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鰻重3つ

2023年も半分が過ぎた。

今日の夕食は鰻重であった。
鰻は娘の一番の大好物と言っても良い。
江戸っ子の義母が保育園児の頃から鰻の味を教え、娘はその味を気に入りいつしか一番の好物になった。

一人娘であった娘は、祖父母達にとってもただ一人の孫であった。
生後8か月からは共働きとなり、ウィークデーは毎日、義母に面倒を見てもらった。
三つ子の魂百までと言うが、娘の博愛的な性質の下地は義母に面倒を見てもらった時間により形成されたと思っている。

今日の夕食の鰻重は、義母達からのおみやであった。
かつて、孫を連れ何度も通った店。

「このテーブルにも座った。」
「この店の鰻は骨が多いから、もう一つのお店の方が良いと娘はよく生意気を言っていた。」
そんな義母の回想があったと妻から聞いた。

突然に孫が居なくなる。
自分より先に孫が死んだ。
大切に育て、これからを楽しみにする事を重ねて来た時間が経ち切られた。
その様な日々を義母達はどの様に過ごしてきただろうかと、いつもの様に頭に釘が刺される様な気持ちになった。

おみやの鰻重は私の分、妻の分、そして娘の分の3つ。
娘の分はどこに置く?と妻が聞く。
そんな会話が頭の釘に更に鈍痛を覚えさせる。
食卓に3つ並べ、娘の分は私が食べた。

娘が言う様に、少し骨が多いと思った。

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