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【書評】友澤晃一『演じる心、見抜く目』

YouTubeに投稿した動画の内容を書き起こしたもの+おまけです。


みなさんこんにちは、自称・演劇ソムリエのいとうゆうかです。

今回ご紹介するのは、友澤晃一さんの『演じる心、見抜く目』という本です。

何か演劇がもっと身近なところで使える技術にならないかな~と思って電子書籍を漁ってたら見つけたので読んでみました。

まず著者の友澤晃一さんについて、簡単にご紹介しておきます。

この方は、「北の国から」で有名な、脚本家の倉本聰さんが主宰した富良野塾に一期生として入塾されたそうです。そして俳優修業の後、映画の助監督やドラマのADなどを経て、脚本家・演出家となった方なんですね。俳優に演技を教える活動もされていて、「演じる」ということが常に傍にあるキャリアの中で見出したことが、この本には書かれています。

タイトルにもあるように、「演じる」と聞くと、演劇に興味ないっていう方は「俳優さんのことでしょ?私には関係ないわ」と思ってしまうかもしれません。が、むしろ、俳優さんの教科書としてではなくて、「ありとあらゆる人が」「日常生活で」「楽に生きるための」本だなと読んでみて思いました。

特に、「営業や接客とか人と話す機会の多い方」とか、「話すことが苦手だと考えている人」「恋愛や友人関係を上手く運びたい方」におすすめです。

コミュニケーションにおいて、誰でも「演じる」っていうことは普通にやってるんですよね。

相手と仲良くなりたければ相手の気分を良くさせるような振る舞いをしたいし、不都合な場面に遭遇したら、嘘をついて自分の不利益にならないように切り抜けたいし。

そういう日常のいろいろな場面で、俳優の演技術にも通じる感覚を養って、コミュニケーションを円滑にできたら生きやすくなると思いますよね?

そこで、まず押さえたいのが、

私たちの振る舞いは、何かを受けたとき、「まず頭の中で思考して、それが感情に変わって、そこから外にこぼれたものが言動となって現れる」ということなんです。

これがこの本の核となっている考え方で、この考え方を中心に、「人から愛されるための」気持ちの持ちようや話し方が示されています。

俳優向けの演技論の本にも似たようなことが書かれているんですけど、なかなか難しい言い方だったり、日常で実践するところまでは書かれていなかったりするので、かみ砕いた言葉で説明されているこの本は、なかなかわかりやすいです。

私も以前出演していた舞台で、私が全然役のことを理解せずに台詞を喋っていたら、見かねた演出家の方に、「『おにぎりからあげハンバーグ』って言ってみて」と言われました。

そこで、何も考えずに「おにぎりからあげハンバーグ」って言うと、次に、「じゃあ、好きな人のこと考えながらもう一回言ってみて」と言われたんですよ。それで、好きな人のことを考えながら「おにぎりからあげハンバーグ」と言うと、明らかに言い方が違ったんです。そこにもっている感情が違うから。そのときはっとしました。「これが演じるということなのか…!」と。

こんな風に、思考→感情→言動の順番を理解しておくことで、演技の基本となり、日常でも自分をどう見せたいかをコントロールできるということなんですね。

私は普段、演劇は演劇としてそこにあるだけで誰かの心を動かすもの、意味のあるものと考えているのですが、日常でも演劇の技術を利用できるということは、生活にこんなにも密接に関わりのあるものなんだ、と思っていただければ嬉しいです。


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〈おまけ〉

シェイクスピアの名言で、こんな言葉があります。
「この世は舞台、人はみな役者だ」

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