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沖縄を想う、沖縄をつづる〜読者から書き手へ変わる瞬間〜

 90年代生まれが個人的な体験から沖縄をつづるコラムプロジェクト「あなたの沖縄」。これまで、40名以上の方に執筆してもらいました。初めは、知り合いに声をかけ、活動の輪を広げていましたが、最近では、読者だった方からメールで連絡をもらい、執筆してもらうことも増えました。
 どんな想いで連絡してくれたのでしょうか。そして、実際に書いてみて、何を感じたのでしょうか。今回は3名の方にお話を伺いました。
 90年代生まれの方でコラムを書いてみたいという方、ぜひyour.okinawa.project@gmail.comまでご連絡を!

山里 晴香(93年生まれ 那覇市出身)

1.あなたの沖縄に連絡を取ったのはどうして? 

 「あんまり沖縄のこと好きじゃないよね」と言われたことがある。そうなのだろうか。否定も肯定もできなかった。たしかに、正直わたしは沖縄が大好きって訳じゃない。複雑な感情を持っている。でも、大好きじゃなくても、わかりやすく沖縄出身のイメージを纏っていなくても、出身地のことを語ってみたい。 

 きっかけはネットだと思う。辺野古基地移設を抗議する看板の横で笑顔でピースするひろゆき。おぞましいいいねの数。飛び交う沖縄への侮辱。悲しいし、寂しい。

 同世代の方々が、自分の言葉で沖縄を語る姿を見て、かっこいいと思った。黙るでもなく、反発するでもなく、言葉を紡ぐことで沖縄がまとう雰囲気を変えていけないだろうか。わたしも、自分が知っている沖縄を語る言葉を持ちたい。そう思っておそるおそるメールを打った。

2.実際に書いてみて、何を感じた?

 主宰の由良さんに、「ばーっと書いた方がいいですよ、勢いで」と言われた。素直に受け取り、お酒を飲んだ勢いでばーっと書いた。「あなたの沖縄」が紡いできたものを、わたしのコラムが壊さないか心配だった。自分の体験談に興味を持ってもらえるかも不安だった。

 公開して嬉しかったことが三つある。

 一つ目は、会ったことがない人に届いたこと。我が家の怪談が知らない人に届いて、沖縄戦について思いを寄せてくれて、不思議な気持ちになった。 

 二つ目は、卒業以来会っていない大学のサークルの人がリアクションをくれたこと。覚えていてくれたんだ、と思った。

 それから、会社の先輩が感想を寄せてくれたこと。「ざらざらした手触り感のある描写」と表現してくれた。わたしの文章はざらざらしているのか、と発見があった。ざらざらした思い出をこのあとも書けるといいけど、たぶんストックが尽きる。そしたら何を書こう。

【山里さんが書いたコラム】

横井貴子(92年生まれ 神奈川県出身)

1.あなたの沖縄に連絡を取ったのはどうして? 

 読み始めたのは、大学の先生に紹介いただいてから。同世代が沖縄について自分のことばを紡いでいることに、とても心強さを感じました。

 あと、なんといってもプロジェクト名がいいなと。「わたしの沖縄」ではなく「あなたの沖縄」であることで、だれかの姿を覗き見ていたつもりが自分の姿を見てしまうような、鏡のように読者を巻き込んでいく仕掛けになっていると思いました。

 やはり連絡するときは勇気がいりました。掲載までにどんな手続きがあるのかよく分からなくて、コラムを書き、メールで送ろうとしたのですが、原稿を書き終えてから送るまで数日かかりました(笑)。思い切って送信すると、主宰の西さんから「まずはZOOMでお話ししましょう」とご連絡いただいて。執筆者同士が緩やかに繋がりあうコミュニティがあって、とてもあたたかい場所でした。

2.実際に書いてみて、何を感じた?

 書くことに苦手意識があったので、緊張感でいっぱいでした。でも、いきなり公開されるのではなく、主宰の西さんがくれた丁寧なコメントをもとに修正できたので、ありがたかったです。

 公開直前は執筆者名に悩みました。ユニークなペンネームに憧れる一方で、わたしの場合は自分の半生をふくめて覚悟をもって書くことが必要だと考えて、最終的に本名にすることに決めました。

 公開されてからは自分のことばがどう届くのか不安でしたが、X(旧Twitter)では、偶然にも同い年でまったく同じ境遇だったという方から感想をもらったのが印象的でした。個人的な秘密を打ち明けたつもりが、まさに鏡のように読んでくださったのかなと、嬉しかったです。

 また、友人ふたりから「実は親戚が沖縄ルーツなんだよね」と教えてもらったのも嬉しかったですね。コラムをきっかけに、沖縄について気軽に話せる機会が生まれているなと思います。

【横井さんが書いたコラム】

ゴクツブシ(92年生まれ 神奈川県出身)

1.あなたの沖縄に連絡を取ったのはどうして? 

 進学のために沖縄に来て、平和教育などを扱う授業に参加してから、基地問題などに興味を持ち始めました。そして社会人1年目の2018年から2019年にかけて、知事選から県民投票への流れがあって(注)。自分と同世代の動きに非常に感銘を受けました。そこから沖縄について発信するツイッター(現X)アカウントもフォローするようになり、「あなたの沖縄」を知りました。

 「執筆者募集中」とあったので、自分も書きたいと思っていました。しかし、コラムの初期は、親戚付き合いや、有名な場所の昔の様子など、生まれ育った者にしか語れないような「等身大の」沖縄が綴られていて。これまでとは違った新たな視点に刺激を受けると同時に、県外出身の私に書けるのかと諦めかけていました。その後、徐々に県外出身の方のコラムも増えてきて、「自分だからこそ書けることもあるかも」と考えが変わり、連絡してみました。

(注)辺野古埋め立ての是非を問う県民投票は、91年生まれの元山仁士郎さんが代表を務める市民団体「『辺野古』県民投票の会」が約9万筆の署名を集めたことで実施されました。若者が中心となった活動として知られています。

2.実際に書いてみて、何を感じた?

 文章を書くのは、好きなんですね。だから、書くという作業は非常に楽しかったです。また、過去の自分を見つめ直すいい機会にもなりました。

 僕は全く「しっかり者」ではないので、筆の進みも遅いし、書けるときと書けないときの波もすごいです。いつも心配をかけていると思うのですが、西さん始めメンバーの皆さんの優しさに助けられています…(汗)。

 現在は沖縄を離れてしまっていますが、県外の人間としてまだまだ書けることはあるんだろうなと思っています。どうしても、僕ら県外人は、メディアの影響などで沖縄や「沖縄の人」に対して一面的なイメージを抱いてしまいがち。その「正体」のようなものに、県外人自身がもっと踏み込まなければと思っていて…そのことについて書いてみたいです。

【ゴクツブシさんが書いたコラム】

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