでの長期政権となるのか、ロシア共に注目。

自然資源や環境破壊を禁じ(第9条、26条)たり、
重要歴史文化遺産を保護(第22条)の他、
こんな条文もある。

(国家及び国家任務遂行要員に対する批判及び建議と国家賠償)
事実を捏造し、または歪曲して誣告を行ってはならない(第41条)

また、
民族自治地方」の項において、
各民族は、すべて自らの言語文字を使用し、及び発展させる自由を有し、自らの風俗習慣を保持または改革する自由を有する(第4条)と定めている。

モンゴル、チベット、ウイグルはその代表例だが、例えば中国政府は2020年に「モンゴル語での教育を禁止」しており、モンゴル文字が奪われるという危機感があるのも事実。なぜ禁止したのかまでは調べていないが、どの道「体制へ悪影響を及ぼす」と判断されれば何もできない。

・韓国(1987年)

悠久なる歴史と伝統に輝く我が大韓国民は、3.1運動によって建立された大韓民国臨時政府の法統と不義に抗した4.19民主理念を継承して、祖国の民主改革と平和的統一の使命に立脚し、正義、人道及び同胞愛をもって民族の団結を強固にして、すべての社会的弊習と不義を打破するとともに、自律と調和を基礎として自由民主的基本秩序をさらに確固にし、政治、経済、社会、文化のすべての領域において、各人の機会を均等にして、能力を最高度に発揮させるとともに、自由と権利に伴う責任と義務を完遂させ、内には国民生活の均等な向上を期し、外には恒久的な世界平和と人類共栄に貢献することにより、われらとわれらの子孫の安全と自由と幸福を永遠に確保することを誓いつつ、1948年7月12日に制定され、8次にわたって改正された憲法をここに国会の議決を経て国民投票により改正する。

前文、全文

独立後に北(北朝鮮)はソ連、南(韓国)はアメリカが占領、この憲法は韓国で制定されたもの。「総鋼」に始まり「国民の権利」「政府」等続いていく。

大統領の任期延長または重任変更のための憲法改正は、その憲法改正提案当時の大統領に対しては効力を有しない」(第128条)としている点、任期を撤廃した中ロに比べて良いと感じた(まぁ、何が書いてあっても変えてしまうのが現在のその2国なんですが)。

韓国大統領と言えば、前大統領に懲役20年の実刑が下ったのを始め、憲法制定以降の歴任者がすべて刑務所に入っている。「憲法改正の形式を用いて、たびたび大きな政治体制の変更が行われてきた」の一端が伺える。

憲法第13条「行為当時の法律によっては犯罪を構成することのない行為により訴求される事はなく」では、刑罰不遡及となっているものの、大統領は弾劾遡及される場合がある(第65条)。

大統領本人だけでなく、親族が犯した罪でも弾劾された過去を見直してか、
現在はこんな条文もある。国民の権利であって、大統領の権利ではない。
(連座制の禁止)
自己の行為ではない親族の行為により不利益な処遇を受けない(第13条)

大統領については遡及がまかり通るためか、日本との歴史問題がいつまでも解決しないのは「遡及」が浸透しているからだろうか(これ以上は触れまい)。


実はこれ以外にも裁判所制度(違憲審査)、郵政民営化(国営がほとんど)、外国人参政権など、知りたいことが色々あるのだが、あまりにも長くなりすぎて自分も疲れたので、一旦ここまで。

もしかして最後まで目を通してくれた方がおられましたら・・
先に感謝を述べておきたいと思います。ありがとうございます!!

岩波文庫100冊チャレンジ、残り22冊🌟

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