雪化粧のまま　そのまま
いつかの雪　そのままで


雪化粧を施された一軒家が
ポツンと建っていた
庭の向こう　眺める景色
見えるのは夜空というよりも暗闇
定期的に何処かで
青白い光が点滅していた
ずっとずっと寒かった

大量の水が流れるような大きな音と
大きな氷がガタンと落ちる
そんな音が響き渡っていた

たまに明るくなり
優しい風が吹いた
その風が吹いた後
少しだけ景色が変わるような気がした
暗闇と青白い光の点滅は続いていた

そういえば　いつから
此処の暮らしが始まったのだろう
覚えていない

最後に雪化粧された街を見たのは
いつだったろう
もう遠い昔のことで思い出せなくなっていた
温暖化の影響で　此処にはもう何十年も
雪は降っていない
雪の街が好きだった
雪の積もった家が大好きだった
雪を纏って大きくなった家は
頼もしくて勇敢で
どこよりも暖かくて安心だった
雪の家は子供だったころの記憶を
全て閉じ込めていた

空から降る雪の結晶は
キラキラと輝きながら
S＝1/100 の屋根の上に舞い落ちた
父が抱えたミニチュアの家は
この家にそっくりだった
雪化粧のまま　そのまま
父は冷凍庫の中に　仕舞った

冷凍庫を開けて
凍結された　
あの日の家を眺める
子供の頃の記憶を開くと
優しい風が吹く
いつかの雪　そのままで

（おわり）

◇ #シロクマ文芸部 に参加させていただきました。
「雪化粧」楽しかったです。
自分の中に雪化粧という言葉が無さすぎて困りましたが、、満足です♪
ありがとうございました。
（冷凍庫の氷を作る機能を発明した方は天才です。）

1月も後半ですが、今年の目標を決めたので、言霊として残します。
（去年の目標は「兎に角早寝」と「二つ返事」）
基本断らない「二つ返事キャンペーン」は、かなりハードでしたが、思いもよらないお誘いが舞い込むので、楽しかったです。なので、今年も継続して「二つ返事」を目標に、、やります。行きます。参加します。と即答で生きていこうと思っています。

読んでくださり、ありがとうございます。