「田中のやつ、また来てる。吉田もいるぞ。」
「向こうには、安藤もいる。」
「みんな早いなあ。ちょっと出遅れたな。」
おれと白河は、足を急がせた。

ここは最近できた大型家電ショップ「ワイダデンキ」だ。
はじめに見つけたのは、斉藤だった。
「知ってるか、ワイダデンキのテレビコーナーのこと。リモコンを操作すれば、好きなアイドルがすべてのテレビに立体で映し出されるんだぜ。」
「つまりは、推しにかかかか囲まれるってことか。」

放課後になると、学校中の男子が「ワイダデンキ」に駆け込む。

みんな推しのアイドルを立体で見ようというのだ。

あまりにも駆け込むから、店も苦慮しているらしい。
とうとうこんな紙が貼りだされた。
「○○高校の皆様、いつもありがとうございます。大変恐縮ですが、人気のリモコンは行列ができますので、一人当たり１分間の操作とさせていただきます。」

今日も、ぼくらは行列ができるリモコンに並んでいる。

（おしまい）
「青春の香る」がついていますので、これかなあと思いました。立体的なビジョンで囲まれたい。
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