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【観劇レポート】亜細亜の骨『また今度!』

亜細亜の骨・台湾翻訳劇『また今度!』

劇場での上演を無観客で配信する今回の公演。

私は2021/03/30 19:30の回(初回)を観劇しました。

まずはあらすじと概要から。

〈台湾の奇才が放つ荒唐無稽の珍奇劇 男女7人台北ストーリー〉
舞台は台湾。思い出の食堂を訪れる高校教師のチュンユエン。
彼はロマンティックな計画のために友人たちを呼び出していた。ひとりふたりとやってくる訳アリの友人たちと、そこへ現れる想定外のゲストたち。次々と問題が巻き起こり、食堂はてんやわんやの大騒ぎ。それぞれの思いが錯綜し、事態は思わぬ展開へ。果たして、チュンユエンが選んだ結末とは・・・(公式サイトより引用)
【出演】 小山萌子 岩﨑大 小野健太郎 奥田努 竹田茂生 伊澤恵美子 ナオフクモト
【脚本】 陳弘洋(台湾)
【演出】 うえもとしほ(すこやかクラブ)

簡単な感想は観劇後すぐTwitterに上げたんですが、最近観劇自体があまりできていないのもあって、未来の自分のために1回1回の観劇をちゃんと記しておきたいと思ってnoteを書くことにしました。


感想・考察

以下、ストーリーを追いながら感想を記していきますのでネタバレ注意です。


まず目に入るのは舞台上後方と下手側の壁の台湾花布の装飾。目に鮮やかで、台湾の食堂という作品の世界に一気に引き込まれます。

怒鳴りながら電話をしているこの店の従業員の女性・イーチュン(ナオ フクモト)がいるところに、チュンユエン(竹田茂生)が登場。彼は奥さんとの5年の結婚記念日のお祝いのため、この店を貸し切りで予約していたのでした。

デコレーションケーキと指輪を預け、妻が来たらこれを持ってきてくれ、と頼んだチュンユエン。「指輪はめてみていいですか」「それはあんまりよろしくないね」という小ネタに思わず笑ってしまいましたが、ここは自宅でPCの前に独り。他の観客と感情を共有することも、俳優に反応を返すこともできないのはやはり寂しいことですね。

そうこうしているうちにチュンユエンの友人・シャオシュー(岩﨑大)が登場します。長身にロングヘアが美しい彼女。チュンユエンの亡くなった元彼の著書を持参しています。

続いて同じくチュンユエンの友人・ユーハオ(奥田努)が登場。彼は最近レイプ疑惑で騒がれている俳優です。奥田努さんは亜細亜の骨のほぼレギュラーと言っても良いですね。『野良犬之家』にも『食用人間』にも出演されていました。全部全然違う役なので色んな面を見ることができて面白いです。

そして、チュンユエンの妻・ホエピン(小山萌子)も遅れて登場。早々に夫婦の言い争いが始まって不穏な感じ。夫婦二人が外で話すために退席すると、ユーハオがシャオシューを口説き始めます。

ここでユーハオがシャオシューの肩に手を置いたり手を触ったりするのがもう…既に色気がありすぎて…思わず言葉にならない声が漏れました…。
そのあと頭撫でてキスしようとするのも、あまりにもやり手のそれだった…。こういう人って魅力的なんですよねクズなのに!(私情ダダ漏れ)
ユーハオが「トイレ行く?」とシャオシューを誘い、二人は退場。したのですが…。

ユーハオ「野郎じゃねえか!!!!」

シャオシューはニューハーフでした。下半身を工事してないので「付いてた」んですね。

それが分かった途端に手の平を返すユーハオに、シャオシューは飄々とした対応。さらに彼女には交際相手の女性がいることも明らかになります。ユーハオは「ノーマルなのかゲイなのかはっきりしろ」と毒づくも、シャオシューは「私はレズビアンよ」と毅然として主張するのがかっこいいです。

ほんとにね、性自認や性的指向なんか自分で決めるべきなんですよね。誰から強制されるものでもない、自分のアイデンティティ。

この辺りでこぼされるシャオシューの「生まれるのは自分で決められないけど、死ぬ時くらい自分で決めたい」という旨の台詞に強く共感します。

そして、夫婦が戻ってきてなんだかんだと問答しているうちに、既に死んでいたはずの作家でありチュンユエンの元彼であるヨンチン(小野健太郎)が現れます。騒然となる一同。

彼は実は隠れて生きていたのでした。

そのような衝撃の事実が明らかになりつつ、ともあれ、食堂のカラオケで夫婦がデュエットを歌ってちょっと良い雰囲気に。

小山さん中国語の歌ずば抜けてお上手!と思ったら中国の血が入ったクォーターで、幼少期を中国で過ごされていたんだとか。納得の歌声でした。

夫婦の仲も修復して、これでめでたしめでたし…かと思いきや、ここからさらに波乱を呼ぶ展開になってしまいます。

なんと、ホエピンの妊娠が発覚。しかも父親はヨンチンだと言うのです。複雑な人間関係…。

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この綺麗な三角関係、大学時代の恋愛(肉体)関係が乱立してたコミュニティを思い出すなあ…。股かけはだめですよ!!必ず誰かを傷つけるんですからね!!

もちろんチュンユエンはこのことを知り、当然怒り心頭に発します。持ってきていたケーキも落としてめちゃくちゃになってしまうのが悲しい。食べ物がぐちゃぐちゃになる描写って心を抉られるような気持ちになってしまいます…。

さらにその場にユーハオにレイプされたと言い張る女・ぺイツーが包丁を振り回しながら乱入してきて、事態はまた混ぜ返されます。しかも虚言癖がありそうな言い分。

ここに食堂の従業員のイーチュンが割って入ってきて、来月結婚するはずだった彼氏はチュンユエンの教え子で、チュンユエンに口淫を強要されたことが原因で自殺したということを明かします。

ペイツーが持ってきた包丁がイーチュンの手に渡り、チュンユエンを刺さんとした、のですが。

シャオシューがイーチュンの彼氏が自殺する直前に偶然出会い、自分は彼に「自殺したけりゃすればいい」と言ったと告白します。そして「私を殺しなさいよ」「誰かが殺してくれるの待ってた」とイーチュンに対峙します。

そんなことはできないイーチュンは包丁を落として呆然自失としてしまいます。

これで一旦はこの騒動は静まり、イーチュンは意を決したようにヨンチンにスマホを渡して、カラオケの音楽に合わせて朗誦しているところをSNSにアップするために動画を撮らせて厨房に戻っていきます。

全てが丸く収まったとはいかなくてもひとまずは一件落着したと思いきや、厨房でイーチュンが自死していたのが発見されます。

一同は一瞬凍り付くも、結局はチュンユエン以外は他の店で飲み直そうと言って(ここ記憶が定かではないのでもしかしたら間違ってるかも…)退場。自分が関わっていないことに関する薄情さがここで急に垣間見えて、ぞわりとしました。

1人残ったチュンユエンは泣きながらケーキを食べます。これにはイーチュンが入れた毒が入っていることが分かっていたうえで、です。妻も失い、元彼にも裏切られた喪失感や、自分が殺した教え子の婚約者までも死に追いやった罪悪感からでしょうか。

「また今度」と何度も言い合う他の4人とは対照的に、チュンユエンは1人で息を引き取って、幕。

この怒涛の暴露と波乱の展開…!フライヤーデザインから、もっとコミカルなだけかと思っていたら良い意味で裏切られました。でも私はこういうのが好きですよ!本音が見え隠れして、結局は自分の欲望が一番大事で、でもそれだけでもなくてっていう人間の複雑さが。

この作品がおすすめな人

以上につらつらと所感を述べてきましたが(久々の記事だったのですっごく読みにくくなってしまった自覚はあります精進します…)、結局は個人的にどんな人におすすめなのか考えてみました!

・台湾と聞くとテンション上がる、中華圏の文化が好きな人(これは言わずもがなですが、中国語歌唱シーンもあるので尚更)

・自分の価値観をしっかり持っている人物が好きな人(シャオシューの凛とした人間像がハマるのでは?!)

・渦巻く欲望と複雑な人間関係にハラハラしたい人(単なるめでたしめでたし、じゃ満足できないあなたに!)


もう生配信は終わりましたが、アーカイブが【4 月15 日(木)19:00 ~ 5 月5 日(水)23:59】の期間で配信されてます。

詳しく知りたい方はこちら

ネタバレ満載PVもUPされてます!

今後の公演も楽しみにしています!!また制作のお手伝いなども伺いたいです…!(営業すな)

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