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妖怪古伝~短編妖怪話~


#創作大賞2024 #ホラー小説部門

「妖怪古伝」これは江戸の昔から庶民に怖がられながらも、愛されてきた妖怪を毎回1つ取り上げてその妖怪を紹介し、私が勝手に創ったバカバカしい、哀しい、心温まるオリジナルストーリーを書いた妖怪物語です。すべて短いお話しですので、お暇な時に1話ずつ読んでみてください。



03化け草履(ばけぞうり)


日本に伝わる付喪神の一種で、室町時代の妖怪絵巻『百鬼夜行絵巻』にも登場する草履の妖怪。
水木しげる氏による妖怪画では、大きな草履に手足が生え、鼻緒の付近に目玉が一つと、その下に口がある妖怪として描かれている。
九十九年使われた草履に魂が宿り、百年目に妖怪と化したとされる。

この化け草履、仕事は主に捨てられた履き物に宿った霊の整理だが、履き物を粗末にする人間の家に懲らしめにくることもあるという。

付喪神の話はいろいろあるが長い年月をへると物は妖怪になると言われますが、
この伝承の本質は「物は大切にしよう」と言うことであると思われます。

03化け草履オリジナルストーリー

ある城下町に腕のいい植木職人がおりました、名前を松五郎といいました
今日は松五郎日頃の仕事っぷりをほめられ大きなお屋敷の主人に立派な履物を頂きました。

松五郎:
いや~あの旦那はなんて気前のいい人なのかね~お給金だって結構いただいているのに
お前の仕事は実に丁寧だ!って、こんな立派な履物いただいちまったよー

家に帰り松五郎今まではいてきた草履をポイとゴミ箱に捨ててしまいました。
その晩松五郎が寝静まったころゴミ箱がバタバタ暴れだし、中から使い古した草履が飛び出しました。

草履:
恨めしや~松五郎~よくも捨ててくれたな~

松五郎:
な、な、なんだお前は

草履:
なんだはないでしょう!今日まで履いていた草履にむかって。
松五郎さんとはどこに行くにも一緒だったじゃないですか!それを...

松五郎:
確かにお前とはどこに行くのも一緒だった初詣も、お花見も、花火を見に行った時も

草履:
そうそう

松五郎:
箱根の温泉に行った時もな~

草履:
違うそれはあたしの前の草履

松五郎:
元カノみたいに言うなよ。しかしわかってくれよお屋敷の旦那から立派な履物いただいちまったんだよ。

草履:
なに?立派な履物って!ジョンロブ?エドワードグリーン?チャーチ?

松五郎:
なんで草履のくせに革靴詳しいんだよ

草履:
それじゃ、ナイキ?アディダス?プーマ?  ねえ知ってるアディダスとプーマって本当の兄弟が創業者だって。

松五郎:
なんの話だよ?

草履:
そんなのどうでもいい!わたしは松五郎と離れたくないないんですよ

松五郎:
わかった、そういうことなら...

後日    

弟子:
親方~なんですか、その腕にしている藁あんだみたいなのは?

松五郎:
これか、これはミサンガって言ってな。着けてるとるといいことがあるんだとよ。

09両面宿儺

両面宿儺(りょうめんすくな)は仁徳天皇の時代に飛騨に現れたとされる異形の人、鬼神である。

「日本書紀」においてはタケフルクマノミコトに討たれた凶賊とされる一方で、岐阜県の伝承では毒龍退治や寺院の開基となった豪族であるとの逸話も残されている。
両面宿儺は、四本の手四本の足に頭の前後両面に顔を持つという奇怪な姿で描写されその身に鎧を着て、四つの手にはそれぞれホコ・シャクジョウ・斧・金剛づえを持ち、その存在は龍や悪鬼を退治した救国の英雄だとされる。
古代史研究者からは両面宿儺は大和朝廷と戦った双子の兄弟支配者を一体として表現した可能性もあると述べられている。

09両面宿儺 オリジナルストーリー

ここは飛騨の山奥にある豪族の隠れ里、この里のをひきいる双子が宴の盃を交わしながら話していた。

弟:
兄者、どうやら都の奴ら今回の戦で俺たちの強さにおじけずき都に帰って帝に「あいつらは妖怪だ!バケモノ相手じゃ勝てない」って言い訳してるらしいぜ

兄:
違いねえ。大柄な俺たち双子がお互いの背を預けて戦ってる様は、前え後ろ両面に顔があり、腕4本の鬼神のように見えたかもな。

弟:
ちげえねえ、あはははは

兄:
この里じゃ 悪いものを追い払ったという意味で「宿儺」さまと呼ばれているし、それならいっそ我ら「両面宿儺」と名乗り都の奴らがおびえているすきに、いっそこのまま都まで攻め入って帝の首を取ってしまおうか?

弟:
そりゃいいな兄者!今なら都に恨みを持つもの達も俺たちと一緒に攻め入ってくれるに違いない。
よし行こうぜ!

こうして二人は飛騨の猛者たちだけでなく周りの豪族たちともしめしあわせ、一気に都に攻め上った!

・・・・・・しかし二人は敗れ去った。

帝から 共に立ち上がった豪族たちそれぞれに両面宿儺を討てば宿儺の領土はその者にくれてやるとの言葉に、裏切り者が相次ぎ内部分裂してしまったのだった。

弟:
兄者~しっかりしてくれ、いったん退き俺たちの里で立て直して、もう一度攻め込もうぜ!

兄:
すまん俺の考えが甘かった、しかし俺は残念だがもう里に帰る力も残っていないようだ。
弟よ後のことはまかせたぞ...。

弟:
兄者~俺を残して行かないでくれ~

女:
宿儺さま、いかがされました? もしかして、まさかお兄様は...

弟:
ああ、飛騨の里の南か。少し前まで一緒に戦っていたのに... 
きれいな顔してるだろ。ウソみたいだろ。死んでるんだぜ。それで。

女:
いや~宿儺さま~無事帰ったらこの南と一緒になると言ってくださったではないですか~

弟:
兄者……。
最後に一度だけやってみたかったことがあるんだ、別れの前にやらせてくれ。
「霊体離脱~!」

兄:
タッチか!ばかやろー      バタン

弟:
兄者~~

この光景を見ていた 都からの追っては、やはり両面宿儺は不死身のバケモノだと言って都に引き返した。

……そして伝説となった(ドラクエ風OP)

12河童(かっぱ)

河童は水陸両棲の妖怪とされ、背中には亀のような甲羅があり、からだは鱗(うろこ)で覆われている。
手足には水かきがあり、伸縮が自在と言われる。頭の上には水をたたえるための皿があって、これが河童の力のみなもとで、水がなくなると同時に力も急速に衰える。

陸上でも力は強いが、水中にあるときは、人はもちろんのこと牛や馬でさえ引っ張り込んで、尻(しりこ)玉をいたり生き血を吸ったりする。キュウリそして相撲(すもう)を好み、よく人間に挑む。嫌いなものは金物。
河童が馬を水中に引き入れようとする伝承は全国にみられるが、そのほとんどが失敗譚である。
逆に、馬に引きずり出されて捕らえられ、危ういところで一命を助けられ。そのお礼にと、魚を届けたり、
血止め薬の秘伝を伝授したりする。
また、河童は相撲好きで人間に化けて挑戦してくる。相撲を取っている時、第三者にはその姿がまったく見えず、大の男のひとり相撲としか映らないという。

12河童 オリジナルストーリー

大きな沼のほとりで小さな女の子が泣いていた、そこにその子の兄らしき男の子がやってきた。

三太:
どうした、小夜。なんで泣いてるんだ?

小夜:
三太兄ちゃん、じつはね、きのう夕方この沼で河童に会ってね、その河童に「お前を俺の家に連れていく」って言われたの。
それでね、「うちの兄ちゃんは強いからおまえなんてやっつけちゃうぞ」って言ったら、「だったら相撲で勝負だ」って言われたの。
兄ちゃん、勝手に河童っと約束してごめんなさい。河童と相撲してくれる?そして勝ってくれる?

三太:
あたりまえだ~!!!!
大事な妹のためならぜったい相撲を取って勝ってやる。小夜、お前も知ってるだろう兄ちゃん、相撲だったら大人にだって負けねえんだ!まかせろ!

そしてその日の夕刻、沼のほとりで河童がやる気満々で相撲のしこを踏んで待っていた。
さすがの三太も河童の相撲の強さは聞いたことがあったし、負ければ妹を連れていかれてしまう。

三太:
さすがに噂どうり強そうだ、絶対に負けられない。なんかいい方法はないか......
そうだ、河童は頭の皿の水が無くなると弱るんだ。

河童:
遅かったな。お前がその子の兄ちゃんか?だったら俺と相撲で勝負だ、負けたらその子はもらっていくぞ。

こうして二人の沼の横の空き地での相撲が始まった。二人ともやる気十分、小夜が行事になってさあ勝負!

小夜:
はっけよい~  

三太:
待った!  

いまにもと飛びかかろうとした河童の頭の皿から水がこぼれた。

小夜:
もういい?じゃ、はっけよい~

三太:
待った!

また、飛びかかろうとした河童の頭から水がこぼれた。

小夜:
時間いっぱいです。 はっけよい、残った!

三太は思いきり河童にぶつかって、またまた河童の頭から水がたくさんこぼれた。
しかし河童は踏みこたえ二人はいっぽも譲らない、大相撲になった。

そして、三太は残っている力を全部出し切って河童を投げ飛ばした。
水入りにならなくてよかった、と思う三太でした。

河童:
まいった!お前強いな。...約束通りお前の妹はおいていくよ、
でも一つ約束してくれ俺が煎じたこの薬を無くなるまで毎日妹に飲ませてくれ。
お前にはわからないだろうが妹は不治の病でこのままだとあと3年も生きられない。でもこの薬を飲めば必ず治るんだ!

三太:
河童お前、それを知ってて直すために小夜を連れてこうとしたのか?
...まさか薬持ってきてたってことは、お前わざと負けたのか?

河童:
さ~な、ただお皿の水はどうあれ、相撲だけは本気で取りたかったのさ...
...あばよ、妹大切にな。 

そういうと河童は沼に消えていきました。

河童の薬を飲んだ小夜は病気が治り、それから毎月相撲を取った日に兄と二人で沼のほとりに河童の好物とされるキュウリをお供えするようになりました。

14玉藻の前(たまものまえ・九尾の狐)

玉藻前(たまものまえ)は、平安時代末期に鳥羽上皇の寵姫(ちょうき)であったとされる伝説上の人物。
妖狐・九尾の狐の化身であり、正体を見破られた後、下野国那須野原で殺生石になったという。

この玉藻前、古代中国王朝殷では妲己(だっき)と呼ばれ殷を乗っ取り、周の武王と太公望が率いる軍勢により捕らえられ、処刑された。
またインド天竺の摩竭陀(まがだ)国では華陽(かよう)夫人として再び現れ、国をあやつり周の第十二代の王、幽王(ゆうおう)の時の后、褒姒(ほうじ)にも化け、王を狂わせた。
幽王が討たれると、今度は若藻(わかも)という16歳ほどの少女に化け、吉備真備(きびのまきび)の乗る遣唐使船に同乗し、来日を果たしたとされる。
日本では18歳で宮中で仕え、のちに鳥羽上皇に仕える女官となって玉藻前(たまものまえ)と呼ばれ、その美貌と博識から次第に鳥羽上皇に寵愛されるようになった。
しかしその後、上皇は次第に病に伏せるようになり、安倍晴明の子孫、陰陽師・安倍泰成(あべのやすなり)が玉藻前の仕業と見抜く。
安倍が真言を唱えた事で玉藻前は変身を解かれ、九尾の狐の姿で宮中を脱走し、行方を眩ました。

その後、栃木県の那須野での悪行が宮中へ伝わり、鳥羽上皇は討伐軍を編成。
NHK大河ドラマ、鎌倉殿の13人で有名な上総介広常(かずさのすけひろつね)、三浦介義明(みうらのすけよしあき)らをを将軍に、陰陽師・安部泰成を軍師に任命し、軍勢を那須野へと派遣した。
那須野で、既に九尾の狐と化した玉藻前を発見した討伐軍はすぐさま攻撃を仕掛けたが、九尾の狐の妖術などによって多くの戦力を失い、失敗に終わった。
上総介らをはじめとする将兵は騎馬からの弓を訓練し、再び攻撃を開始する。
討伐軍は次第に九尾の狐を追い込んでいき、三浦介が放った二つの矢が脇腹と首筋を貫き、上総介の長刀が斬りつけたことで、九尾の狐は息絶えた。
その後、九尾の狐は巨大な毒石に変化し、近づく人間や動物等の命を奪うようになった。
そのため村人は後にこの毒石を『殺生石』と名付けた。この殺生石は鳥羽上皇の死後も存在し、周囲の村人たちを恐れさせた。

14玉藻の前 オリジナルストーリー

ここは栃木県那須地方の山の中、九尾の狐の化身である玉藻の前を武士と呪術師の討伐連合軍が追いつめていた。
討伐軍の軍師・安部泰成(あべのやすなり)は玉藻の前に進み出て話しかけた。

安部:
我々は大きな犠牲を払ってきたがやっとお前を追いつめた、九尾の狐め観念しろ!

玉藻:
おのれ人間どもめ、あらゆる生き物の怨念から生まれた我をここまで追いつめるとは。しかし思い上がるなよ、
これほど我の力が弱まったのは、
この日の本の妖怪どもが団結して「この日の本は決してお前一人に渡さんぞ」と束になって挑んできたからだ。
特に先陣を切ってやって来た「長飛丸」とかいう妖怪には本当に手を焼いた......

長飛丸:
白面!おめえなんざワシ一人で十分だ覚悟しろ

玉藻:
あ奴らを返討にしてやったが我の9本の尻尾のうち5本を失った。おかげで我の力も半減してしまったのだ。

しかし、今の我でもまだまだお前たちなど敵ではない、我の毒気でお前たち全員即死させてやろうか?
フフフフ......。  
ところで泰成、お前の力は他の奴らとは違う殺すには惜しい、それに泰成、お前の先祖の清明はキツネから生まれたと言うではないか。どうだ同じキツネのバケモノ同士、我の仲間になりこの日の本を支配しようではないか?

安部:
たしかに私の祖先は安倍晴明、しかしキツネの話はあくまで伝説だ。
それに私は玉藻の前、お前を滅ぼすためここにいるのだ仲間になるわけなかろう!
いざ勝負だ!

玉藻:
それならしかたあるまい、もうお前達の呪文など克服した、我が吐き出す毒気で姿が見えぬまま武士どもと一緒に死ぬるがいい。 フッフフフフ

玉藻の前は九尾の狐に変化し口から紫色の煙を吐き出した、この煙はすべての生き物を殺す猛毒、この煙の中にいられては討伐軍は誰も手が出せない! 
いよいよ万事きゅうすかというところに安部泰成進み出た!

安部:
また正体を現したな、この時を待っていた!これは安部家に伝わる最後の秘伝の技だ受けてみろ!

泰成は何やら呪文を唱えるとふところから何かを九尾の狐に向かって投げた
・・・・・・油揚げ?

玉藻:
ハハハハ...馬鹿かお前は?いくらキツネといっても我は最強のバケモノぞ、そんなもので...
...ジュル、うまそう...いやいや、そんなものの誘惑には
...あぁ~うまそう

九尾の狐は我慢できず、煙の中から飛び出し、油揚げに飛びついた!  
そこに武士たちが泰成達の呪文を書き付けた矢をいっせいに射掛けた!
空が真っ暗くなるほどの矢が九尾の狐に降りそそいだ!
何百もの矢が突き刺さりハリネズミのようになった九尾の狐はさすがに最後の時を迎えた

玉藻:
さすがだ泰成、千年以上も生きてきた我がこんな形で滅ばされようとは、だが最後の意地だこのうまそうな油揚げだけは誰にも渡すものか~  

と叫ぶと大岩となった。

安部:
清明さま感謝いたします、あなたの代から伝わるこの油揚げの作り方であの大妖怪を滅ぼすことが出来ました。
それにしてもすさまじい執念だ、大岩となってもわずかだが毒気をだして生き物を寄せ付けない。
...もしかするとまたいつの日にか蘇るのかもしれないな。

それから数百年、那須野が原で殺生石となった九尾の狐は近づく生き物をすべて殺してきた、、、

そして2022年
その殺生石が真っ二つに割れた。
獣の槍が鳴っている!キィーン!キィーン!キィーン!!!

18猫又

猫又は、日本の民間伝承や古典の怪談などにあるネコの妖怪。
大別して山の中にいる獣といわれるものと、人家で飼われているネコが年老いて化けるといわれるものの2種類がある。

「徒然草」にも猫又は書かれており、飼い猫も年を経ると化けて人を食ったりさらったりするようになると語っている。
一般に、猫又の「又」は尾が二又に分かれていることが語源といわれるが、ネコはその眼光や不思議な習性により、古来から魔性のものと考えられ、葬儀の場で死者をよみがえらせたり、ネコを殺すと7代までたたられるなどと恐れられており、そうした俗信が背景となって猫又の伝説が生まれたものと考えられている。

18猫又 オリジナルストーリー

枯葉が散り始めた山里の秋、人のよさそうな老人とやはりこちらも年老いた猫が日向ぼっこをしていた。

老人:
みい。お前が家に来てから何年が経つかのう。
わしの連れが亡くなった春に迷いこんできて、もう20年か、早いものだのう。 

みい:
ニャー

老人:
さて、今日はあいつの命日じゃ墓参りに行くが、みいお前はどうする?一緒にいくか?

みい:
ニャー

老人と猫はゆっくりと山のふもとの墓にやってきた。
すると何やら森の中から黒い長い丸太のようなモノがはい出てきた。

それは犬くらいなら丸のみ出来そうな大蛇だった。大蛇はかま首をもたげ老人を見下ろした。
老人は猫のみいを守ろうとしたが大蛇の尻尾の一撃で吹き飛ばされ気を失った。

大蛇:
冬眠前に人間でも食らっておこうと里に降りてきたが、じじいか、まあしかたあるまい。ど~れ、一飲みにしてやる。

みい:
まて!バケモノ。私の主人に手をかけようものなら、私が許さん!

みいの毛が逆立ち尻尾が二つに割れると身の丈はオオカミほどの大きさになった。

大蛇:
ほう、お前は猫又か...だがしょせん猫は猫、水神の力を得た俺に歯が立つものか。
まずはお前から食らってやる。 

大蛇は猫又に噛みつこうと飛びかかった。しかし猫又は飛びのきつつ大蛇の左目を爪で引き裂いた。 
大蛇はうなり声をあげて後ずさった。

大蛇:
よくもやってくれたな~ かくなる上は本当の力を見せてやる!

と言うと大蛇は先ほどの3倍もの大きさになり、足と角が生え、竜となった。

みい:
なるほど、ならば私も山の神にいただいた力を見せよう! 

そう叫ぶと猫又も牛よりも大きな白い虎となり、まわりには火の玉も飛び始めた。

大蛇:
フハハハ。竜には虎という訳か、味なマネを。だが俺はまだまだ大熊にも大鷲にも鬼にだってヘンゲ出来る。
まだ猫又になりたてのお前にはそれは出来まい!

みい:
たしかに、私はそこまではヘンゲできない。しかし大蛇、おまえは小さなモノにはヘンゲ出来まい。

大蛇:
ハハハハ。そんなことは簡単だ、ではトカゲにでも化けてやろう。

というと大蛇は竜の姿から小枝ほどのトカゲにヘンゲした。

みい:
かかったな!

そう言うと猫又はトカゲに飛びつき一飲みにしてしまった。

みい:
ああ、気持ち悪い...後で正露丸飲もう。
おじいさん起きて。  ニャー ニャー 

老人は目を覚ました。

老人:
う~、...みい大丈夫か? おや、大蛇は? わしは夢を見ていたのか。   

老人は猫と墓参りをして自宅に帰っていった。猫のみいは老人の背中を見ながら思った。

みい:
おじいさん、まだまだ長生きしてくださいね。私が人間だった時の分まで...
それまでおじいさんのそばで私がお守りしますからね。

猫のみいはすっかり元の姿に戻っていたが、尻尾だけは2本のままだった。 
その尻尾は楽しそうにゆれていた。

22雲外鏡

雲外鏡(うんがいきょう) は、特殊な鏡が長い年月を経たのちに変じたという、日本の妖怪の一種。
鳥山石燕の妖怪画集『百器徒然袋』にも描かれており民俗学的知見から、鏡の付喪神(つくもがみ)と見られる。

鳥山石燕の雲外鏡では化け物の正体を明らかにする「照魔鏡(しょうまきょう)」と呼ばれる鏡が、長い年月を経た末に妖怪化したものとされている。
公家の屋敷にある丸鏡として描かれている姿は。鏡はすだれ御簾(みす)の陰から半面のみ姿を見せており、怪しげな黒雲を伴っている。その鏡面には邪(よこしま)な雰囲気をただよわせつつ舌を出してこちらに視線をくれる化け物の顔が浮かび上がっている。
漫画家・水木しげるの説明では、十五夜の月明かりの下(もと)で石英(せきえい)のトレイに水を張り、その水で鏡面に化け物の姿を描くと、鏡の中に化け物が棲みつく。それが雲外鏡であるという。

22雲外鏡 オリジナルストーリー

古くからの大きな洋館の中に、これまた古い大きな鏡があった。この鏡は先代当主婦人が魔術に興味があったため月夜の儀式により魂を吹き込まれた鏡だった。
この一番奥の部屋に現在の当主の孫、優が何か探し物をして入ってきた。

優:
あれ~おかしいな、僕のメガネどこ行っちゃんだろう? あ、あった暖炉の上か、こんなところに置いた記憶ないんだけどな。
しかし、いつ見ても気味の悪い鏡だな~。まるで見ている人間が吸い込まれそうだ。

鏡:
ほ~、お前は普通の鏡とワシの違いがわかるのか? 奥様からは気軽に口をきいてはならないと言われていたが、直系の血筋のお前にならいいだろう。

優:
え~鏡がしゃべった。お前は何者だ。

鏡:
ワシは雲外鏡、お前のひいばあ様から命を授けてもらったモノだ。ワシの鏡は人の本当の姿を映し出す、だから奥様から正体を見せるなと言われていたんだ。
でも、ワシも50年もじっとしているのにはもうあきた。お前、どうだお前の一族の本当の顔を見たいとは思わないか、 いいや見せてやるVTRスタート。

鏡には優の祖父、現・当主の姿が映し出された。

祖父:
この家のものどもときたらワシの莫大な財産を狙って、ワシにおべっかを使いワシの顔色を見ながら、ワシが早く死ぬのを願っている、もう誰も信用できん!

鏡:
もう一人見せてやる、今度はお前の叔父さんだ。VTRスタート。

叔父:
あのじじいいつまで生きているつもりだ、兄夫妻が亡くなり、じじいの遺産を引き継げるのは俺と優だけ、、、じじいが死ぬ前に優を何とかすれば全ては俺のものだ!

鏡:
どうじゃ、、、人間とはあさましいモノであろう。金のためなら家族でさえ敵なのだ。、、、ど~れ、お前の正体も見てやろう、ワシの前では演技は通用しないぞ。
ん~どういう事じゃ!お前はなにも変わらない、今のまんまじゃ! こんな無欲で誠実な人間は初めて見た。  気が変になりそうじゃ、恐ろしい、、、出ていけ。

優はお前の本性は他の誰にも見せるなよと言い残して部屋を出て行った。、、、、すると優が出ていくのを確認してから部屋に若い女が入って来た。
その女は昨夜、洋館の近くの森で倒れているのを優が自宅に連れてきて介抱してあげた女だった。

女:
雲外鏡、よくできたわねほめてあげるわ。

雲外鏡:
どういう事じゃ?ワシはお前とは初対面のはず、なのになぜワシのことを知っている。

女:
そうね、たしかに初対面よ。でも、お前のことはお前が奥様と呼んでいる女から昔聞いたことがあったのよ。

鏡:
どういうことだ奥様はもう50年以上前に亡くなった。お前が会えるはずがない。えいお前の姿を見せろ!    ど、、どういうことだ!ワシの鏡に映らん!

女:
そう、私は鏡に映らないバンパイア。 夜のうちにコウモリを使って優のメガネを運ばせ、お前にこの一族の本当の姿を優に見せる計画にまんまとはまったのよ。

鏡:
どういうことだ、なぜおまえは優にそこまでする?  なにが目的なんじゃ?

女:
目的? そんなもの、私にもわからないわ。
でも、毎晩月を眺めている優をみて、、、愛してしまった。もう誰にも優を傷つけさせない。そう思っただけ。
そして私の正体を知ってしまったお前も片付けないとね。

鏡:
や、やめてくれ、ワシは誰にも話さないから...

パリーン(鏡の割れる音)
女:
これで私の正体をわかるものはいないわ、あとは邪魔者をしまつして、優を魅了すれば、永遠に私たちは...。

26口裂け女

口裂け女(くちさけおんな)は、1979年の春から夏にかけて日本で流布され、社会問題にまで発展した都市伝説。2004年には韓国でも流行した。中華圏でも有名。

口元を完全に隠すほどのマスクをした若い女性が、学校帰りの子供に 「私、きれい?」と訊ねてくる。
「きれい」と答えると、「……これでも……?」と言いながらマスクを外す。するとその口は耳元まで大きく裂けていた、というもの。「きれいじゃない」と答えると包丁やハサミで斬り殺される。
身体能力としては、高速で走ることができ、100メートルを6秒で走るともいう。中には空中に浮くという話もある。
口裂け女から逃げるには様々な方法があると伝えられている。広く知られたものにポマードとべっこう飴がある。ポマードと3回、続けて唱えると女が怯むのでその隙に逃げられる、というもの。
べっこう飴は口裂け女の好物であり、これを与えて夢中でなめている隙に逃げられるというものがある。
1979年8月、それまで全国を席巻していたこの噂は急速に沈静化した。これは夏休みに入り、子供達の情報交換=口コミが途絶えたためとされる。

26口裂け女 オリジナルストーリー

1979年初夏の夕暮れ、和彦は一人、小学校からの帰り道を急いでいた。 最近ちまたでは「口裂け女」なるバケモノがでて子供たちを襲うと噂されていたからだ。

和彦:
くそ~先生 僕が隠して持ってきたウォークマン見つけて、学校にこんなものを持って来てはいけません!先生がしばらく預かって君のお母さんに返しておきます! だって。
ぜったい先生僕のウォークマンで楽しんでるんだよ、まだ発売されたばかりだからね。 おかげですっかり遅くなってしまったじゃないか。お母様に怒られちゃうよ!

ランドセルを揺らしながら走って行く和彦のが、ふと道の前の街灯に目をやると背が高く長い髪の女の人が立っていた。......しかも、噂に聞く顔を半分くらい隠すマスクを着けて。

和彦:
ま、ま、まさかこれが噂の口裂け女? どうしよう、......よし僕はかけっこはリレーの選手なんだ、見えなかったふりして駆け抜けよう!  

和彦は必死で街灯の横を駆け抜けた。 
しかし、マスクの女は余裕で和彦の横に並んでついてきた。

女:
あなた~、足速いのね~。 ところで、「わたしきれい?」

和彦はいよいよきた!と思った。

和彦:
どうしよう。変な返事をすると殺されちゃうって噂だし。...そうだ噂の呪文言ってみよう!
「ポマード・ポマード・ポマード」

女:
お~ほほほほ。 それは単なる噂よ。それともう一つ、べっこう飴ってのも、もう飽きちゃったからダメよ。
さあもう一度訊くわよ、「わたし キ・レ・イ?」

和彦はもう頭の中が真っ白、何か時間稼ぎになるものはないかとポケットを探った。......あった、もうこれがダメならあきらめるしかない。和彦はそれをマスクの女に投げつけた!

女:
なに?...こ、こ、これは「ドンパッチ」!ちまたじゃコレ売り切れてて手に入んないのよ!なんでこんな子供が持ってるのよ!そんなのどうでもいい、やったー一度食べたかったのよ~。

マスクの女がドンパッチに夢中になっているうちになんとか和彦は逃げ延びた。和彦は今日ほど家がお金持ちでよかったと思った事はなかった。

それから四十数年が過ぎた。年の瀬の迫る街角を一人の紳士が歩いていた。和彦である。
彼の父がそうであったように彼もかなりの貫録を持っていた。
雑踏を抜け家への近道のひとけの少ない裏路地に出た時、和彦の前に背の高い長い髪の女が現れた。

女:
ひさしぶりねぇ、坊や。いい世の中になったわ、一年中マスクをしていても誰にも怪しまれない。
あら、私のこと忘れちゃった?あなたが子供の頃会ってるのよ。
私がマスクを取らずに逃げられたのはあなたが初めて。せめて私の本当の顔を見せてあげようと思って。また訊くわよ「わたしきれい?」

女がたずねた。

和彦:
ほんとに久しぶりだね、君は年を取らないんだね。
...あの時から君のことを忘れたことはなかったよ。 君はきれいだよ。

女:
とうとう、言ったわね、、、これでもかー!

女はマスクを取った、女の口は両方の耳のあたりまで裂けており、髪の毛は逆立ちまがまがしいオーラをまとっていた。

和彦:
やっと君の顔が見れたね、僕もこの日を待っていたんだ。

そう言うと和彦は名刺を差し出した。
「白鳥クリニック 院長白鳥和彦」そこにはそう書いてあった。

和彦:
僕は父の後を継いで整形外科医になった。今では海外からもわざわざ僕のオペを受けに来るくらいだ。
大丈夫君のその傷はきれいになる。
ちょっと早いが君への僕からのクリスマスプレゼントだ。

空から真っ白な雪が降って来た。

28枕返し

枕返し(まくらがえし)とは、日本の妖怪で夜中に枕元にやってきて、枕をひっくり返す、または、頭と足の向きを変えるとされている。
具体的な話は江戸時代・近代以後に多く見られ、その姿は子供、坊主であるともいわれるが、明確な外見は伝わっていない。東北地方では、枕返しは座敷童子(ざしきわらし)の悪戯と言われることが多い。

枕を返されるほかにも、寝ている人が体を押しつけられたり、畳を持ち上げられたりし、周りには小さな足跡が残っていたという。
枕を返す意味としては、夢を見ている間は魂が肉体から抜け出ており、その間に枕を返すと魂が肉体に帰ることができないという信仰が古くは日本人の間にあった。
民俗学者・宮田登(のぼる)は、かつての日本では、夢を見ることは一種の別世界へ行く手段と考えられており、そのために枕は別世界へ移動するための特別な道具、いわば異次元の交錯する境界とみなされており、眠っている間に枕をひっくり返されるという「まくらがえし」は、すべての秩序が逆転する異常な事態になっていたことをあらわしていたと述べている。

28枕返し

遣唐使
大陸に向かう遣唐使船は暴風雨にさらされ高波にのみ込まれそうだった。私はもう船にしがみつくだけで精一杯だった。

男:
大使様大丈夫ですかい。いや~災難ですね~今回で3度目なんでしょう唐に向かうの。そのたんびに台風やら大雪やらで遭難して、やっと今回は無難な出発だったのにねえ。...ちょっと唐の都は無理そうですね...

そう言っている間に空をおおうような高波が来て船は転覆した。

私:
はぁはぁはぁ ゆ、夢か? 現実見たいな夢だった。

源平合戦
一面赤い旗が空をおおっていた。私は一の谷の人の中で盃を交わしていた。

男:
若、やっと初陣ですな~。大丈夫ですよ我々の方が兵の数は勝っていますし、敵の先陣の源義経とかっていう奴は東北の田舎侍だって言うし。万が一にも我らが負けることなどないですよ。あはは、 まあまあ一杯飲みましょうや。

そう言っていると背面の崖から声がした。
「鹿が下れるならば、馬が下りられぬ訳はない!」
その声とともに源氏の荒武者たちが崖から現れた。
もう平家の陣営の中は大混乱だ、その時どこからともなく飛んできた矢が私の胸を貫いた。
私は薄れゆく意識の中、地面に倒れた。

私:
はぁはぁはぁ また夢か? なんてリアルな夢なんだ。

本能寺の変
たいまつに照らされた京都の寺に私はいた、今日我が主 信長様の宿にさだめられたのは本能寺、お供の兵は少ないがもう信長様に逆らう者などこの京の都にはいない。

男:
いよいよ殿の掲げた天下統一はもうすぐだな。秀吉様が高松城を攻め落とせばもうこの日の本は殿のものになったも同然じゃ。ささお前さんも前祝いといこう飲め飲め。

すると寺の門の前から聞き覚えのある男の声が聞こえた
「敵は本能寺にあり!」 
その声の後沢山の火矢が寺のいたるところに飛んできた。

男:
な、なんてこった!あの声は光秀様、たしか光秀様は秀吉様の援軍に向かったはずなのに、なんでここに!

そうこうしている間に寺の門は破られ鎧武者達がなだれ込んできた、私も必死に戦ったが多勢に無勢、体中刀傷を負いながら炎の中に飛びこんだ「殿、お逃げください!!」

私:
はぁはぁはぁ またもや夢か? なんなんだ毎晩毎晩。......あ。

妖怪:
あ。

私:
お前は誰だ!というか何だ!

妖怪:みつかってしまったか。人に名を聞くならまず自分から名乗れ。

私:
私は龍之介、しがない小説家だ。

妖怪:
ワシはカンダタ。昔の者たちは妖怪枕返しと呼んでいたがな。ワシは夢の中に生き、夢を操る妖怪。見つかったからにはもうここには居られないからワシは去る、あばよ。

私:
待てカンダタ。たのみがある、もう少し私に色々な夢を見させてくれないか?
最近作品のいいアイデアが浮かばないんだ、夢の中に何かヒントがある気がするんだ、たのむ!

妖怪:
ほほ~、いいだろう。ならばお前に人知を超えた色んな夢を見させてやる。今までお前に見せたのはお前の前世の夢だがこの先は見たことのない世界だ、耐えられるかな?

私:
望むところだ作品のためなら鬼にだってなってやる。

妖怪:
よし、ならば横になってこの枕に頭をのせろ、ワシが望む世界を見せてやろう!
ただし覚悟しろ、戻って来た時はたしてどの世界が本当にお前が生きている世界かわからなくなっているかもしれないぞ。
それでよいならさあこの枕に横になれ。

妖怪:
ところでこの話をきいているお前さんは今夢の中かい?それとも現実の世界かい?
それがハッキリ、証明できるかな? ヒィヒィヒィヒィ...。

34小豆洗い

小豆洗いまたは小豆とぎは、ショキショキと音をたてて川で小豆を洗うといわれる妖怪。この妖怪の由来が物語として伝わっていることも少なくない。

江戸時代の奇談集「絵本百物語」の「小豆あらい」によれば、越後国の高田の寺にいた日顕(にちげん)という小僧は、体に障害を持っていたものの、物の数を数えるのが得意で、小豆の数を一合でも一升でも間違いなく言い当てた。
寺の和尚は小僧を可愛がり、いずれ住職を継がせようと考えていたが、それを妬んだ円海(えんかい)という悪僧がこの小僧を井戸に投げ込んで殺した。
以来、小僧の霊が夜な夜な雨戸に小豆を投げつけ、夕暮れ時には近くの川で小豆を洗って数を数えるようになった。
円海は後に死罪となり、その後は日顕の死んだ井戸で日顕と円海の霊が言い争う声が聞こえるようになったという。

34小豆洗い オリジナルストーリー

栄太郎は父親に、遊び歩いて本気で修行もしないような息子にはこの中村屋の店を継がせるわけにはいかない。と言われ落ち込んで近くの河原に来ていた。
もう暗くなってきた河原には誰もおらず、栄太郎は近くの小石を拾って川面に投げた。
すると、どこからかこんな声が聞こえてきた。

小豆:
ショキ、ショキ、ショキ。小豆とぎましょか~人取って食いましょか~。ショキ、ショキ、ショキ。

栄太郎は声のする方に足音がしないように近づき、草の間から覗いてみると、子供くらいの小柄なジジイがかがんで小豆を川の水で研いでいるようであった。

栄太郎:
お前は誰だ? 最近この辺で噂の妖怪なのか?

小豆:
シ~今数えてるんだから、885、886、887、888、とよし今日もちゃんと数が合ったぞ。
ん、さっき何かたずねられたような?わ!人間だ!

栄太郎:
え~。かなり間抜けな妖怪だな。あまりかかわらない方がよさそうだ、じゃ~な妖怪。

小豆:
まて若造。おぬし何か悩んでおるようだな。しかもそれは小豆にかかわることじゃな~。よかったら話してみい。

栄太郎:
どうしてそれを?たしかにオレはオヤジにあんこの作り方がまったくわかっていないと今日もどやされたんだ。オヤジや職人さんたちの真似をしても、どうにも俺にはあんこをおいしく作るコツがわからないんだ。
お前、小豆の妖怪ならオレにあんこのコツを教えてくれよ。

小豆:
なるほどな~。本当はワシの専門は赤飯でアンの方の専門はルイスの奴なのじゃが、人間よりは小豆につい
ては詳しい。しょうがない教えてやろう。
よ~く聞けよ、今から教えることを忘れるな、いいか。

小豆の声を聞け、時計に頼るな、目を離すな、何をして欲しい小豆が教えてくれる。
食べる人の幸せそうな顔を思い浮かべぇ。おいしゅうなれ。おいしゅうなれ。おいしゅうなれ。
その気持ちが小豆に乗り移る。うんとおいしゅうなってくれる。甘ぇあんこができあがる。

わかったか?今言った通りに小豆に向き合ってあんこを作ってみろ。

栄太郎:
わかった。明日さっそっくやってみるよ。ありがとう。

次の日、また栄太郎は昨日と同じ時刻に河原に立っていた。そして妖怪を呼んでみた。

小豆:
どうした若造、ワシの教えた通りやってみたのか?

栄太郎:
ああ、けさ早起きしてお前が教えてくれた通りに真剣にやってみて、オヤジに味見してもらったさ。
オヤジはにっこり笑ってもっと精進しろだって、ありがとう妖怪!

小豆:
そうか、よかったな。その笑顔昔のお前のオヤジの若い頃ににそっくりだな。
よし、じゃあ今日はさらにとっておきのそのあんを白いふかふかの生地で包む「あんまん」ってのを教えてやろう。

栄太郎:
ありがとう!これから小豆先生って呼ばせてください

栄太郎は川の中に走り入って妖怪に抱き着いた。
妖怪のザルが宙をまった。

小豆:
ワ、ワシの小豆が~~!

ザッパーン(川に落ちた)

36キジムナー

キジムナーは、沖縄諸島周辺で伝承されてきた伝説上の生物妖怪で、ガジュマルの古木などの樹木の精霊。人から恐れられることはあまりなく「体中が真っ赤な子ども」あるいは「赤髪の子ども」の姿で現れると言われることが多い。

川でカニを獲ったり特に魚の左目または両目が好物でキジムナーと仲良くなれば魚をいつでも貰え、金持ち
になれるともされる。また、海に潜って漁をするのが得意であっという間に多くの魚を獲る。
いっぽうで人間の船に同乗して共同で漁を行うと伝えられ、ほかにも作業の手伝いをして褒美にご馳走をいただく、夕食時にはかまどの火を借りに来る、年の瀬は一緒に過ごすなど、人間とは「ご近所」的な存在であるといった伝承が多い。
人間と敵対することはほとんどないが、住みかのガジュマルの木を切ったりすると、家畜を全滅させたり海で船を沈めて溺死させるなど、一たび恨みを買えば徹底的に祟られると伝えられる。

36キジムナー オリジナルストーリー

沖縄の海を丸~るい月が照らしていた。
先月の台風で家と父親を亡くしたヒナタは浜辺で夜の海をぼんやりと眺めていた。

ヒナタ:
父ちゃんも空からこの海を見ているのかな~。今は叔父さんの家で母ちゃんと二人住まわせてもらってるけど、オイラあの叔父さん苦手なんだよな。

ふとヒナタが後ろのガジュマルの木を振り返って見ると木の上に小さな生き物が3つ座ってこちらを見ていた。

ヒナタ:
わ! 君たちはもしかして昔ばなしで聞いた事があるキジムナーかい?

......生き物たちは、優しそうに微笑んでヒナタを見ている。

ヒナタ:
も、もしよかったらオイラと友達になってくれないかい?

......生き物たちはキャキャと騒ぎながら森の中に消えて行った。

翌日ヒナタは叔父さんにいいつけられ、船で魚を取りに海に出た。
海で投網を投げようするといつの間にか昨夜の生き物が船に乗ていた。生き物はニコっと笑ったかと思うと海に飛び込み魚を船の方に追い込んでくれた、そこにヒナタが網を投げ入れると沢山の魚が取れた。
夕方には船は取れた魚で一杯になった。

ヒナタ:
キジムナーありがとう。おかげで叔父さんに怒れずにすむよ。

ヒナタは海岸に着くとニコニコ笑っているキジムナーと別れた。

次の日、その次の日も船にキジムナーが乗り込んできてくれたおかげで船は大漁で帰ってきた。
もうヒナタとキジムナーは相棒の様に仲良しだった。

ヒナタの叔父さんはこのところの大漁を不思議に思い浜の木陰で海から帰って来た二人を見ていた。

叔父さん:
ヒナタめ悪霊のキジムナーに憑りつかれていたのか!あんな奴が家にまで来るようになったら我が家まで呪
われてしまう。何とかしなければ。

次の日叔父さんは二人が帰って来るのを待ち、キジムナーが森の中に帰って行くのの後をつけて行った。 
森の奥の古い大きなガジュマルの木にキジムナーは消えて行った。

叔父さん:
ここがあいつらの家か、よしこのガジュマルの木ごと焼いてやる。
ん、まてよ木の間にキジムナー達が拾ってきた金やら真珠やらサンゴやらがあるじゃないか。どうせ燃やしてしまうんだ、このお宝はオレがもらってやる、フフフフ。

叔父さんはガジュマルの木に油をまいて火をつけた。ガジュマルの木は燃え上がった。

家に帰っていたヒナタは島の真ん中のあたりが赤く燃え上げるのを見て、キジムナー達は大丈夫だろうかと心配していた。
叔父さんはその晩帰ってこなかった。

次の朝浜辺に倒れている叔父さんがの姿があった。

その晩、ヒナタはキジムナー達とはじめて会った浜辺に来ていた。あの日のように月が照らす海を見ていた。
ヒナタの後ろのガジュマルの木に何かの気配があった。ヒナタが振り返るとガジュマルの木にキジムナーが3
人座っていた、しかし3人はあの日のように微笑んではおらず、悲しそうな顔をしていた。

ヒナタ:
ごめんキジムナー。きっと君たちの家を燃やしたのは叔父さんなんだね。本当にごめんなさい。

ヒナタは大声で泣いた。
ヒナタが顔を上げるとキジムナー達はいなくなっていた。キジムナー達いた場所には涙のあとのようにいくつもの真珠が落ちていた。
その真珠が月明かりに光っていた。

37雪女

雪女の起源は古く、室町時代には既に伝承があったことがわかる。呼び方は違えど、常に「死」を表す白装束を身にまとい男に冷たい息を吹きかけて凍死させたり、男の精を吸いつくして殺すところは共通しており、広く
「雪の妖怪」として怖れられていた。

雪女は小泉八雲の『怪談』「雪女」の様に、恐ろしくも美しい存在として語られることが多く、雪の性質からはかなさを連想させられる。雪女の昔話はほとんどが哀れな話であり、子のない老夫婦、山里で独り者の男、そういう人生で侘しい者が吹雪の戸を叩く音から、自分が待ち望む者が来たのではと幻想することから始まったといえる。そして、その待ち望んだものと一緒に暮らす幸せを雪のように儚く幻想した話だという。

37雪女 オリジナルストーリー

岩手の山里にユキという美しい娘がいた。ユキは両親には早くに先立たれていたが祖父母に大切に育てられ心の優しい娘になっていた。
この頃、南部と伊達は領地をめぐり戦を行っており、ある晩ユキの住む村にも戦火がおよび村は焼き討ちにあい、ユキの祖父母も亡くなった。
ユキはなんとか一命は取り留めたが、もうろうとした意識のまま雪の降る森の中に消えて行った。

それから数年が過ぎた伊達の領地の森の中、若い美しい娘が野党に追いかけられていた。そこにたまたま通りかかった伊達の家臣の若侍が野党を追い払い娘を助けた。

蔵之介:
大丈夫か娘。私は伊達家の家臣で蔵之介という者だ。こんな山の中を一人旅では危ない里まで送ろう。

若侍は里まで娘を送ると気をつけて行けと言って去って行った。

それから一月後、伊達領地の武家屋敷に雪の晩に美しい娘が訪ねたきた。 

ちょうど領地の見回りから帰って来たこの屋敷の主の跡取り、蔵之介は娘を見るとあの日の森の中の出来事を思い出し笑顔で屋敷の中に向かい入れた。

蔵之介:
よかったお前が無事でいるか、あの日から思わなかったことは無い。
よかったら好きなだけずっとこの家にいてくれ。けしてお前に不自由はさせない。

数年後、二人の間に二人の子供が出来ていた。
その年の晩秋、蔵之介は父より来月南部との戦に出るとの話をされた。蔵之介は昔の嫌な思い出を引きずっており戦には出たくなかったが、殿からの命令をきかぬわけにはいかなかった。

その晩、蔵之介は妻に今度の戦の話と、6年前の初陣の話をした。
村を焼き討ちしたことを...

蔵之介:
ユキ、実は6年前、俺は南部軍との戦に初めて出陣した。初陣でたいして手柄も立てられなかった俺は殿か
ら南部軍の食糧の補給地の村を焼き討ちにするよう仰せつかった。殿からも無駄に村人を殺すことの無いようにと言われており、俺は出来る限り村人達を追い出したが、抵抗する者や逃げ遅れた年寄り達は見殺しにしてしまったあの日の死んでいった村人達の顔を俺は忘れられないんだ。戦とはいえ本当にすまないことをした...。

その話を静かに聞いてい妻であったが、話が終わると立ち上げり顔が青白くなり目にはメラメラと怒りの炎が現れ髪の毛を逆立たせた。
いつの間にか急に降り始めた雪が雨戸を破り吹き込んできた。屋敷の中はまるで吹雪の山の中のようになり屋敷の中の者たちは凍り付き凍死させられた。

ユキ:
はっきりと覚えているわ!私のおじいさんもおばあさんもあなた達の悪鬼のような振る舞いで無残に死んでいったのよ。 
私はあの日死ぬつもりで森の中に入って行ったの。そして森の中で昔からこの山に住む雪女に私の命と引
き換えに雪を操る術をとこの氷の体をもらったの。やっと村の仇をとれる日が来たのよ!
でも、蔵之介様、私にあなただけは殺せない...あなたを愛している、そして二人の子供たちを手にかけることなど出来るはずがない。
朝日が昇って来たわ、この本当の姿になった私は日の光を浴びれば溶けて消えてしまう。
あなたとも子供たちとももうお別れ。
でも、忘れないでねこの子達にあなたと同じような過ちを犯させるようなことがあったら、あなたも子供たちも私と一緒に地獄に連れ帰りますからね。

そう言うとユキは日の光の中、涙の蔵之介の前で霧のように消えて行った。

38面霊気

面霊気(めんれいき)は、鳥山石燕による妖怪画集「百器徒然袋」にあるお面の妖怪。石燕による解説文には「聖徳太子の時、秦の川勝が沢山の仮面を創った。まるで生きているように見えるのは、川勝の創った仮面であるからだろうと思った。」とある。

秦川勝(はたのかわかつ)は飛鳥時代の人物で、能・狂言の原型となった芸能・「申楽」の始祖であったと伝えられる。そのような、面をつかう芸能とゆかりのある秦川勝のつくった面がこの「面霊気」であろうかと石燕は述べている。神々をまつる六十六番の神楽(かぐら)に使うため、聖徳太子が秦河勝に六十六の面を作らせたことが、のちの申楽(猿楽)の元祖となったという伝説があり、この伝説を素材として石燕は能・狂言の面の妖怪として創作した妖怪である面霊気の解説文部分を執筆したと考えられている。
古くなったお面や優れた作品の面が魂を宿して妖怪化した存在。即ちお面の付喪神で、人気が無い夜に動き出したり、持ち主に大切に扱ってくれと頼んでくるとされている。

38面霊気 オリジナルストーリー

今夜はこの地区の納涼盆踊り大会。小学生の則之は父に連れられこのお祭の場所に来ていた。妹が風邪で熱を出してしまったため母と妹は家で留守番である。

則之:
母さんたちもお祭り楽しみにしてたのに来られなくて残念だな~。 よし、帰りに色々お土産買って行って
あげよう。

祭りの会場には色々な屋台が出ていて則之は父と一通り見て回った。すると父は知り合いに声をかけられ、則之にこの会場からは出るんじゃないぞと言って友人たちの宴会の輪に入って行った。
しかたないので則之は一人で屋台見物を続けていた、すると則之は一つの屋台の前で引き寄せられるように足を止めた。
そこはお面屋の屋台だった。

その中の一つのお面に則之の視線は釘付けになった。
定番の仮面ライダー、ウルトラマン、有名アニメキャラ、ゲームキャラのお面が並ぶ中、則之が見つめていたのは鬼の面だった。
最近流行っているゲームの中に出てくる適役ボスのお面、、、のような、でもどこか違っているような。則之は不思議な違和感を覚えた。 
店主が話しかけてきた。

店主:
ぼうや、君は見どころがあるね~だいたい普通の子はヒーローやアニメ人気キャラを選ぶのに、この鬼の面が気になるのかい。

則之:
ぼく、別に欲しいわけじゃないんだけど、なんだかとっても気になってしょうがないんだ。どうしてなんだろう?

店主:
それはきっとこのお面が君のことを呼んでるんだよ、めったにないことさ、気にいった、君には特別に半額の500円にしてあげるよ!

則之が我に返るとどうやらお金を払ったらしく鬼のお面を持っていた。屋台の店主はうすら笑いをしている。もしかしたら売れ残りを買わされたのかと則之は思った。

それから少し歩いてゆくと学校でいつも則之をからかってくる3人組が前からやって来た。則之が一人なのを見ると3人はここぞとばかりにからんできた。

悪ガキ:
おい、則之じゃねえか。お前一人ぼっちじゃつまんねんだろうから俺たちが一緒に遊んでやるよ。さあこっちに来いよ。

3人は則之を囲むと会場のすみの大きな木の下に連れてきた。則之は頭は良かったがどんくさいので3人には格好のいじめの的となっていた。

10分後則之は泥だらけになっていた。

悪ガキ:
ほんとお前はつまんねえ奴だな~、少しぐらい俺達に反抗してみろよ。

悔しくて則之が涙を流していると持っていたお面が心の中に語りかけてきた。

お面:
ぼうず、悔しいのか?悔しいのなら俺を顔にかぶれ、あいつらに負けない力が欲しいのだろう。 
「力が欲しいか 力が欲しければ...くれてやる!!!」
則之はお面に言われるがまま顔にかぶった、次の瞬間則之の体は大人ほどの大きさになり、その体でのタックルで3人組は吹き飛ばされた。そしてリーダーを片手で持ち上げた。

則之:
ふふふ、よくも僕をやりたいだけいじめてくれたな。いまの僕にはお前達じゃ歯が立たない。
二度といじめることが出来ないようにその腕を折ってやるよ。

悪ガキ:
則之ごめん、俺たちが悪かった!もう二度といじめないから助けてくれよ。 お願いだ~。

則之:
ダメだ絶対許さない。罰を受けるんだ。

その時木の陰から誰かが飛び出してきて、持っていた棒で則之のかぶっていたお面をはじき落した。 
お面をはじき落したのは屋台の店主だった。

店主:
すまないぼうや、どうやらこの鬼の面は妖怪「面霊気」になってしまっていたらしい。
このお祭り会場のいろんな人達の負の感情が呪いとなってこのお面が吸収し呪いの面「面霊気」になってしまったようだ。
本当にすまないことをした。このお面はおじさんが引き取るから。みんなが大けがする前にまにあって良かった。

悪ガキ3人組はあわてて逃げて行った。

則之は店主にお礼を言った後、少し酔っぱらった父親を迎えにゆき、一緒に母と妹のお土産を買って帰っていった。

店主:
ふふふ、あぶないところだった。相手に大けがでもさせたりしたらオレの正体を警察に調べられちまうからな。
それにしても弱い奴がオレが作った面をかぶると豹変するのは面白い2000年やっててもほんと飽きないわ。
さて今度はどんなお面を創ろうかね~。

屋台の明かりがお面屋のニヒルな笑い顔を照らしていた、地面に照らしだされたお面屋の影には腕が6本生えていた。

43瀬戸大将

瀬戸大将(せとたいしょう)は、鳥山石燕による妖怪画集『百器徒然袋』にある妖怪。さまざまな瀬戸物の寄せ集めの甲冑を身に着けたような姿で描かれている。

石燕による解説文には「曹孟徳にからつやきのからきめ見せし燗鍋(かんなべ)の寿亭侯にや蜀江のにしき手を着たり」などとあり、「三国志演義」などで知られる関羽(寿亭侯)と曹操(曹孟徳)についてを陶磁器(燗鍋、錦手)とからめながら見立てて引用をしており、瀬戸物と唐津物による陶磁器同士の争いとして描いた趣向であると考えられている。「百器徒然袋」に描かれている妖怪たちに共通する点であるが、実際に何らかの伝承が存在する妖怪ではない。

43瀬戸大将 オリジナルストーリー

時は江戸中期、この時代日本の食器の覇権を争い瀬戸物と唐津物が争っていた。愛知県から広まった瀬戸物は江戸で広く使われ、焼物として先に広まっていた唐津物を圧倒してきていた。

そしてここは源平合戦で有名な一の谷。瀬戸物の総大将・瀬戸大将と唐津物の総大将・唐津入道がそれぞれ陣営をひいていた。
瀬戸大将は一の谷の小高い山の上にいた。

配下:
さすがは大将。源平合戦の源義経のようにこの坂を下りて敵陣営を襲撃しようというのですな。拙者、感服いたしました!

大将:
バカかお前は?昔の戦で有名な話で本や芝居にもなっていることをやったら敵にバレて返り討ちにあうだろう。それに俺たちは陶磁器だこんな坂でコケたらもう粉々になっちまう。
俺にはそれよりももっと賢い方法で攻めてやるのさ。まあ見てろ。

瀬戸大将はほくそ笑んだ。

そしてこちらは唐津入道の陣営。

入道:
いいか者ども、芸のない瀬戸の奴らはこの坂を下ってくるに違いない、我々わざと逃げるフリをして奥まで誘い込み両側から挟み撃ちにするのじゃ。あわてる瀬戸大将の顔が目に浮かぶわ。ハハハハ~。

そうこうしていると山の上から時の声が上がった、唐津軍が身構えていると坂を下って来たのは瀬戸の軍勢ではなく大きな丸い岩だった。大きな岩が何個も何個も唐津軍に落ちてきた。
大岩にあたり粉々になる食器の兵たち、なんとか避けたが混乱している唐津軍に真横から瀬戸大将を先頭に瀬戸軍が突っ込んできた。
この日に為に瀬戸軍の先陣隊は朱色の釉薬で揃えた赤備えである。瀬戸物独特な色合いの食器たちは唐津物を圧倒し、唐津軍はちりじりになって逃げて行った。

数日後、ここは香川県屋島の夕暮れの浜辺。
昼間の一進一退の戦いの後、今度は唐津軍が源平合戦になぞり海に一隻の船を出してきて扇の形の皿を棒の先に上げてきた。

入道:
フフフ、これは源平合戦の扇の再現じゃ。ただしこの扇型の皿は1400度で焼き上げた物、ちょっとした弓矢では射貫くことなどできはしない。さあどうする瀬戸大将!

これに対し瀬戸大将は特別な対抗手段を持っていた。南蛮渡来の強化セラミックのボールと、100年に一度と言われる瀬戸軍一の肩を持つ武将・大谷の投球である。

夕日が落ちかける海岸に大谷は立ち、セラミックのボールを持った右手を力いっぱい振りぬいた。
160キロのボールは真っすぐに扇の皿に当たり見事粉々に飛び散った!
これを見た瀬戸軍は勝どきを上げ、唐津軍はため息をついて撤退していった。

そしてその数日後の壇ノ浦。
いよいよ唐津軍は瀬戸軍に追い詰められていた。しかしここは海の上、両軍とも船から落ちたら沈んでしまうのでこうちゃく状態が続いていた。

大将:
意気地のないない武将どもだ、俺が戦というものを教えてやる見ていろ!

と言うと自分の船から唐津軍の船に飛び乗った!

配下:
すごい度胸だ敵の船に飛び乗り唐津軍を海に叩き落しまた次の船に、そしてまた次の船に、まるで義経の八
艘飛びだ!    ...あ、海に落ちた。

しかし瀬戸大将の頭は徳利でできている!頭が浮き輪代わりになって沈まない。這い上がってはまた唐津軍の船を飛び回った。 

勝敗は決した! しかしここは人間とは違う無駄な争いはしない。

完敗を悟った唐津入道は九州に逃げて行った。そして瀬戸大将も決してそれを追撃することはなかった。
こうして瀬戸物が日本の食器の主役となった。
しかし運命とは皮肉なもの、後に九州の有田焼が有名になり日本の食器主役の座は奪われることとなるのである。

46雨降り小僧

雨降り小僧とは、鳥山石燕の妖怪画集「今昔画図続百鬼」にある妖怪。この画集では、中骨を抜いた和傘を頭に被り、提灯を持った姿で描かれている。

中国の雨の神である「雨師(うし)」に仕える侍童(じどう)であることが述べられている。雨師(うし)が貴人の尊称である大人(うし)に、侍童(じどう)は児童(じどう)に通じることから、「大人に奉公する子供」との言葉遊びで描かれた妖怪といった解釈もある。
江戸時代の御伽草子の黄表紙(きびょうし)では、黄表紙の人気キャラクターである豆腐小僧と同様、小間使いの役目をする妖怪として登場している。

46雨降り小僧 オリジナルストーリー

ここはどこかの森の中、子狐は考えていた。

子狐:
もうすぐ姉さまの嫁入りなのだけど、なにかサプライズをし姉さまに喜んでもらいたいよな~。
やっぱり、きつねの嫁入りといったら天気雨だよな~

こうして子狐は山に住んでると長老に教わった雨に師匠の師と書いて雨師(うし)に雨を降らせるお願いに険しい山を登り雨師の社にたどり着いた。

子狐:
すいません、すいません、雨師様いらっしゃいませんか?ふもとの森からお願いに参りました。

社はシーンとしている。

子狐:
すいません、どなたかいませんか?

扉が開き中から柄のない傘をかぶって提灯を持った小僧が出てきた。扉の中はとても暗くなぜか雨が降っているようだった。

子狐:
すいません、雨師様はおいでではないですか、雨を降らせて欲しいのです。

小僧:
あ、すいません。お師匠様は今バカンスで沖縄に旅行中なんです。
あ、しまったお師匠から大事な天気使いの集まりがあるって言えって言われてたんだっけ。

子狐:
え、そ、そうですか。じゃあ小僧さんあなたにお願いします。
僕の姉さまの嫁入りの日に雨を降らせて欲しいのですお願いできませんか?

小僧:
なんで~。結婚式なら晴れてた方がいいでしょう?なんでわざわざ雨降らせなきゃいけないですか?

子狐:
僕もよくわからないけど、狐の嫁入りといったら天気雨なんですよ。すごい雨師様のお弟子様ならすこしぐらいの小雨を降らせるくらい簡単でしょう?

小僧:
ま、まあオイラくらいになれば出来ないことはないけど…。
お師匠様のように祈るだけで雨を降らせる腕はないから、空の神様へのささげものが必要です。

子狐:
それはなんですか?僕で用意できるものであれば必ず用意いたします。教えてください。

小僧:
ささげものは10年生きてる鯉です、鯉は滝を登ると竜になると言われるように、雨を降らせるには欠かせない生き物なのです。出来るだけ大きな鯉を用意してください。

子狐はわかりましたと告げると社をあとにした。そして2日かけて川から10年以上は生きていると思われる大きな鯉を捕まえて社に戻って来た。

子狐:
小僧様、お約束の通り10年生きている大きな鯉をお持ちしました。どうか雨を降らせてください。

小僧:
ホントだ!これは本当に大きな鯉だ!おいしそう...いやいや、きっとあなたの願いは叶えられるであろうしばらくここで待っていなさい、オイラは祭壇の準備をするから。

小僧は子狐から鯛をあずかり奥の部屋に下がっていった、最初は師匠である雨師から教わった雨乞いの祭壇を作ろうと考えていた小僧であったが、どうにもこの大きな鯉がおいしそうでたまらない、とうとう小僧は鯉を生のまま頭からかぶりついた!

しばらく子狐は待っていたが、なんの返事もない、というか何かをペチャペチャ食べている音がする、子狐そ~っと奥の部屋をのぞいてみると、さっきの小僧が満足そうに魚の骨をなめている。

子狐:
なんてことを!僕が2日がかりで捕まえてきた神様のささげものを~!もおゆるさないぞ!! そう言うと子狐は小僧のお尻に噛みついた!

小僧はビックリしたのとお尻が痛いので大声で泣きだした。子狐もビックリして小僧から飛びのいた。すると急にそれから雨が降り始めた。
こうして、晴れているのに雨が降り無事、子狐の姉の狐の嫁入りを行うことができたのであった。
めでたしめでたし、......

といいたいところですが、なんと降りだした雨が止まらない、3日も4日も降り続いている。小僧の涙が止まらないからであった。森の動物たちも里の村人も困りはてていた。

そこへ、沖縄からかりゆしウェアで小麦色に焼けた雨師が帰ってきた。
雨師は笑顔で泣いている小僧の頭をなでて言った。

雨師:
ただいま 

小僧は笑顔になり、雨は止んだ。空には大きな虹が出ていた、その虹を鯉から変化した竜が昇っていきました。

54隠れ里

隠れ里(かくれざと)とは日本の民話、伝説にみられる一種の仙郷で、山奥や洞窟を抜けた先などにあると考えられた。「隠れ世」などの呼称もある。

猟師が深い山中に迷い込み、偶然たどり着いたとか、山中で機織りや米をつく音が聞こえた、川上から箸や
お椀が流れ着いたなどという話が見られる。外部からの訪問者は親切な歓待を受けて心地よい日々を過ごすが、もう一度訪ねようと思っても、二度と訪ねることはできないとされる。
隠れ里は何の憂いもなく平和な世界であり、しかも人間の世界とは違う時の流れがある。普通の人はそこに行けないが、善良な者にはその世界を垣間見る機会が与えられることがある。いずれにせよ庶民の求める理想郷への思いが込められている。

54隠れ里 オリジナルストーリー

ここは岩手の山の中、猟師の長治郎は鹿を追って山の奥深くに来ていた。
鹿は森の奥の岩場の所に長治郎に追いつめれ、こちらを見つめていた。
長治郎が弓に矢をつがえ鹿に向け矢を放とうとした時横から別の鹿が飛び出してきて長治郎に体当たりをした。鹿に不意を突かれた長治郎は鹿とともに谷底に落ちていった。

どれくらいたったであろう?長治郎は女の声に呼ばれ目を覚ました。

霧:
大丈夫ですか?しっかりしてください大丈夫ですか?

長治郎:
はい、大丈夫です。 あなたは?  

霧:
私は霧と申します。とりあえず左足をケガしてらっしゃるようです、一緒にこの先の私の里にまいりましょう、手当しないと。

こうして長治郎は霧と山の中の里に行き、足の手当てをした。里の人々はあたたかく長治郎を迎えてくれ、薬や食べ物を持って来てくれた。

長治郎:
霧さん本当にありがとう。あのまま倒れていたら私は死んでいたかもしれない、あなたに命を救われた思いだ。
...ところで霧さん、変なことを一つ聞いていいか?実はあなたが余りにも10年前に亡くなった妻にそっくりなんだ。

霧:
あら、そんなに似ていますか? 世の中には似ている人が二人いるって言いますから、私はそのうちの一人なんでしょうか、フフフ。

一月が過ぎ長治郎の足も治ったが、この里の居ごごちも良く、そして何より霧と一緒にいることに幸せを感じこのままこの里で暮らすことにしていた。

そして数年が過ぎた。

ある日の夕方、長次郎は里の長老からけして入ってはならないと言われていた蔵に興味本位で入ってしまった。そして蔵の中の棚のある本が目に入った。
それは10年前のある村が戦乱に巻き込まれた事、そしてその村に住む菊という女が夫をかばい矢を受け亡くなったこと...。
そしてこの里に蘇ったことが書かれていた。

霧:
見てしまったのですね。そう私はあなたの妻の菊です。
知られてしまってはしょうがない、もうお別れです。これは里を守るためのおきてなのです。長次郎さん、わずかな時間でしたが私は幸せでした。これで私も悔いなく本当のあちらの世界に行くことが出来ます。
ありがとう。

そう言うと霧は鈴を三度鳴らし、長治郎に持たせた。
長治郎は鈴の音を聞きながら気を失った......

長治郎が気が付くと谷底の滝の近くに倒れていた。
そして、すぐ横には長治郎と一緒に落ちたと思った鹿が立っていた。長治郎が立ち上がると、ついてこいというように首を横に振った。長治郎は鹿にいざなわれるまま山の出口まで来た。 

長治郎:
ありがとう。

ふりかえったがもうあの鹿の姿は消えていた。長治郎の右手には鈴が握りしめられていた。

58金魚の幽霊

金魚の幽霊(きんぎょのゆうれい)は江戸時代の戯作者・山東京伝(さんとうきょうでん)による小説「梅花氷裂(ばいかひょうれつ)」にある妖怪または幽霊。名称は妖怪漫画家水木しげるの著書によるものである。

その昔、信濃国でのこと。藻之花(ものはな)という女性が、ある家に妾に迎え入れられたが、その家の正妻が隣人にそそのかされ、藻之花を飼っていた金魚の鉢に頭を突っ込んで殺してしまった。
その金魚鉢にいた金魚に藻之花の怨念が憑いて怨みを晴らし、正妻もまた怨念によって金魚のような姿に成
り果てたという。

58金魚の幽霊 オリジナルストーリー

昔、信濃の国に文太という男がおった。文太は代々続く長者の跡取り息子でお梅という妻がいたが、それとは別にモエという妾もかこっていた。
はじめは特に喧嘩もなく三人仲良くやっていたが、この半年文太がモエのところに入りびたりになってしまい、お梅もさすがに堪忍袋の緒が切れてモエのところに出向いて行った。

最初はお互い冷静をよそおい話していたが、ちょっとした言い方で喧嘩になり冷静さを失ったお梅はモエが飼っていた金魚の鉢にモエの頭を突っ込んで抑え込み、殺した。

冷静さを取り戻し家に帰って来たお梅は、何事もなかったかのように振る舞い夜床に就いた、しかしさすがに寝付けない。

すると真夜中に目を閉じて必死に寝ようとするお梅のほほをたたくものがあった。
それは金魚の形をしているが顔がモエそっくりな魚のようなモノが宙を浮いていて、ペチペチお梅のほほをたたいていたのだった。

モエ:
よくもウチを殺してくれたな~絶対にゆるしませんよ

お梅:
ひ~なんだい、私を呪い殺しに来たのかい? 金魚のアンタなんかに殺されてたまるかい!

お梅は近くにあった棒を振り回し金魚のモエを追いかけて家から飛び出した。すると棒を振り回した拍子によろめいて転び、頭を庭の岩にぶつけて死んでしまった。

モエ:
ざまぁ見なさい、ウチを殺した罰よ。

そう言ってモエが見ていると倒れているお梅の頭から流れる血を飼い猫の玉が舐めた。
すると猫の玉は目の色が変わり立ち上げって宙に浮いているモエの金魚に飛びかかってきた!

お梅:
ニャー よくも私を殺したはね。今度は私の番よ覚悟しいや~! 

そう言って金魚に爪の一撃を食らわせた!金魚はフラフラと落ちてきて犬小屋の前に落ちてきた。犬小屋のポチが金魚に鼻をくっつけてクンクン匂いを嗅いだ。すると今度はポチの目の色が変わり唸り声をあげて猫
に飛びかかってきた!

三日後、なんやかんやあってモエとお梅はオオカミと熊になっていた。

お梅:
アンタなかなかやるな~。こんな関係になっていなければ親友になれていたかもしれないね~。

モエ:
アンタこそ。敵ながらあっぱれやわ。
チョット待って、そもそもウチらがこんなことになったのは文太のせいじゃないのかい?

お梅:
だったら、私たちの敵は文太よ!この恨みはらさでおくものか~!

こうしてオオカミと熊は文太の寝所を襲った。

文太:
お、お前たちお梅とモエなのか?許してくれ、俺が悪かった~あぁ~~。

女中:
ほんと、旦那様も奥様もモエさんもどこ行っちゃったのかしらね~。
まあいいわ、さて金魚に餌でもあげましょ。

文太:
う、う~夢だったのか?本当にやな夢だった。
ん、なんだ俺の身体?まるでイトミミズじゃねえか!え、まさか!やめろ落とさないでくれ~。

モエの飼っていた残った金魚は大きく口を開け餌を吞み込んだ。

59清姫

平安時代の伝説、安珍・清姫(あんちん・きよひめ)の物語。

その物語は奥州の若い僧、安珍が熊野詣の途中で役人の家に一夜の宿を乞うたことに始まります。僧の見目麗しさに恋心を抱いたその家の娘、清姫はしつこく安珍に迫り、困り果てた安珍は「熊野詣での帰りにまた立ち寄る」と告げその場を切り抜けると、参拝後清姫に会わずに帰ってしまいました。
なかなか帰らない安珍の裏切りに気付いた清姫は、血相を変え、着物や草鞋を脱ぎ捨てながら安珍を追いかけます。
ついに人から大蛇へと姿を変え安珍にあと一歩まで迫ったところで、安珍は道成寺(どうじょうじ)に逃げ込み釣鐘の中に匿(かくまわ)われます。しかし清姫もすぐに追いつき、釣鐘に巻き付くと炎を吐いて安珍を黒焦げにして殺し、自身も川へと身を投げて死んでしまいました。
今も歌舞伎や能楽、人形浄瑠璃で「道成寺物」として演じられる物語です。

59清姫 オリジナルストーリー

時は大正中期、日本は海外列強の軍隊に追いつけ追い越せとばかりに、兵器とともに外国人に負けない人体改造の研究を進めていた。そしてここは帝都東京のとある科学研究施設。

博士:
安高君、ついに私が研究を進めていた薬がいよいよ最終段階に入ったぞ!この薬が成功すればまさに我が帝国陸軍は無敵だ!

安高:
博士やりましたね。二人で南米で見つけた特殊な蛇の再生能力を人体にも取り入れられれば、どんな傷でも
すぐに再生し戦場に復帰できる無敵の兵士になるでしょう!

博士:
そうだ。現在の最後の壁の薬の副作用さえ克服し、人体実験ができれば完成だ!
それはそうと安高君、例の話、決心はついたかね。ドイツ軍との共同研究、不死身の軍隊・ラストバタリオン計画への特別研究員としての参加だ。もしこれが叶えば我が研究所としても鼻が高い。
ただ気がかりなのは私の一人娘・清のことだ、たぶんドイツから20年は帰ってこれまい。

安高:
博士、これは日本帝国陸軍の為です。僕の感情などお国の為に捨てましょう。
清さんには僕が話します博士心配しないでください。

博士:
安高君、すまん。君と清が将来の約束を誓い合った中だと知っていながら...
本当にすまん。

安高は博士の娘・清にドイツに渡ること、そして清の思いを諦めさせる為、それはドイツの貴族の娘と結婚するためだと話した。

清は3日間自分の部屋で泣いて過ごした。そして4日目の朝。

清:
ひどいは安高さん、それにお父様も私の気持ちは知っていたくせに。こうなったら2人が研究している薬を飲んで死んでやるわ!

清は研究所に忍び込み研究途中の薬を飲み込んだ!

清:
あ~熱い体が燃えるよう、安高さんお父様さようなら

しかし清は死ななかった、清の身体の半分は蛇のようになり、精神も崩壊し、残った最後の感情で地面を這いまわりながら安高を探し始めた。

博士:
安高君さあ早く、この緊急避難カプセルに。これは全て私の責任だ。娘は私がけりを付ける。

博士は無理やり安高をカプセルに入れると、軍隊にもらった護身用の銃で化け物と化した清を何度も撃った
しかし、清は撃たれた傷がすぐに塞がり博士に鋭い牙でかみついた。博士は一撃で絶命し、清はそのまま安高の入ったカプセルを蛇の身体でぐるぐると取り巻いた。

清:
許さんぞ安高~私をおいて他の女のところなど行かせるものか~。この入れ物ごと絞め殺してやる~。

清は凄い力でカプセルを絞めつけたがびくともしない。今度は清は怒りと体内変化で身体に火がついた。カプセルを取り巻いたまま炎は天井まで立ち上り、研究所は火の海と化し施設のほぼすべてが灰と化した。

しかし、安高の入ったカプセルだけは燃えずに残っていた。中から安高が出てきた。

安高:
清、すまなかった。...しかしおかげで貴重な実験結果を得ることが出来た。
お前の命、無駄にはしないぞ!

後日安高を乗せた船はドイツに向けて出港した。

65くだん

件(くだん)は、19世紀前半ごろから日本各地で知られる予言獣(妖怪)。「件」の文字通り、半人半牛の姿をした妖怪として知られている。

人間の顔に牛の体を持つ件が、天保7年(1836年)、京都府宮津市の倉梯山に出現したと触れまわる当時の
瓦版が現存する。この件は、その先数年連続で豊作が続くと予言し、また、その絵図を張り置けば家内は繁盛し、厄も避けられると教示したという。
さらに幕末の錦絵「件獣之写真(くだんじゅうのしゃしん)」に、牛の子として生まれ、予言を残して三日で死ぬと書かれている。明治時代に現れた時には日露戦争を予言し、昭和の太平洋戦争時には終戦を予言したという。
世情が不安定になると、顔を出す妖怪なのである。

65くだん オリジナルストーリー

江戸時代の末期のこと、ここは江戸に近いとある村。飼っている牛が出産するというので大吾は急いで家に帰る途中だった。

大吾:
町にいってすっかり遅くなってしまった。うちの牛のさくら元気な子供もう生まれちまったかな~、さくら
も元気でいてくれるといいけどな~。

大吾が自宅に着くと父親が青ざめた青をして牛小屋から出てきた。

大吾:
父ちゃんどうした?何かあったか?まさか子牛ダメだったのか?

父親は何も言わずただ首を横に振った。大吾は急いで牛小屋に飛び込んだ。

母牛のさくらは元気に鳴いていた。しかし、さくらが生んだ子牛が普通ではなかった。
子牛の身体は普通の牛であったがその顔はまるで人間のものであった!

大吾:
なんてことだ!どうして人の顔の牛が生まれるんだ?...いや、村の長老に昔そんな牛が生まれたって話を聞いた気がする。

くだん:
そんなに騒ぐな、俺だって好きでこんな姿で生まれてくるわけじゃないんだ。俺は「くだん」、少し先におこる分かる化け物さ。

大吾:
え、お前生まれたばかりなのにしゃべることが出来るのか!しかも、先におこることが分かるって村の祈祷師の婆さんみたいだな。

くだん:
俺は化け物だ、言葉は誰かに教えてもらうわけじゃねえ。それに俺の予言はあいまいじゃない細かく言ったことすべて当たっている。実は俺が今日生まれて来たのには訳がある、今日から3日間1日ひとつづつ予言を言っていくちゃんと聞くんだぞ。今晩、晩飯にうさぎ汁が出る。しかも出るのは茶色のうさぎの肉を使った鍋だ。楽しみにしていろ。

次の朝大吾は大慌てで牛小屋にやってきた。

大吾:
おいくだん!お前の言った通りだった。晩飯にうさぎ汁が出た、しかも父ちゃんは白うさぎを使おうとしたら、山から狼がやってきて白い方をさらっていったんだ!それでもう一羽の茶色になったんだ!なんでお前はそこまでわかったんだ!

くだん:
ふっ、俺は適当に言っている訳じゃない、先のことが見えるからそれを伝えているんだ。まあ今回はノストラダムスの話と同じ様だったがな、...あぁこれはこっちの話。
さあ、じゃあ次の予言を言うぞ。明日夕方虹が出るしかも雨も降ってもいないのにだ。そして烏もスズメも全ての鳥の鳴き声が聞こえなくなる。

次の日たしかに夕方西の空に虹が出ていた!東ではなく西に!そして大吾が耳を澄ませると朝には鳴いていた鳥の声は一切なく近くの森も静まり返っていた。

くだん:
どうだった、俺の言った通りになったろう。では3つ目の予言を言うぞ、
今夜10月2日亥の刻の頃大きな地震が来る!誰も経験したことのないような大きなやつだ!
俺はこれをお前達に伝えるために生まれて来たんだ!前の2つはこれを信じさせるためのお前に伝えたにす
ぎん。さあ大吾村のみんなに伝えろ、夜になったらみんな家の火を消して山のふもとの神社に集めるんだ!一人でも犠牲者が少なくなるようにな!

このくだんの話を聞き大吾は夜、戌の刻今の8時から村の1件1件をまわり「野党がこの村を襲うから神社に逃げろ」と言って回った。
こうして村人達のほとんどが神社に集まった、しかし声掛けをした大吾がいない。村人達も大吾が嘘をついたのかと騒ぎ始めた。 

時は亥の刻、10時になった。

その時だった誰も経験したことのない立っていられないほどの大きな地震が起こった! 村人みんなは地に伏せ頭を抱えた。

大吾はいったい?
大吾はまだ村にいた!大吾は寝たきりの近所のお婆さんを避難させるため説得して負ぶって家を出ようとし
たが、家が倒れて玄関がふさがってしまっていたのだ。
そこに、くだんが牛小屋から抜け出しやってきた。くだんは小さい体をぶつけて玄関をふさいでいた柱をどかしてくれた。
くだんは血まみれになっていた。

大吾:
くだん!お前オラがここで身動きが取れなくなっているのもわかっていて助けに来てくれたのか!
ありがとう、くだん!死なないでくれ~。

くだん:
よかった二人とも大丈夫だな。気にするな、俺は予言をすると3日の命なのだ。どうせなら人助けでもしないと、俺を信じてくれた大吾のためにもな。

そう言うとくだんはこと切れた。

大吾がお婆さんを連れて高台の神社についた時、遠くの江戸の町が真っ赤に燃え上がっていた...。 
大吾の活躍でこの村からは一人の死亡者も出なかったのである。
後にこの大地震は「安政の大地震」と呼ばれることとなる。

71不知火

不知火(しらぬい)は、九州に伝わる怪火の一種。旧暦7月の晦日の風の弱い新月の夜などに、八代海や有明海に現れるという。千灯籠(せんとうろう)、竜灯(りゅうとう)とも呼ばれる。

海岸から数キロメートルの沖に、始めは一つか二つ、「親火」と呼ばれる火が出現する。それが左右に分かれて数を増やしていき、最終的には数百から数千もの火が横並びに並ぶ。その距離は4〜8キロメートルにも及ぶという。かつては龍神の灯火といわれ、付近の漁村では不知火の見える日に漁に出ることを禁じていた。

71不知火 オリジナルストーリー

夜の有明の海に小舟が出ていた。先月父を海難事故で亡くした幼い守は夜の海で泣いていた。

守:
父ちゃん何で死んじゃったんだよ~。3年前に母ちゃんも病気で亡くなって、もう僕は独りぼっちになっちゃったじゃないか。

叔父さん:
守、お前ひとりじゃ生きていけない。叔父さんと一緒に博多の街に行こう。うちの進もお前のことを兄のようにしたっているじゃないか。どうだ?

守:
叔父さん。オレ父ちゃんと約束したんだ!この有明の海で先祖代々漁師をしてきたウチの仕事を引き継いで、この海で一番の漁師になるんだ。

叔父さん:
守、お前の気持ちはわかるが、幼いお前ではまだまだぜんぜん無理だ。まだ船だってまともに操れまい。わがまま言わず叔父さんと一緒に暮らそう。

守:
いやだ!叔父さんなんかオレの気持ちわからないんだ!大っ嫌いだ~          

叔父さん:
守!! 

守は家を飛び出し、海岸の小舟に乗り力一杯 櫂を漕ぎ海に出たが、そのうち力尽きて小舟の上で寝てしまった。
目が覚めるとあたりは月もなく真っ暗になっていた。父と一緒に海に出たことはあったが、一人で出たことは無くましてや夜の海なんてまったく経験の無いことだった。

守:
叔父さんと喧嘩して船に乗り込んだのはいいけど、ここはどこだろう?もう何処に向かって進めば戻れるのかわからない、どうしよう...。

亀:
どうした少年。 家に帰れないのか? 海で迷子になったのか?

小舟の横に大きな海亀が現れた。

守:
わぁ!オレ夢見てるのか?亀がしゃべった!バ、バケモノ?オレを食べないでくれよ。

亀:
おいおい、亀は人食ったりしないよ。ワシはもう三百歳の老亀だからしゃべることが出来るようになったんじゃ。

守:
え、もしかしてオレを竜宮城に連れていくのか?

亀:
お前がそれを望んでいるならそれも出来るが、お前はそれを望んでいるのか?  

守:
いや、オレは竜宮城なんて生きたくない。オレはこの海で一番の漁師になりたいんだ!
...でも、今は家に帰りたいんだよ。

亀:
そうか、そうか、それじゃ特別にお前を港までたどり着けるように海に道しるべの灯りを照らしてやろう。
何の灯りか誰も知らない不知火って言うんだ。

そう言うと亀は口からフ~と霧のような煙を吐いた。するとその煙が進む方向の海の上に炎が点々と灯りは
じめた。そして見えないくらい先まで炎は続いていった。

亀:
さあ、少年この灯りをたどっていけば家に帰れるぞ、達者でな。そうそう炎たちにも感謝するんだぞ。

そう言うと亀は海の中に潜っていった。守はゆっくり櫂を漕ぎ炎にそって進んで行った。

しばらく進むと守は炎の後ろに人影があるのに気が付いた。

守:
あ、あそこにいるのは猛んちのじいちゃん、こっちは剛のじいちゃん、あっ…あそこにいるのは、
じ、じいちゃん!オレのじいちゃんだ!

守の祖父はニコニコ笑って守を見ている、そしてすこし先の炎を指さした。

守:
え、何っじいちゃん......  と、父ちゃん!!!

守が見つめる先の炎には守の父が立っていた。

守:
父ちゃん、父ちゃん!

父:
守、すまない。お前をのこして逝ってしまって。
守、父ちゃんとの約束はこの有明の海じゃなくても出来る。叔父さんはいい人だ、どうか幸せになってくれ。

守:
と、父ちゃん......    

やっと港が見えた。
松明を持ってたくさんの人達が守が戻ってきたの歓喜で出迎えてくれた。
灯りに照れされた叔父さんは涙を流して精一杯手を振っていた。

80狸囃子

狸囃子は江戸時代の本所(東京都墨田区)を舞台とした本所七不思議と呼ばれる奇談・怪談の1つに数えら
れている。

お囃子の音がどこから聞こえてくるので音の方向へ散策に出ても、音は逃げるように遠ざかっていき、音の主は絶対に分からない。音を追っているうちに夜が明けると、見たこともない場所にいることに気付くという。
その名の通りタヌキの仕業ともいわれ、音の聞こえたあたりでタヌキの捜索を行っても、タヌキのいた形跡は発見できなかったという。
千葉県木更津市の證誠寺(しょうじょうじ)にも狸囃子の伝説があり、「分福茶釜」「八百八狸物語」と並んで「日本三大狸伝説」の1つに数えられ、童謡「証城寺の狸囃子」の題材となったことでも知られてる。

80狸囃子 オリジナルストーリー

年の瀬も迫る、江戸のとある小さなお寺、住職と小坊主が悩んでいた。

坊主:
和尚様、困りましたね~。うちの寺元々檀家さん少ないのに、このところさらに減ってしまって厳しいですね~。

住職:
このままだと年を越すのもかなり大変だ。しかもこのところ近くの森の狸たちがきて、寺のお供え物だのいろんなものを荒らしまわっている。しかも、夜になるとあいつら腹づつみを叩いて庭で宴会をしているんだ。困ったもんだなあ、どうにかならんかな?

坊主:
和尚様、私いいこと思いついちゃいました!
和尚様って太鼓の名人じゃないですか。そこで狸たちの腹づつみと和尚様の太鼓で対決を持ち掛けるんですよ。宴会好きの狸たちは断るはずありませんから受けて立つでしょう。そこで町の人達にこの太鼓合戦を宣伝して観客を呼ぶんです。そして入場料代わりにお布施を頂くんですよ!

住職:
お前すごいな!スーパープロデューサーか?よし、早速今晩狸たちに申し込んでみよう!

そうして夜となり、寺の庭にまた狸たちが集まって宴会が始まった。
遠くから見ていた住職はこの機を逃さんと狸たちの輪の中に飛び込んだ!

住職:
た、狸ども!ワ、ワシはこの寺の住職だ! お、お前たち、毎晩毎晩うちの寺の庭で大騒ぎしおって、ゆ、許さんぞ~。

狸:
あ~。この寺のへなちょこ坊主か、この寺には小坊主とこの老いぼれの二人だけ全然怖くない!
俺たちは今まで通り楽しくやらせてもらうぜ~。へへへへ。

住職:
あぁ、さすがにお前たちほどの数を相手にしてはワシ達ではかなわない!
そこで、どうだお前たちも得意な太鼓で勝負というのは?ワシも太鼓なら多少の自信がある。

狸:
へ~面白そうじゃないか!俺たちは毎晩毎晩腹づつみを叩いて鍛えてるんだ、よ~しいいだろう受けて立ってやる!それじゃいつやる、今からでもいいぞ。

住職:
いやいやワシも太鼓とかの準備もある、どうだ大晦日の晩、日が沈んだらこの庭でってことで。腹づつみに自信があるお前たちならいつであろうと関係なかろう。

狸:
よーしわかった。よし大晦日の晩、日が沈んだらだな。じゃあその日まで坊主が練習出来るように、ここでの宴会はしないでやるよ。ありがたく思え。ハハハハハ。

狸たちは宴会を終わりにして森に帰って行った。 

坊主:
やりましたね和尚様。よ~し、それでは私は段取り通り町の人達にこの太鼓合戦のことを沢山知らせてきます。そして和尚様は狸たちに負けないように太鼓の訓練してください。

こうして小坊主は太鼓合戦のお知らせを町中に貼り出し、噂をいろんな人にふれ回った。住職はかつて太鼓の達人と言われた昔を思い出し必死に太鼓の練習をした。

そして今日は大晦日、日も沈んで狸たちもぞろぞろと寺の庭に集まってきた。住職も寺の大太鼓を庭に出しはちまきにたすき掛けで狸たちを出迎えた。

狸:
おぉ坊主逃げずにいたか。いい度胸だ、さあ勝負だ!

住職:
待っておったぞ、この日のためワシも若かりし日の様に太鼓の腕を磨いてきたわい、いざ勝負!

こうして狸と住職の太鼓合戦が始まった!
狸たちはお腹を膨らませポンポンとリズミカルにお囃子を奏でている。
対して住職はいつもの住職とは思えない雄々しい姿で巧みバチさばきで大太鼓を叩いている。

町の人達も噂が本当かと寺の外に集まってきていたが寺の中から聞こえる太鼓の音にいてもたってもいられ
ず、入り口のお布施箱にお金を入れてどんどん入ってきた。
お囃子に集中している狸たちは町人達が入ってきたのに気がつかない。そして入ってきた人たちは狸たちと住職の太鼓の響きに熱狂し思わず踊り始めた。

狸:
坊主お前やるな!俺たちがこんなに熱くなるのは久しぶりだ!

住職:
狸、お前たちもな。ワシも若いころの様に血がたぎるぞ!

こうして狸と住職の太鼓合戦は長時間続き、このまま朝まで決着つかずで続くかと思われた、…その時!

ボ~~ン、ボ~~ン。   除夜の鐘、小僧が寺の鐘を突き始めたのである。

狸:
うわ~~っ!やめてくれ~!俺たちその寺の鐘は苦手なんだ。勘弁してくれ~~。  

狸たちはクモの子を散らすように森に逃げて行った。

坊主:
知らなかった、狸たちこの寺の鐘が苦手だったんだ。和尚様、和尚様勝負は終わりました。正気に戻ってください。

住職:
はっ、狸たちはどうした? 何、寺の鐘で逃げ帰ったと。悪いことをした、残念じゃ決着を付けたかった。

こうして町の人達のおかげで年越しのお金もでき、久しぶりに沢山の人達が年越しの除夜の鐘をついてくれた。住職も小坊主もにこにこして町の人達が帰るのを見送った。

住職:
いい年越しになった。来年もいい年になるといいな~。
狸たちこれに懲りず、またこの寺でお囃子してくれないものかな~。

81ダキ

ダキは佐賀県の東唐津にある加唐島(かからしま)に出現するといわれている妖怪。
この島に船をつける際は「碇を下ろすだけで船をつなぎとめる艫綱(ともづな)はつけてはならない」と戒められており、その理由は次の様ないわれがある為である。

ある時、漁師の親子の三人連れが海岸に上がって火を焚いていると、何処からともなく現れた見知らぬ女が「魚をくれ」といって近づいて来た。女の様子にただならぬものを感じた父親は船にはない魚を子供たちに取りに行かすと、子供が「ない」といって戻って来た、「そんなはずはない」といって自分も子供たちと一緒に探す振りをして船に乗り込むが早いか、艫綱も碇綱も切って沖に逃げ去ると、女は「ええい、命を取り損ねた」と悔しがったという。

81ダキ オリジナルストーリー

佐賀の夕闇の迫る海岸。漁師の親子が今日も仕事を終え港に帰ってきた。

父親:
おい、一平いつものように船の縄は桟橋に縛り付けるなよ。

一平:
親父に聞こう聞こうと思っていたんだけど、なんで縛り付けちゃダメなんだい?船を波に持っていかれる心配無くなるのに。

親父:
俺の爺さんの頃からの言い伝えなんだ、こんな満月なのに霧が出てよく前が見えない晩にはダキと言う化け物が
...で、出る...って...。

一平と親父は船着き場の奥の方に目が釘付けになった明らかにただならぬ雰囲気をまとった7尺はあろうかと思われる髪の毛を斬バラにした女が近づいてくる。

親父:
一平!まずいぞ、爺さんが言ってた奴が現れたのかもしれねえ!一平、逃げる準備しろ!!

こう言い終わるのが早いかどうかのうちに、その髪を振乱した大女は二人のすぐ目の前まで来ていた。

ダキ:
おい、お前たち。魚を取って来たのか?だったらオレに魚をくれ!デカい魚をくれ!早く持ってこい!

親父:
ま、待ってくれ。いまここにはねえんだ。息子に取って来させるから。
一平、今日捕った大きな鯛を持ってこい。ほら、さっさと行け!

親父は一平に目配せした。一平の記憶では今日は鯛は一匹も捕れていないはずだこれは合図なのだと。

一平:
お、親父。すまない今日捕れた鯛見当たらないんだ。一緒に探してくれよ。

親父:
な、なんだと。見つからないのか、な、情けないな~ど、どれ俺も探してやるよ、待ってろ。

ダキ:
お前たち、早くしろ、オレは腹がペコペコなんだ、早く持って来ないと...代わりにお前たちを
...いやいや、早く持ってこい!

親父は一平の所に走って行き、ダキがまだ離れているのを確認すると、二人は桟橋につながれていない船に乗り込み、大慌てで船を漕ぎ出した。

それを見たダキは騙されたことに気づき、まわりを見回すと同じ桟橋に古い船が縄でつながれて
いた。ダキは船の縄を手で引きちぎり追いかけてきた。

ダキの乗った船は櫂が無かったが、さすが化け物両手で海面をかいて二人を追いかけてきた。
ダキが乗る船はどんどん二人の船には追いついてきた。

しかし、二人の乗る船まであとわずかとなった時、ダキの乗る船は船底がミシミシっと音をたてると船板が折れて水が入ってきた。

父親:
は~助かった。実はあの古い船は爺さんの頃からダキから逃げるため、沈むように細工してあるボロ船なんだ。爺さんたちに感謝だ!

安心したのもつかの間、船が沈んでもダキは泳いで追いかけてきた。船にも負けないほどの速さである。またダキに二人の船は追いつかれそうになった!

親父:
一平、こうなったら今日捕った魚を全部ダキに投げつけろ!魚より俺たちの命の方が大切だ!

慌てて二人は船の中の魚をダキに投げつけた、飛んできた魚を見てダキは目の色を変えた。そして、ダキは投げた魚を捕まえると生のままムシャムシャ食べ始めた。

二人は船中の全ての魚をダキの方に投げつけ、船の中は空っぽになってしまった。
ダキはそのすべての魚を食べ終え、血に染まった口で二人の方を見てニヤリと笑った。

その時だった!大きく波が立ち海面から何かが飛び出した!
そしてソレは大きな口を開けてダキに噛みついた!そしてそのまま海の中に沈んで行った。

親父:
今度こそ助かった。
ダキが食べた魚の血がこの近海の主の大ザメを呼んだんだ。いや本当生きた心地しなかったな。ハハハハハ。

二人はやっと港に戻ってきた。満月はもう真上まで上がっていた。今度は船を桟橋に縄でくくりつけた。

??:
おい、魚をくれよ。

闇の中かから大きな影が二人に声をかけてきた...

84土蜘蛛

土蜘蛛(つちぐも)は、古代の日本においてヤマト王権・大王(天皇)に恭順しなかった豪族たちを示す名称であった。各地に存在しており、単一の勢力の名ではない。近世以後になって、蜘蛛のすがたの妖怪であると広くみなされるようになった。

「土蜘蛛草紙」では、巨大な蜘蛛の姿で描かれている源頼光が家来の渡辺綱を連れて京の都の外、北山に赴
くと、空を飛ぶ髑髏に遭遇した。頼光たちがそれを追うと、古びた屋敷に辿り着き、様々な妖怪たちが現れて頼光らを苦しめた、夜明け頃には美女が現れて目くらましを仕掛けてきたが、頼光はそれに負けずに刀で斬りかかると、女の姿は消え、白い血痕が残っていた。それを辿って行くと、やがて山奥の洞窟に至り、そこには巨大な山蜘蛛がおり、この蜘蛛がすべての怪異の正体だった。激しい戦いの末に蜘蛛の首を刎ねると、その腹からは
沢山の死人の首が出てきたという物語である。

84土蜘蛛 オリジナルストーリー

夕暮れの平安京の朱雀大路を一人の若い武士が歩いていた。
武士の名は上総広常(かずさひろつね)と言った。

広常:
親父に、京より帝の警護を仰せつかった、京に行って帝をお守りするのじゃ!って言われてたから来てみれば。どうなってるんだこの都は、まるでふねけじゃね~か盗賊・野盗はやり放題だし、流行り病も横行しているし、やたらと付火と思われる火事も起きてる。京の都ももう長く持たねえな。

そこに、いつの間にいたのか汚れた格好をした山伏が声をかけてきた。

山伏:
そこの方すみませぬ、独り言を耳にしてしまった。かなり都のことを嘆いてらっしゃるようだ。
そこで相談がございます。私が見たところあなた様はかなりの剣の腕前と見た。実は私が加持祈祷をしたところ、宮中の左大臣様はもう殺され亡くなっておられる。

広常:
そんな馬鹿な!今日も左大臣を見かけたぞ、ちゃんと足で歩いておられてた!

山伏:
そうでしょうな。あの左大臣は偽物、本物の左大臣様を殺した者が化けておるのです。
そしてその者こそがこの荒れ果てた都の元凶、土蜘蛛という化け物なのです。

広常:
なに、化け物が左大臣に化けてるだと!そんなこと出来るのか?

山伏:
はい、土蜘蛛は自分が吐いた糸で何にでもそっくりに化けられるのです。しかも大きさも自由自在。そしてその土蜘蛛がその毒気と糸で帝様を操っているのです。

広常:
なに、許せん!化け物ならば俺が退治してやる。おい山伏、左大臣を本当の姿にする方法はあるのか?化け物に戻れば斬っても、誰も文句は言うまい!

山伏:
お任せあれ、私に妙案がございます。すべて用意いたしますので今夜、宮中の左大臣の部屋の前で待ち合わせいたしましょう。

そして、日も暮れ人の往来も少なくなった宮中、左大臣の部屋の前、約束通り広常と山伏そして二人は左大臣の前に乗り込んだ。

左大臣:
な、なんじゃお前たちは!誰か、誰かおらぬか、曲者だ。…誰かおらぬのか~?

山伏:
左大臣様誰も来ませぬ。私が香を焚いて近くの者たちは眠らせてあります。
それよりもこの薬草とイオウを混ぜたこの液で姿を現しなさい!

山伏は手桶の中身を左大臣に浴びせかけた。シュウシュウ音をたて左大臣から煙が上がり、左大臣は本当の正体・土蜘蛛になっていた。

山伏:
やっと姿を現したな!ならば私も本当の姿に戻ろう、そして私の仲間の烏天狗たちの恨みを晴らしてくれよう、覚悟。

山伏はその装束を脱ぎ取ると、顔が真っ赤で鼻の長い天狗となった。そして土蜘蛛が吐いてきた糸を持っていた天狗の団扇ではじき返した。

土蜘蛛:
お前はあの時の天狗達の生き残りか。安心しろすぐに仲間の所に送ってやるからな。ハッハハハハ。

今度は土蜘蛛は毒針と火の玉を吐き出してきた。天狗はしばらくは避けていたが、毒針が何本か身体に刺さった。しかし天狗はその身体で土蜘蛛に飛びかかった。

天狗:
広常殿、私が土蜘蛛を抑えているうちにこいつを退治してください。お願いいたします!

広常は父からお守り代わりにと預かった先祖代々の太刀で、力いっぱい土蜘蛛を切りつけた!土蜘蛛は断末魔を上げるとその場に崩れ落ちた。

天狗:
広常殿、お見事これで我が仲間の無念も晴らせましたありがとう。またどこかでお会いしたいものじゃ。

そう言うと天狗は空に去って行った。

この光景を物陰から冷たいまなざしで見守っている女がいた。

女官:
おぉ~ようやった。天狗も我の話を信じてよく土蜘蛛を退治してくれた。これでもうこの宮中に我の邪魔をする者はもういないフッフフフフフ。

満月の照れされた女の影はまるで狐のようだったそしてその狐には九本の尻尾が生えていた。
第14話 玉藻の前 へつづく。

90なまはげ

なまはげは、秋田県の男鹿半島周辺で行われてきた年中行事、あるいはその行事において、仮面をつけ藁の衣装をまとった神の使い・来訪神を指す。

なまはげには角があるため、鬼であると誤解されることがあるが、鬼ではない。なまはげは本来、鬼とは無縁の来訪神であったが、近代化の過程で鬼と混同され、誤解が解けないまま鬼の一種に組み込まれ、変容してしまったという説がある。
冬に囲炉裏にあたっていると手足に「ナモミ」「アマ」と呼ばれる低温火傷ができることがある。それを剥いで”怠け者を懲らしめ、災いをはらい祝福を与えるという意味での「ナモミ剥ぎ」から「なまはげ」などと呼ばれるようになったととも言われている。

90なまはげ オリジナルストーリー

男は生まれた時から体が大きく、なぜか頭に角のようなこぶが二つ生えていた。
男の名前は岩太郎といった。
男の家族は男が幼いうちに流行り病でみんな亡くなり男一人が残った。
男が十歳にもなると背丈が6尺を超え身体は熊のようになっていた。
ある日、村の長老が家にやって来た。

長老:
岩太郎、ひさしぶりだな。じつは今日はお前に頼みがあってここにやって来た。
村の者たちが、特に子供たちがお前のことが怖いと言うんだ。いやお前が小鳥も殺せない優しい子だというのはワシは分かっておる。だがな、お前のその大きな体、頭の角のようなこぶを見ると知らない奴らはお前が怖いのじゃ。
このままだといつかお前に悪いことが起きる。そこでどうじゃ、山の麓に小屋をワシらが作る、飯もワシらが運んでやるから、岩太郎そこに住んでもらえないか?

両親が亡くなってからずっと岩太郎の面倒を見てくれている長老の願いとあっては、岩太郎は断るわけには
いかなかった。
話すのが苦手な岩太郎は笑顔で大きくうなずいた。

それから10日、岩太郎は長老たちが作ってくれた山の麓の小さな小屋に引っ越していった。見送ってくれたのは長老とその奥さんだけだった。

それから10年が過ぎた。
岩太郎は今では7尺以上の体になり髭がボウボウの顔を見ると熊も逃げていくのではないかという風貌になっていた。
岩太郎も大人になったので身の回りの事はたいがい一人で出来たが、着物や生活に必要なものは長老か奥さんが月に1、2度届けてくれた。

その年の冬の事であった。
その年は天候が悪かったせいか不作で、村々の間でも争いごとが多かった。
そんな寒い晩、岩太郎が寝床についていると山の方から男の声が聞こえた。

盗賊:
おい下を見ろ、あそこに小さな村がある。あの規模の村なら俺達が人数を集めれば襲撃し米を略奪することも出来るだろう。

子分:
おぅ、お頭普段は村は襲わねえ俺達ですが、背に腹は代えられない。悪いが村の奴らは皆殺しですね。

盗賊:
口封じには、それしかねえな。よし、明日の晩仲間を集めて月が真上に上ったら村を襲撃するぞ。

岩太郎はその話を全部聞き、翌朝に岩太郎から長老に会いに行った。
そして昨晩の話を伝えようとしたが、普段から話しをしない岩太郎は盗賊の事を長老に伝えられなかった。
岩太郎は家に帰って行った。長老は笑顔で見送った。

そして岩太郎は決心した。昔聞いた「なまはげ」の話を利用することを。

岩太郎は日が暮れかかった村に来ていた。
岩太郎は顔を真っ赤に塗って大きな出刃包丁を持ち、藁を体中に巻いていた。そして大声を上げ村の一軒一軒に飛び込んでいった。

村の人々は恐怖におののき家から飛び出し、近くの森に逃げて行った。村人たちはあの化物を退治する方法を話しあっていた。そこに長老が割って入った。

長老:
待ってくれ、みなの衆。あれは岩太郎だ、間違いない。
あいつはけっしてワシらに危害を加える気は無い。誰も怪我しておらんじゃろう。
ワシが戻ってどうしてこんなことをしたのか聞いてくる。それまで待ってもらえんだろうか。

こうして長老一人が村に戻って行った。

長老が村に戻ってくると村の入り口に岩太郎の「なまはげ」が仁王立ちしていた。
そして岩太郎は長老に気づくと涙を流しうろたえ、来るなと手で合図した。
何でこんなことをしたのかと尋ねようとした長老に何かが飛んできた。
それは長老の胸を貫き、矢の刺さった長老は地面に倒れた。

それを合図として盗賊が何十人も山から駆け下りてきた。
岩太郎は涙の目を怒らせ、近くの太い丸太を持つと盗賊たちに飛びかかった。そして丸太で盗賊たちをなぎ倒した。

しばらくは岩太郎と盗賊たちの一進一退の攻防が続いていたが、頭の合図で岩太郎に矢を射かけた。さすがの岩太郎も全身に矢が刺さり地に膝を着けた。

村を守れなかったとさらに泣いている岩太郎の目に信じられないモノが映った。

身の丈8尺以上ある青い面と赤い面を着けた何者か二人が盗賊たちを一瞬で薙ぎ払っていた。

森から村の騒ぎが静かになったのを見計らって、村人たちが戻って来た。
村人たちは目にした光景ですべてを理解した。

何十人もの盗賊たちの死体と、矢を受け亡くなっている長老と岩太郎。村人たちは涙を流し二人に手を合わせた。

岩太郎の顔はなぜか満足そうに微笑んでした。

92ねぶとり

寝肥、寝惚堕(ねぶとり)は、江戸時代の奇談集「絵本百物語」にある日本の妖怪の一種。

妖怪というよりは一種の病であったり、戒めであると言った方が妥当。「絵本百物語」の挿絵中にある文章によれば、夜に女性が寝床につくと部屋に入りきらなくなるほどの巨体となり、大きないびきをかいて寝るものを、寝肥というとある。
また、「絵本百物語」の本文によれば、寝肥は女性の病気の一つであり、寝坊を戒めた言葉ともされる。奥州で寝肥となった女性が、家に布団が10枚あるところをその女性は7枚、夫は3枚使って寝ていたという。

92ねぶとり オリジナルストーリー

三日月の下、桜の花びらが舞っている。
ここは陰陽師・安部暗明の屋敷である。

春雅:
実に美しい、そしてとても不思議に感じるのだ。

夕刻よりこの屋敷に来ていた笛の名手源春雅はすのこの上に座して暗明と酒を飲んでいる。

暗明:
何を不思議に感じる。

春雅:
桜の花びらが散り、若葉が出て青葉になり、それも枯れて落ち葉となって、雪が降り、また桜の花が咲く。
これらを見ていると目には見えない時の流れを見ているように感じるんだ。

暗明:
すごいぞ春雅、お前が言っていることは陰陽道や仏法の説くところと同じだ、それをお前はさらっと言ったのだ。

春雅:
やめだ、やめだ、またお前は話をややこしくしそうだ。
ところで暗明、藤原道草殿の娘・玉子殿の話は聞いておるか?

暗明:
ああ、今晩私の所にその件で道草殿から迎えが来ることになっている。

三月ほど前、藤原道草は新しく手に入れた土地に屋敷を建て、そこに引っ越してきた。きちんとお祓いもした土地、特に何の怪異もおこらなかったが、ただこの一月前から道草の娘・玉子の体にじょじょに異変がおきはじめた背も低く細身であった玉子がこの一月前からから毎日毎日どんどんどんどん太ってきたのである。
今では自分では体を支えきれず、ずっと寝たまま。食事を減らしているのにどんどん太ってしまい、自分の部屋からもはみ出てしまうほどである。

暗明:
それで道草殿より私の所に何とかして欲しいと文が届いたのだ。

春雅:
暗明、お前にはこの怪異がなぜおこったのかわかるのか?

暗明:
ああ、ご先祖様の「陰陽師」の話読み込んでいるから大体察しがつく。
どうだ春雅一緒に行かないか。

春雅:
俺も行ってもいいのか?

暗明:
問題あるまい、ゆこう。

春雅:
ゆこう。

そういうことになった。

暗明と春雅は玉子の部屋に来ており、玉子は弱々しく寝息をたて横になっている。
暗明は用意したお札を玉子のおでこに貼った。お札には「蛇」と書いてある。
暗明は右手の指をを口に当てると何やら呪文のようなものを唱えた。
すると不思議、玉子は小さくなってゆき、あれよあれよという間に元の可愛らしい玉子の姿に戻っていた。

暗明:
道草様、どなたかに玉子殿が寝ていらっしゃたあたりの床下を2尺ほど掘っていただけませんか?

道草は早速 家の者たちを床下に潜らせ玉子の寝ていたあたりの土を掘った。

家の者:
道草様!土の中から変なものが出てきました。

こうして家の者たちが床下から持ってきたのは1尺はあろうかというガマガエルの干からびたミイラだった。

暗明:
たぶん、この家を建てた時この家の下に小さな沼があってガマガエルが冬眠していたのでしょう、そして出られないほどに埋められ死んでしまったガマガエルは冬眠から目覚めて何でも捕らえて食らってしまう、しかし死んだ身です食らっても食らっても腹が満たされない。すべて幻想の世界、ただしその思いだけが玉子殿に乗り移りどんどんその思いを受けて太ってしまったのでしょう。
ガマガエルでも長い年月を生きるとこんな霊力を持つことがあります。
道草様、このガマガエルを丁重に弔ってください。

暗明と春雅は道草家からの帰りの牛車の中にあった。

春雅:
暗明あれで大丈夫なのか?

暗明:
ああ、ご先祖様の「陰陽師」ではいつもこんな感じだったはずだから大丈夫だ。
それより春雅帰って飲みなおそう。

平安京から見上げた空には三日月があり、その下を桜の花びらが舞っていた。

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