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ライカM11モノクロームを購入して(前編)

序文

現在は“人生100年時代”だという。定年の年齢も延びると聞くし、私ことアラサー会社員の職場でも再雇用で働いている方がいる。ある時に「老後は2000万円必要」的な話が炎上したこともあったが、今やむしろそれだけで足りるのかと不安に思う。私は30代前半で、現在のところ健康診断で大きな病気は見つかっていない。しかし、実際のところ自分の命がいつ尽きるかは分からないものだ。福山雅治さんがラジオでこんな話をしていたらしい。《30代でパテック・フィリップ(高級腕時計)が欲しくなったが“生意気かも”と思い止まり、40代後半で“もう良いだろう!”と購入した。ところが、その時には文字盤の字が小さすぎて見えなくなっていた(老眼)》という昔話みたいな教訓。それを見かけて、私はライカM11モノクローム(以下:M11M)を購入する決断をした。


限りある

ライカのMシステムは所謂“レンジファインダー”と呼ばれる種類のカメラだ。素通しのファインダーから見える像と距離計窓が見ている像、この二重像をぴったり重ねることでピントが合う。これについては私の言葉よりも、最近M11-Pを購入した瀬戸弘司さんの動画が分かりやすいと思われるので参考にしていただきたい。ファインダーが素通し(EVFなどではない)のため、被写体の拡大も何も出来ない。そもそも眼鏡をかけている私の視力は衰えていくばかりだろう。これも序文の決断に至った理由に含まれている。なお、Mシステムにはファインダーに付ける視度補正レンズやビゾフレックス(外付けEVF)などを使うことが可能だ。そのため、福山さんの腕時計とは少し話は異なるが“現在”はお金を積もうと取り返せない。それはライカなどに関わらず、すべての人がそうだろう。

されど、M11Mの金額は私にとって“法外”だった。これほど高価な商品を買ったことはない。ただ、周りの友達を見ればマイカーやらマイホームの購入も当たり前になってきた。それを考えると何故か冷静になり(謎)、懐事情的にも買えなくはないことに気づく(移動も住むこともできないけれど)。写真を生業としている方やYouTuberなら、どこかで元が取れるだろう。しかし、こちとらプロの会社員だ。本体代金を回収することは難しいだろうし当然やる気もない。最後は、後悔したくないという想いだった。100年の寿命があるとしたら、定年後にカメラを購入しても40年ほどは楽しめる。でも、30代に買えば70年も楽しめることになる。いずれ買うならば早い方が良い。たぶん、70年の間にM11Mは売ってしまうだろうけれど。いや、必ずしもそうとはならないのがライカでもあるか。


限らない

Mシステムの初代はフィルムカメラの“M3”だ。ゴジラやストラトキャスター(フェンダー社のギター)と同じく1954年に誕生したカメラだが、街では現在も見かけることがある。むしろライカのフィルム機としてはM6と同じぐらい人気なのではないだろうか(根拠なし)。デジタル版の初代は2006年に発売された“M8”だ。カメラについて詳しくないが、18年前のデジタルカメラをメインで使っている人はどれだけいるだろうか。ソニーで表せば初代αが発売された頃で、当時はAマウントだったと思われる。ライカではわりとあり得て、つい最近も大学時代の先輩が“M8.2(2008年発売)”を購入していた。新機種が出るごとに買い替える気にはならないし(価格的にも)、それが必ずしも自分にマッチするというわけでもない。なので、大事に使えばM11Mを70年間所有出来る“かも”しれない。

どうしても金額面だけが表になりがち(当然かもしれないが)だが、こういう部分にライカのプロダクトとしての面白味を感じる。本体がいつの発売だろうと、Mシステムであれば同じレンズをそのまま使うことが出来るのだ。「デジタルはなんか違うかも」とフィルム機に買い替えてもレンズを買い直す必要はない。とはいえ「だから安い(お得)!」と綴るつもりもない。また“資産価値”という話を見かけたこともあったが、私はそこまで考えなかった。確かに他社カメラよりも買取価格は良い感じがするが、ロレックスのように購入時を超える価値になるのはレア機種だけだろう。ちなみに、モノクロ専用機であるM11Mを選んだのは《購入当時にM11シリーズで買取価格が最も高い機種だったから》というゲスな計算も含まれているが、2024年5月現在ではすでに100万円を割っている。

塗装が剥げてきたシャッターボタン

後悔

結局のところ、M11Mはどうなのか。私の答えは「後悔は微塵もない」ということになる。高価なカメラを買った興奮を差し引いてもそう思っているのだ。だが、購入して2週間ほどで距離計異常に気が付き入院させるなどプロダクトとして完璧か?と問われればそうとは答えられない。最近はM11シリーズ?でフリーズする問題が起きており、漏れなく私のM11Mも時折そうなる。「良いのが撮れたっぽい!」と思った時にフリーズし、写真が消えてしまった際は絶望した。例えばソニーのa7IVでは体験したことがないし、おそらく日本のカメラメーカー機ではありえないレベルと言えるかもしれない。「それでも好きな写真が撮れるから(使いたい)」というのも事実だし「どうなってんだよジャーマニー!!」と心底思うことも本当だ。繰り返して後悔はない、が多少モヤっとはする。

私はウォーキングが好きだ。ゆえにそうした用途の靴を履いている。スイスの某メーカーの靴を買いに行った際に撥水のものを探していた。それを店員さんに伝えると「今は在庫がない」と言う。それと「撥水はないですけど生地が薄いからすぐに乾きますよ」と言われた。ここに日本と海外との考えの違いがあるような気がして、たまに思い返してはニヤける。「雨が降っても足が濡れないようにする」のと「雨が降ったら濡れるけどすぐ乾く」はマインドが違う。もちろんすべての海外製品がそうではないが、逆に海外で日本製品が人気になるのはそういうところではないだろうか。「金額が金額だけに」という気持ちも相まって何かに怒りたくなる気持ちも分かるが、良くも悪くもこんなものではないかと私は考えている。どちらにせよ、持ちたいカメラを使いたい。欲望はとても単純である。

(つづくはず)

これまで

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