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【年齢のうた】アンジェラ・アキ●「手紙~拝啓 十五の君へ~」は自分との往復書簡


アルパカに会ってきました。

接近遭遇。

駅長帽も素敵。

近いです。
このイベントでした。

実は、神楽坂にアルパカがいるんですね。

ここの2頭が出張のような形で、市ヶ谷駅に来たんです。

おとなしくて、いい子たち。そしてエサを見ると、すごい勢いで食していました。

かわいかった。

では今回は、アンジェラ・アキの歌について。
前回に続いて、またまた15歳に関係した曲です。

「手紙~拝啓 十五の君へ~」は、この季節になると、よく耳にすることがある曲です。

15歳の「僕」と大人の「僕」のやり取り


アンジェラ・アキが唄う「手紙~拝啓 十五の君へ~」(以下「手紙」)は、2008年9月のリリース。彼女の作品の中でも、とりわけ広く知られている歌だろう。


曲ができたきっかけは、NHKの合唱コンクールのための曲を作る依頼を受けたことだという。

調べてみるとNHKの全国学校音楽コンクールは、1930年代、昭和で言うとひと桁年の頃から開催されている。小学校、中学校、高校の3つの部門があり、毎年の開催のたびに課題曲が指定されるようだ。
中でも中学の部は、時代ごとのメジャーなアーティストが新しく書き下ろした曲が課題曲に選ばれている。過去には森山直太朗やヒゲダンといった人たちも書いてきた。


アンジェラ・アキの「手紙」は、同コンクールの2008年の中学の部の課題曲となった。
それもあって、タイトル通りの15歳、つまり中学3年生の年齢がモチーフになっている。

この曲についてのアーティスト本人へのインタビューを探したところ、「子供応援便り」というサイトにあり、いきさつなどが簡潔にまとめられていた。取材自体は翌2009年に行われたようだ。

――2008年のNHK合唱コンクール・中学生の部の課題曲になった「手紙」は、アンジェラさんご自身のエピソードが題材になっているそうですね。

 はい。実際に自分が手紙を書いたのは17歳の時。アメリカの高校生だった頃です。親にも言えない、友達にも話せないことを未来の自分に相談にのってもらおうと、30歳の自分あてに書いたんですね。自分では、その手紙の存在をすっかり忘れていたのですが、合唱コンクールの作曲のお話をいただいて、「中学生にどんな歌詞を?」と考えていた時に30歳の誕生日を迎え、母がその手紙を送ってきてくれたのです。

――不思議な偶然が重なったんですね。

 10代の自分からの手紙を読んでみると、「なんでこんなことで悩んでいるの?」と、切なくなって。もしあの時の自分に何か言えるなら、何と言ってあげるだろうと思って、ピアノに向かっているうちに生まれたのが「手紙」の歌詞でした。

――歌詞は、1番が大人の自分へ、2番が10代の自分へ返事という構成ですね。

 10代の子どもたちが歌うということで、できるだけ同じ目線にたって歌詞を書きたいと思いました。ただ、子どもと目線を合わせるってなかなか難しい。でも、昔の自分からの手紙が届いたとき、「時は越えても同じ自分だったら、同じ目線に立てる」と気づきました。15歳の「僕」を主人公にすることで、中学生たちは、それぞれ自分を投影しながら歌うことができるのではないかと思ったのです。

――実際に全国のたくさんの中学校をまわって、どんな印象を持ちましたか?

 いつの時代も、子どもたちはみんなまっすぐです。例えば、友達が優しくしてくれるとその優しさを100%「嬉しい!」って受けとめる。家に帰って裏サイトで自分が悪口を言われているのに気付くと、100%落ち込む。ピュアだからこそ、浮き沈みが激しいんですよね。人生の免疫がまだないから、心の風邪はひきやすいし、心のすり傷がたくさんある。でもそのピュアな姿っていいなぁ、素敵だなって思いました。自分が忘れていたものを思い出しました。

――訪れた中学校で、「未来の自分に手紙を書こう」という試みをしたそうですね。

 子どもたちが書いた手紙に共通しているのは、悩んでいるのが自分だけだと思っている点。振り返ると、10代の私も「どうして私だけ、人に言えないような悩みを抱えているんだろう」と思っていました。それで、はっとしたんです。それが孤独を生んで、孤独の連鎖みたいになってしまっていると。
 「手紙」には、「15の僕には誰にも話せない悩みの種があるのです」という歌詞があります。その部分をみんなで歌う時、「もしかしたら隣で歌っている子も、なにか言えない悩みがあるのかな」、「もしかしたら先生も、親もそうかな」と思い、ひとりじゃないことに気がついてもらえれば、と。

――歌詞では、「Keep on believing」という言葉も印象的です。

 私は、「あきらめない」ことよりも、“ing”、“~し続ける”ということの方が大切だと思っています。
 私は18歳で歌手になることを決めてから、10年間デビューできませんでした。よく、「10年もあきらめずに、すごいね」と言われますが、何度も挫折して、音楽自体を投げ出したこともありました。途中でbelieveできなくなっても、時間がたってまたできるようになったら、それは続いているということ。そんな考えが、私にとっての支えでした。もしすぐにデビューできたら、この「Keep on believing」という言葉にたどりつくことはなかったかもしれません。“ ing”をつけたのには、たどりついてもその先があるし、たどりつけなくても終わりじゃない、”~し続ける”ことが大切、という想いをこめています。

――最後に、子どもたちに応援メッセージをお願いします。

 勇気づけるような言葉をかけてあげたいと思うけれど、大人になっても苦しいこと、悲しいこと、辛いことはなくならない。例えば中学生が、今苦しみを乗り越えれば高校からは大丈夫かというと、残念ながらそうじゃない。また、別の悩みに出合う。でも、その痛みや苦しみを振り返った時に、「あの出来事には、こんな意味があったんだ」と思える日が必ず来ます。それに、痛みや苦しみを抱えているのはあなただけじゃないから大丈夫。ひとりじゃないですよ。


長い引用になってしまった。どれも大人の立場からの、立派な言葉だと思う。

先に本人の言葉を紹介したが、あらためて曲について触れていこう。

1番の歌詞では、15歳の「僕」が悩みや苦しみを抱えた気持ちを唄っている。そして続く2番からの歌詞が、30歳……大人になった自分からの返答を唄っているのだ。
だから、もし部分的に取り出して聴いたとしても、曲に込められた大切な部分は伝わらない。すべて、最後まで聴いてこその歌である。

インタビューでアンジェラ・アキは、10代の自分自身からの手紙を読んで「なんでこんなことで悩んでいるの?」と感じたと話している。それには納得する部分がある。
僕個人も過去に、若い頃は何であんなに思いつめてたんだろう?とか、どうしてこんなことでくよくよ悩んでたのかな、と思った記憶があるからだ。
ただ、10代の頃のそれは、当人には本当に切実なことで、場合によっては自分という存在に関わるくらいのことだったりする。
そういう時に、大人の立場の者が手助けしたり、寄り添って何かを言ってあげたりすることは、とても大切だと思う。

悩みや苦しみを抱えながら青春時代を過ごす子たちへ


同じくこの曲に関してアンジェラ・アキは、17歳の時に未来の自分に向けて書いた手紙の内容について、次のインタビューで詳しく述べている。

アンジェラ:これは、去年のツアーが始まるぐらいに「アンジェラ、曲をNHKの合唱コンクール用に作って。中学生の部の課題曲になるから」って言われて、「そんなみんなが歌うような曲を作らせてもらっていいの?プレッシャーだな」と思って最初迷って。しかもテーマが「そして未来へ」で、正直「超書きづらいなぁ」と思ったんです(笑)。で、その話を聞いた次の週ぐらいに30才になったんですよ。そしたら母から一通の手紙が届いて「誕生日覚えてくれてる!お母さん、最高」と思って封を開いてみたら、お母さんからの手紙じゃなくて、私が10代のときに「30才の自分へ」って書いた、未来の自分に宛てた手紙で。その手紙を書いた記憶はもうないんだけど「きっと素敵なことが書いてあるんだろうなぁ」って思って、読んでみたら「30才の自分へ、元気ですか?ちょっと聞いて、今日学校でこんなことがあったの。○○くんにこんなこと言われたの!」って。

--愚痴(笑)。

アンジェラ:そう!愚痴。「○○先生はこんなこと言って、私のことをバカにしてる。先生は何も分かってない!」「そして私は何なの!?私はどこへ向かっているの?」って。それが1枚だったらいいんだけど、7枚も書いてあるの!音楽の事なんてどこにも書いてなくて。今や顔も思い出せないような人に振り回されたという、どうでもいいエピソードが延々と書いてあって。それにちょっとショックを受けたんです。でも、もしこの時期にね、「いろんなことあるけどさ、辛いことなんて、すべて時間が解決してくれるから大丈夫よ」って自分に対して言えたらどんなに楽だっただろうかって思って。その手紙を見ながらそんなことをボーッと思ってたら、「あ、これかも」って。

私が今、中学校の子たちに言えることっていうのは、同じように悩みを抱えてるってこと。大人になった、30才になった私も同じように悩みを抱えてるけど、あれから15年生きてきて、ひとつ言えることがあるとすれば、もしあのときの自分に掛けてあげられる言葉があるならば、それを手紙の返事として送ってやろうって。だからテーマは「そして未来へ」なんだけど、「未来へ」ってひとつの方向を示すだけじゃなくて、私は過去も現在も全部引っくるめて「そして未来へ」を書きたいと思って。それで歌詞を手紙にしようと思ったら、素直に出来たんですよ。


ここに出てくる、10代の頃の彼女の手紙の内容には、うなづけるところが多い。

「○○くんにこんなこと言われたの!」
「○○先生はこんなこと言って、私のことをバカにしてる。先生は何も分かってない!」
「そして私は何なの!?私はどこへ向かっているの?」

具体的には、もちろん人によって違いはあるだろう。ただ、例に出されていることは、10代ならばどうしても気になったり、心の中に引っかかったりすることばかりだと思う。
あとになって考えてみれば、些細なことだとも言えるし、自意識過剰だとも捉えられるかもしれない。
でも10代とは、青春時代とは、そんな年頃だと思う。

思うに、若い子たちがこうしたことをひどく気にするのは、10代半ばからは、自分が周囲とのさまざまな関係性の中で生きているという事実に突き当たる年頃だからじゃないだろうか。

それぞれの人生では、もちろん自分自身という人間がいつも真ん中にある。子供の頃はそのことで悩むことも、それほど多くはない(もちろんこれも人それぞれだが)。
しかし中学、高校ぐらいの年齢になると、どんな子であっても、自分という存在が、周りの人たちのことだとか、各々の環境や立場の中に存在している事実を意識せざるをえなくなってくる。だから周囲からの言葉や意見、見方に敏感になりがちだ。

その上に若い時分は、自分のいるコミュニティがどうしても狭いことが多い。家庭、学校、それに部活、塾。そこでの友達、仲間、大人たち。中学から高校ぐらいはそうしてできた人間関係や関わる相手によって自分の価値観が影響されがちだ。
そんな中では、生きていて「ここがすべて」「そうあることが絶対」みたいな感覚になることだってあると思う。とくに学校というくくりの中で生じる人間関係は、とても大きい(当然、大人になっても似たような状況はあるものの、中学や高校までの学生時代は、自分が望んでその環境に身を置いたわけではないことが多い)。
僕個人は、片田舎の育ちだったぶん、よけいにその傾向は強かった気がする。といっても、では都会であれば多様な価値観にあふれていて、そこでどんな生き方でも認められるかというと、そんなことは決してないと思う。

それから、やがて学校を出たり、住んでいた土地を離れたり、また別の場所や違う価値観で生きている人たちと出会ったりすると、それまでの自分の考えをある程度は客観的につかめるようになる。そうやって何かに気付けたり、発見するようなこともあるだろう。
もっとも、なかなかそうした状況にまでは行きづらいと思う。とくに中学生ぐらいの子であれば。

アンジェラ・アキはこの歌で、迷い、悩みがちな青春時代を送る子たちの繊細な心理に優しく寄り添って、長く生きた大人の立場からの言葉を語りかけている。素敵だと思う。


僕自身にとっては、15歳どころか、30歳ですらずいぶん昔のことになってしまった。それぞれの年齢でどんなことを考え、どんなことを悩んでいたのか……。思い出すとその時々で問題はあったし、やはり何かと悩んでいた記憶もある。そして歳をとるごとに、また新しい問題が出てくる。
ただ、生きることは、そうしたことの連続だと考えている。

ここからは、話が若干大きくなるかもしれない。
そんなふうに僕はしばし、この楽曲「手紙」についてのエピソードをきっかけに、あれやこれやと考えた。それから今回の記事を書いてきたのだが。
その最中に、ふと、ミヤコ蝶々のことを思い出した。

ミヤコ蝶々とは、2000年に、80歳で亡くなった芸人さんである。

彼女のことに、とくに詳しいわけではない。強い思い入れがあるわけでもないのだが……ある時、生前のこの人がテレビ番組に出ているのを、たまたま観ていた。
お笑い番組ではなく、誰かと話をする番組だった。まじめに、真剣に。相手が誰だったのか、どんな話だったのかも、詳しくは覚えていない。
ただ、番組の終わり頃に、ミヤコ蝶々はたしかにこう言ったのだ。

「人間、死ぬまで、生きることの勉強です」

あっ、と思った。もう老境に差しかかった人の言葉だけに、重いものがあった。
しばらくその言葉を心の中で反芻して、考えた。
本当にそうだよなぁ、と思った。

青春時代の逡巡や迷いを描いた「手紙~拝啓 十五の君へ~」。曲について考えたことが、生きることそのものについて、僕に思い返させてくれた。
この曲に感謝する。

いくつになっても、生きることの勉強をし続けないといけないなと、思う。


江戸川橋の評判のラーメン店、
三ん寅で食べてきました。
お店のメインは味噌らーめんですが、
自分はあえて醬油らーめんを選択。
いずれも950円。
ほんとに濃厚な味わいで、
ご飯も頼む人が多いのは納得。
さすが人気店、平日でもなかなかの行列でした

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