北欧神話ジークフリート【ニーベルンゲンの歌】岩波文庫チャレンジ80&81/100冊目
ドイツのイリアスと称される作者不詳の北欧神話。イリアスに場面場面の挿話があるのに対し、ニーベルンゲンの歌は、初めから終わりまで筋道が通る。
竜殺しのジークフリート、バルムンクは聞いた事があるので楽しい。
ワーグナーの楽曲にも「ニーベルングの指環」がある。
1.ラインの黄金
2.ワルキューレ
3.ジークフリート
4.神々の黄昏
ただし調べてみると、話としては全く別物のよう(後述)。
岩波文庫は前編と後編に分かれている。前編が面白すぎたので、早く続きが読みたかったのだが、なぜか後編は新刊がない。中古屋さんを数軒周って、なかなかの年季物をようやく入手。
ゲーテが「前半は華麗、後半は強烈」と評したのが良く分かる。
話の展開を知らなかった自分は、ジークフリートが活躍する前半が楽しかった。苦労して手に入れた後半は、ほとんどが戦争の描写で、興味はやや失速。
とはいえ、結末が気になるのと、古本ならではの茶色のシミが気になるのとで、あっという間に読み終えた・・。
新刊で読みたい場合は、ちくま文庫が良いかもしれない。
内容(この先ネタバレを含みます)
ジークフリートとは
・その昔竜を退治した際、返り血を浴びて不死身の身体になる
・幅広の名剣バルムンクを愛用
・ニーベルンゲンの財宝(隠れ蓑=透明マント)所有
ライン河畔にあるブルゴントの国、グンテル王を数々助け、いてもあてなる王の妹、クリエムヒルトを妻にもらう。
妻と共に自国に帰還したジークフリート。ある時グンテル王の饗宴に招かれる。そこで王の重臣ハゲネの裏切りに合って暗殺されてしまう。ハゲネの計略になぜか王も加担。
不死身のはずのジークフリート(以下ジーク)がなぜ死なねばならなかったか。それはハゲネがジークを守るためと虚言を吐き、妻クリエムヒルト(以下クリエ)から急所を聞き出していたから。
ジークを討ったハゲネは、バルムンクを奪うと共に、ジークが持ち主となっていたニーベルンゲンの宝を自分のものにしようとするが、王の身内に諭されてライン河に沈めてしまう。
ハゲネの陰謀に気付いたクリエ。以来その恨みを忘れる事はない。長年の時を経るも、悲しみは癒えない。そんな中、復讐を胸に誓いながらフン族のエッツェル王に嫁ぐ。
強大なフン族を手中に収めたクリエは、ジーク仇討ちのために、エッツェル王の国で饗宴を催し、グンテル王以下を招待。罠と知りつつハゲネも追従。
ジークの仇とはいえ、エッツェル王側には全く関係のない私憤の争いに巻き込まれ、多くの命が失われる。グンテル王側の被害も甚大。
それでもクリエは復讐を諦めない。城に火を放ち、さらに多くの命が消えていくが、仲間と騎士道たるや、を見せるハゲネはしぶとく生き残る。
凄まじい争乱の中、ついにグンテル王・ハゲネは捕虜となり、クリエの眼前に差し出される。夫ジークの暗殺を認めさせたいクリエはハゲネに詰め寄るが、ハゲネは屈しない。
そこでクリエは、兄グンテル王の首を撃ち落としハゲネに見せる。それでも屈しないハゲネから、奪われたバルムンクを取り返し、その剣でハゲネの首も撃ち落とす・・
それを見ていた1国の騎士、あまりの惨状と身勝手な振る舞いに多くの無実の人を巻き込んだ罰として、クリエの命を奪う・・
「これぞニーベルンゲンの災い」
物語はこのように幕を閉じる。
ニーベルンゲンの災いとは
「力によって起きるものは、力によって倒される」
つまり、
ジークフリートは、ニーベルンゲンの財宝を奪ったがために、ハゲネに倒され、クリエムヒルトは、王とハゲネの命を奪ったがために、自身の命を奪われる。
最終的に主要人物は全滅・・これがニーベルンゲンの災い・・😱
途中まではハゲネ憎し、まだやられないのか!とクリエを応援していたが、エッツェル王国がとにかく可哀想なのと、自分の目的のために手段を選ばらない非情さに段々とクリエから心が離れていった。
誰かのものを奪うという行為は必ず自分の身に跳ね返る。
この、後半ほとんどが費やされるクリエムヒルトの復讐劇は、437年ブルゴント族がフン族に攻められ滅亡した史実を元にするらしい。
という本作を踏まえると、自身が「荒地」の記事でも書いたワーグナーは、
このような記述はニーベルンゲンの歌には出てこない。登場人物は同じようだが、ブリュンヒルデというのは、本作ではジークフリートの助力でグンテル王の妃になった怪力女。
初夜を楽しく過ごそうとするグンテル王をことごとく拒絶した上、持ち前の怪力で王を縛り上げて吊し上げる(ここら辺本当に笑う)。
全く別物なら、ワーグナーの方も是非知りたいし、他の北欧神話(オーディン・トール・ロキなど)にも興味津々になりました。
こうして興味は連鎖する。
岩波文庫100冊チャレンジ、残り19冊🌟
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?