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【UR】What's Love?-Season1-「モテ期を終わらせた男」

思い返せば、第一のモテ期<Season 1>は19歳の頃だったわ。あの頃は平均すると「2か月に一度」で新たな恋をしていたの。
仏文学科の彼、看護師の彼、バンタンデザイン研究所の彼、ミュージシャン志望の彼、芸大院生の彼……ひとりひとりが小説にしてもいい位濃かった。
なんか本当に歩いてるだけでこんなにも恋に“ぶつかる”ものなの!?と思うくらいだった。とにかく“ぶつかり合ってた”し、それぞれ終わるのも早かったけど、「世界ってこんなに広かったんだ!」と毎回思えた。



■PACHINKO

高三・卒業の春。ずっと好きだった同級生(野球部のT君)に人生で初めて自分から告白というものをしたわ。そして一発で玉砕!!彼がゲイじゃないなんてもとからわかっていたし、チャラい彼女がいたのも知ってたけど、当時はもう大学の進学先も決まり、大っキライだった地元を離れるって決まってたから、その結論の見えた告白は『生まれ変わるため』の自作自演でしかなかった。それがちゃんと”玉砕”すれば、都合よく地元に“いたくなくなる”し、田舎を離れる理由としてはこの上なくよかった。
彼を呼び出して「ずっと好きやったんよ」と伝えたら「えー、まじで!?無理無理無理無理!!!で、話ってそれだけ?」と言われ「うん」と言ったら「まじかよ!せっかく出てきたのに!せや、パチンコ行こうや、パチンコ!」と言われた。
パチンコなんか行ったこともなかったし、興味もなかったし、目の前であっさりフラれた男となんでパチンコなんかに行ってお金を使わないといけないのかと思ったけど、これも彼が私に与えてくれた『生まれ変わるため』の試練なのね!と信じ、田舎のパチンコ屋に向かった。
私は彼が選んだ台の隣の台にちょこんと座り、見よう見まねで投入口に500円玉を一枚入れたら玉がジャラジャラ出てきて、右手のノブをMAX全開で回し続けていたら、なんと!ビギナーズラックで2万円くらい勝っちゃったのよ・・・!!彼は少し負けてたけど。
「すごいやん!俺のおかげで今日勝ったんよな?ちょっと小遣いくれよ!」と言われたのでパッと一万円札を渡したわ。なんと!人生で初めて、男に貢いでしまった・・・!!

告白。玉砕。パチンコ。そして貢ぎ。すべて生まれて初めてのこと。
おかげで少し大人になれたわ。ありがとう。やっぱり私がほれ込んだ男。さようなら。おげんきで。


■Blooming

大学に入ってから、文字通り私は『開花』した。
嘘に嘘を塗り固めた、あのクソだった地元での時間を取り戻すように!
男と付き合うのも、その人が好きというより、最初の頃は「とにかくこの広い世界を見たい!」という一心だった。「教えて!もっと教えて・・・!!」
それってゲイだからとかノンケ(ストレート)だからとかじゃなくて、田舎出身あるあるだと思う。やっぱり羽ばたくのは楽しい!そういうデビューを「かっぺ臭い」とか思う人もいるかもしれないけど、スーパーモデルがみんな産まれた時からPRADAを着てるわけじゃないし、私だって最初は自分の服装にも、髪型にも、生き様にも全然が自信なかったし、ダッサい自分が大嫌いだった。とにかくカッコよくなりたかった。田舎の家で雑誌をどれだけ開いたって、田舎のジャスコでは全然そういったものが売ってなかったのは大問題!AmazonもZOZOもなかったしね。実家を離れて、街に出て、一生懸命にオシャレを勉強して、カッコいい誰かを見つけては必死に追いかけた。誰にもあるんじゃないかな?そんな時代。そして訪れた<Season 1>
ある人から“盗んで”は、次の“待ち人”にすげ替えていったわ。そうして恋愛もセックスもまともにできなかった、人権もクソもなかったあのファックな思春期を、私は僅か数年で取り戻した。10代でヤりたかったことは10代のうちに済ませられたし、20代になれば“もっといい女”になれると信じて突っ走った。そして何よりも良かったことは、段々と自分のことを愛せるようになっていったこと。
それでも、それと同時に、精魂がどんどん悪女になっていったようにも思う。
二十歳を超えると単なるハンティングも飽きてきて、なんだかマンネリしていた。そんな習慣に“終止符”を打ってくれたのが、たまたま同じ大学で出会った彼だった。


■Driving

彼の方から私に落ちた。かたや私は彼にぜんっぜん興味がなかった・・!ただただモサいだけの中古車持ちのアッシー君としか思ってなかった。大学生活も後半に入り、私はゼミで“戦略論”を専攻していたし、そのキレキレ感を発揮しまくっていた。その頃になると既に堂々と生きられていたし、生協を歩けばモーゼの十戒のように道ができたし、かと思ったら見知らぬモサ野郎から「え?あの〇〇さんですか・・・!?」と言われたこともあった。(本当よ?)たった数年の変化なのに、背中を追いかける側から、“追いかけられる背中”になってたのよ。(本当よ?)そんな“噂のあの人”のドツボにハマってしまった人が、彼。私はそんな彼の気持ちを一年間はぐらかしてたわ。私から「ドライブしようよ」と言ってはドン・キホーテに買い物に行く。トイレットペーパーやら洗剤やらかさばるものを買って、別れ際に「今日はありがとう」とバイバイ。それでも彼はいつもニコニコしてたわ。今思うと、まるで私がパチンコをデートだと思い込んでいた、あの頃の自分の様に・・・!その“はぐらかし”期間中も二人くらい他の男と付き合ったかな?あんま覚えてないけど。ジムインストラクターだとかなんとか。短命で終わった割には別れ際にちゃんと号泣したわ。もうその頃になると恋が“暇つぶし”みたいになってて、号泣だって、「ああ、こんなドラマティックな事してみたかった」とどっかでそういう悲劇を待ち望んでいたような気さえする。相変わらずの自作自演型よ。


■Mr. Period

そんな時事件が起きた。私が学校で大粗相をしてしまって自暴自棄に走った時期があった。ケッと思っていたら、私をずっと甘やかし続けていたその彼が初めて私を叱ったのだ・・・!!
「そんなんじゃだめだ!そんなことでは・・・俺の好きな君じゃない!!」って。
その瞬間、私は心からハッとした。本当にこの人は私のことを見てくれていたのね・・・ずっと!!!と。
そっから付き合ったわ。二年間。
こうして私の第一のモテ期に“終止符”が打たれたの。
付き合ってからも彼は相変わらず私の顔を見るといつもニコニコと微笑んでくれたし、私もそんな彼のはにかんだ顔を見るのが大好きになった。気づいたら会ってキスをするのは私の方からになっていた。
一緒にGAPに行ってシンプルだけどカッコよく見える服を選んであげたし、ある日彼は美容院に行って髪型を変えてきた。付き合ってからも相変わらずドン・キホーテでデートをしていたけど(笑)、お互い大切な日にはティファニーのリングやポールスミスのネクタイをプレゼントしあったりした。
結局最後は私の火遊びが原因で、最悪な感じで終わってしまったけど・・・
その後はまたしばらく私は、本当の恋が見つけられなくなってしまった。
第二モテ期<Season 2>迄、切ないかな、またしばらく自作自演の日々だったわ。


■Fashion

それから数年後、同窓会みたいなもので久々に彼と再会することになったの。私は服を全部買い揃えた。当時とは違うスタイルで。靴から、鞄から、髪型から・・・!私をフッたことを少しでも後悔させてやりたかった。
が、再会は「久しぶり」の一言で終わった。私が十万円以上かけたショータイムはたったの5秒で終演。そして彼は、少しいい男になってたわ。
そうやって誰かに影響されたり、したり、恋って大概は自作自演で、お金や時間をかけることも多いかもしれないけれど、それでもそうした数珠繋ぎが私の生き様になっていることを愛おしく想う。
そして今、またモテ期が来てる気がするの・・・!Season X!?


Where is the next Mr. ?


to be continued…


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※この内容は『URBAN RESEARCH Media』にて2020年8月21日に掲載されたコラムで、現在は削除されたものを個人的に残したものです。毎年6月のPride monthに敬意を表し、再掲致します🌈

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