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「あなたの沖縄」執筆者紹介──リゾートでも基地の島でもない、はざまの沖縄を探して

 90年代生まれが個人的な体験から沖縄を語るコラムプロジェクト、あなたの沖縄。様々な職業に就く約40名の執筆者が参加しています。でも、もっと多くの同年代に沖縄を語ってほしい。そんな思いから、あなたの沖縄の執筆者に、沖縄を語り始めたきっかけについて聞いてみました。
 今回ご紹介するのは、これまで2本のコラムを執筆した安里和哲さん。大学進学をきっかけに上京して、現在はフリーライターとして活躍されています。現在製作中のZINE第二弾にも参加する安里さんに、あなたの沖縄との出会いやZINEにこめる思いについて伺いました。(取材・執筆 西由良)

安里和哲(90年生まれ 豊見城市出身)

1990年、豊見城市出身。2010年、大学進学で上京。現在はフリーライターとして働いています。主な取材領域はポップカルチャー(お笑い、映画、アイドル、文芸など)。最近は『クイック・ジャパン』のサンドウィッチマン特集に携わりました。
沖縄にはほとんど帰れてないので、もっと稼いで二拠点生活したい……(沖縄での取材大歓迎です。 kasato17@gmail.com もしくはXアカウント@massarassa までご連絡ください)
「あなたの沖縄」で一皮むけた文章を書けるようになりたいです。

沖縄との距離を縮めたい

──あなたの沖縄に参加した経緯を教えてください!

復帰50周年に際して『Maybe!』という雑誌で、沖縄にルーツのある方々にライターとしてインタビューをしました。その中から二階堂ふみさんの取材記事の抜粋がネットで公開されたんですが、それを読んでくれた「あなたの沖縄」メンバーで新聞記者の豊島さんからDMをもらって。僕もSNSで回ってきた豊島さんのコラムを読んでいたので、すぐに意気投合しました。その後、実際に会って、西さんを紹介してもらい、コラムを書いて、という感じです。

──二階堂ふみさんの記事、当時話題になっていましたよね! どうしてあなたの沖縄の活動に興味を持ってくれたんですか?

おもしろいなぁと思っていました。沖縄は「リゾート」や「基地問題」といったイメージで語られがちですが、あなたの沖縄では、そうしたイメージのあいだにある言葉が書かれていますよね。また、インタビューや聞き取りといった形ではなくて、あくまでも自分の言葉で沖縄を書く。そのスタイルもいいなと思っていました。

──ありがとうございます! ちなみに、どのコラムが好きですか?

一番は、豊島さんの「気まぐれポニーテール」です。自分の体験を織り交ぜながら、気になるスポットを取材していくスタイルがおもしろかったです。僕もライターなので、こういう取材記事はいいなと。
西さんの「日本へようこそ」も印象的です。西さんと同じように僕も大学進学を機に上京したんですが、沖縄出身ということでからかわれる経験をしました。例えば、大学の同期から「方言喋ってよ」とか「沖縄のおすすめスポットを教えて」と聞かれたとき、うまく答えられなかったんですよね。そしたら「エセ沖縄やん」と言われてしまった。

──エセはひどいですね。

悪気なく言ったんだろうなとは思うんです。でも、「エセ」と言われたのはショックでした。それと同時に、自分があまりにも沖縄のことを知らなすぎるなと反省もした。それからは、帰省中に歴史資料館に行ってみたり、沖縄関連の本を昔より意識的に読むようになったりしましたね。
ところが、社会人になって子育ても始まると、忙しさから少しずつ沖縄を知る機会が減ってしまった。だから、『Maybe!』で沖縄の取材をして、「あなたの沖縄」と出会えて本当よかったなと思っています。

──仕事や子育てに忙しい人が、沖縄について考えられるようにしたいと思って、活動を続けています。だから、安里さんに参加してもらえて本当に嬉しいです!

僕は普段東京にいて、沖縄のことを話す機会があまりない。だから、東京で月に一回開催している読書会などで、沖縄について話せるのは嬉しいですね。こちらこそありがとうございます。

ZINE第二弾では同世代のお笑いを特集

──安里さんは、4月上旬刊行のZINE第二弾にも参加してくれています。ZINEではどんなことを書く予定ですか?

沖縄のお笑いについて取材したりコラムを書いたりする予定です。ライターとして、東京で活躍するお笑い芸人に取材することが多いので、沖縄のお笑いも知りたいと思って企画しました。

──沖縄のお笑い、楽しみです!

沖縄のお笑いは、風刺がひとつの特徴ですよね。敗戦の傷や、差別的な扱いを笑いに変えてきた歴史がある。日本のお笑いでは、風刺ってそんなに多くないので、沖縄特有なのかなと。

──沖縄戦で傷ついた人を笑いで励ました小那覇舞天さんや、沖縄の矛盾をテーマにしたお笑い米軍基地などが有名ですよね。

でも、その一方で、風刺とは違った笑いも沖縄の中には当然あります。去年、ある雑誌で取材した沖縄のアーティストの方が「沖縄のアーティストは、沖縄問題を扱うことを求められていて、それ以外は評価されにくい」と話していて、そのお話がずっと心に残っています。沖縄に生まれた表現者は、沖縄をめぐる様々な社会問題について描かないといけない、という雰囲気がある。もちろんそれも大切ですが、沖縄の問題をわかりやすく表象していなくても、表現それ自体を評価する態度がもっとあってもいいのでは、と話されていました。
“青い海・青い空”といった観光イメージや政治的な問題の中間にあるような、新しい沖縄の表現。今、同世代が様々なジャンルでそうした表現を試みていますが、沖縄のお笑いも例外ではありません。それを読者の方に伝えたいですね。

──すごく面白そう…! 今回の企画はどんな方に読んで欲しいですか?

県内・県外関係なく、全てのお笑いファンに読んで欲しいです。東京のお笑いについて普段取材している僕だからこそ書けるような特集にできたらと思います。これから書いていくので、どうなるかはまだ僕もわかりませんが(笑)。期待してください!

──最後に、安里さんの今後の目標を教えてください!

これからは沖縄に通って、さまざまな取材をしていきたいです。お笑いもやっぱりライブやイベントなど現場を知らないと書けないことがたくさんあります。今回のZINEを皮切りに、沖縄のお笑いの今を県内外に発信できたらいいですね。

沖縄のお笑いはもちろん、沖縄のカルチャーなど取材できることがあれば、ぜひお声がけください!

安里さんの過去のコラムはこちら!

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