秋桜が咲く世界に
まだ　秋があった頃
少年はカーディガンを脱ぎ捨て
公園の地面に絵を描いて遊んだ

夕日色に染まる空に
名前を呼ばれて
急いで駆け出す　家までの道

秋桜は少年を呼び止めるが
少年は振り返らない

暗くなる前に帰らなくちゃ

ゆうげの香り漂う町
家々の淡いコスモス色の灯り

寒いから早くおうちに帰りたい

暗くなる前に帰らなくちゃ
太陽が沈む　紫色の空

追いかけてくる暗闇
街灯が点々と　点灯する
青白い光　ちょっとだけ　怖い

駆け込むようにドアを開けて

ただいま！
おかえり！

カーディガンはどうしたの？

あっ
カーディガン
忘れちゃった

秋桜の咲く世界に
戻らなきゃ

一緒に戻ろうか

（おわり）

　少年のカーディガンの色ですが、私は秋のイチョウの葉の黄色をイメージしていました。ギターの音が聴きたくなる秋です。ハナレグミさんの「家族の風景」に出てくるフライパンマザーと少年がなんとなくモチーフです。

🔸#シロクマ文芸部 に参加させていただきました。「秋桜」楽しかったです！ありがとうございました。