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友人関係の損得勘定ーー私は利益のために中国人と友達になったのか?

私は中国語が好きです。

大学1年のときから第二外国語として履修して勉強し始めました。大学の語学講座に参加したり、個人的に検定を受けたりして、かれこれ5年目です。

ゆるく、なのでレベルはそんなに高くないんですけどね…。中検2級を受けようとしてるくらいのレベル。ほんとはもっと上達したいけどそれに見合う努力ができてないのでしょうがない。

私が中国語を好きになったきっかけは、大好きな上川隆也さんが出演しているという安易な理由から、『大地の子』というドラマの再放送を観たこと。

贔屓目承知ですが、上川さんが中国語の台詞をネイティブに混じって話している姿に感銘を受けました。若上川さんは青くて初々しくて可愛い。

でもそれ以上に中国語という言語自体の響きの綺麗さに魅了されてしまったんです。日本語にない発音がいくつもあって、リズム(声調)も独特で音楽みたい。

このとき、高校3年生の夏。「大学に入ったら第二外国語は絶対中国語にしよう!」と思い始めます。主専攻としては演劇学でファウスト作品について扱いたかったのでドイツ語にしようと思ってたのが、このドラマのおかげで手の平を返しました。

こんな感じで中国語が好きになって勉強し始めたこともあり、大学時代には中国人の友達が何人かできました。

みんなそれぞれに面白い人たちで、その中の3,4人は定期的に会う仲になり、カラオケに行ったり映画を観に行ったり、美味しいものを食べに行ったり、遊びの内容としては当然日本人の友達と変わらない。

会話の中で中国の文化の話が出たり、たまに中国語会話の練習をさせてもらったりしたことは、確かに彼らの特性から来るけれど。

東京の大学に来てからは、中国人と遊びに行った回数が友達と遊んだ回数全体の4割くらいは占めてると思う。この理由として、中国人の友達が特別多いということではなく、日本人の友達が少ないというのが大いにあります。一抹の孤独感。

ある時、そんな状況を知っている日本人から、こんなことを言われたことがある。

あなたが中国人と仲良くしてるのは、中国語のために利用しているだけなんじゃないか?

これを言った人は、私が相手が中国人というだけで仲良くなろうとして、そのうち悪人に当たったときに騙されるんじゃないかという懸念をしていた。それに私が反発したものだから、この人も語気を強めてこんな風に言ったのだった。

これを聞いて、その指摘が100%間違いだとは言い切れないのが一番の悲しみだった。

中国語を勉強していなければ彼らと仲良くなることはなかっただろうし、大陸には未だに行けていない私にとって、彼らの話は新鮮で面白い。さらに、分からない中国語をチャットで教えてもらうことも少なくない。

これは利用なのかもしれないと思い始めると、自分が中国語に触れる機会を増やしたいという動機で彼らと交流することは悪いことなのかもしれないと思ってしまった。

反対に、彼らが私と仲良くしてくれるのは、単に私が中国語を好きな日本人だからかもしれないとも言える。別に私の人となりは関係なく。

そんなことを考えるようになってしまったら、私が友達だと思ってるものは利害関係なの?とか思ってしまって、しばらくの間心に傷を負っていました。

そして大学4年の秋、香港に研修に行ったときのこと。

同行していた同学年の女の子にぽつりとこの話をしてしまいました。

というのも、彼女は両親が中国人で、国籍も中国、だけど日本育ちで英語圏に留学経験もあるトリリンガル。本当に優秀で素敵な人。

そんな彼女は、くよくよしてる私にこんなことを言ってくれた。

「私は香港に留学していた時、国籍は中国だけど日本から来たと言って香港人に仲良くしてもらっていたし、場合によって自分のアイデンティティは使い分けている。交流したいという気持ちを利用だなんて思わなくていい

もちろん一言一句正しくは覚えていないけれど、このようなことを言ってくれて嬉しかったのはすごく心に残っています。そして友達観がちょっとアップデートされた。

複数のカルチャーを持つ彼女の言うことは説得力があるし、広い世界を生きられる人は凛としている。

私もそんな風になりたいな、と思う。もっといろんな世界を見たい。そしてしょげてる誰かを救える根拠を掴みたい。

それは自分のためでもあって、そうやって影響力を持つことで、自分の価値を信じられるようにもなりたい。「情けは人の為ならず」という言葉みたいに。

これが他人を利用していると言われればそれまでだけど、今の私ならそれが私の友達観だからと言えるかな。友達なんて、自分が一緒にいて楽しいっていう「得」をもたらしてくれる存在なんだから、もともと損得勘定はあって当たり前でしょって。その人の国籍は関係なく。

だから、この記事の副題の「私は利益のために中国人と友達になったのか?」という問いには半分YESで半分NOです。彼らと過ごすのが楽しくて新鮮だという利益のためではあるけれど、それは彼らが中国人だからではなくおもしろくて尊敬できる人間だからです。

そんなことを、何人かの友達との交流の中で学んだのでした。たまたまその友達が中国人だったというお話。ナショナリティは人対人になったときに意味を持たない。

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