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米ジャクソンホールと私たちの資産形成

まず、ここ最近の相場が大きく動く中、個別相談やセミナーにおいて、多くの方々から資産形成に関して感謝の言葉をいただいており、それに対してお礼を申し上げます。お役に立てていると思うと、毎日が非常にありがたく感じます。これからも、金融市場分析とファイナンシャル・プランニングのハイブリッドという自分にしかできない役割を果たしていきたいと思っています。

さて、タイトルにもなっていますが、先週の最大の注目は米ジャクソンホールでのパウエルFRB(連邦準備理事会)議長の発言でした。内容の分析は後回しにして、発言と金融市場の反応をコンパクトにまとめると、

1)FRBが見ている景色と市場参加者の見たい景色にズレがあったのが、パウエル議長の発言によって市場がFRBに近づく形で修正された。

2)FRBは本音ではなるべく利上げ幅を小さくしたく、そのために強いタカ派姿勢を打ち出している。インフレおよびインフレ期待を抑えるためにFRBとしてはもう少し需要抑制が進んで欲しく、株価が上がって需要が再燃するとさらに強い金融引き締めを行わなければならないため悩ましく思っていた。パウエル議長の発言によって強いタカ派姿勢がより強調されて市場の楽観が変化した。

ということになると思います。

ここからは、少しパウエル議長の講演の内容に触れます。一般的なコメントとはちょっと違う部分に焦点を当てたいと思います。

「物価の安定を回復するには、景気抑制的な政策スタンスを一定期間維持することが必要となる可能性が高い」といった発言でインフレ抑制と金融引き締め継続への断固たる姿勢を示したことが直接的なインパクトを与えましたが、他にも興味深い点がいくつかありました。あまり深入りしてマニアックになりすぎないようにします。

まずは冒頭です。昨年の講演でインフレは一時的と言ってしまった教訓を踏まえてか、前回は幅広いトピックスについて議論したが、今日は短く、狭く、より直接的に述べると言いました。それが与えられた30分を大きく下回る8分間のスピーチなのですが、結果としてよりインフレに話題を絞った内容の濃いものになりました。

その後はインフレ抑制の重要性を説くのですが、所々で「長期にわたってトレンドを下回る成長」「金利上昇、成長鈍化、労働市場の軟化はインフレを低下させるが、家計や企業への痛みをもたらす」など厳しいトーンの言葉が出てきました。

そして「歴史は時期尚早の政策緩和に対して強く警告している」と述べ、市場の来年の利下げ期待に釘を刺しました。

その後は、過去の高インフレ時代と低インフレ時代を踏まえて3つの教訓があるとして「中銀は低く安定したインフレを実現する責任を担うことが可能でありすべき」「将来のインフレ期待が実際のインフレの道筋に重要な役割を果たす」「職務をやり遂げるまで根気よく続けなければならない」と述べたのですが、これらについて語る際に、バーナンキ、ボルカー、グリーンスパンという歴代の議長の言葉を引用しました。

これはFRBの歴史が今の政策スタンスを作っているということを強調するもので、今の政策姿勢に厚みを与えた印象を受けました。

そして、ここからは金融市場の反応とそれを踏まえた資産形成についてお話ししたいと思います。

ジャクソンホールでのパウエルFRB議長の講演前は、様子見と言いながらも楽観的な雰囲気だった株式市場ですが、講演後は大きく値を崩しました。S&P500は前日比-3.37%、NYダウは同-3.03%、ナスダックは同-3.94%といずれも大幅下落となりました。

ジャクソンホール前までに、私がお客様向けレポートで申し上げていたことは、
・EPS(一株当たり利益)は下方修正だがPER(株価収益率)上昇の形で株高。しかし、この状況でのPER上昇による株高は疑問。
・ただ、こういうこともあるので市場に参加していることが大切。
・市場は見たいものを見ている可能性がある。
・買い余地を残しておく、追いかけて買わない。
・下がったところを丁寧に拾っていく、あるいは淡々と買う。
でした。

この投資スタンスであれば、今回の下げにも慌てず対応できていると思います。個人的には割高だったバリュエーションが調整されたので、望ましい下げだと考えています。このまま株高が続いて、需要が高まり、インフレが再加速し、FRBがさらに大幅利上げを行ったら、どこかで株価はクラッシュすると思うので、今は適正な調整をしながらじわじわと上がってくれた方がありがたいです。

ということで、ここから先は下げたところでどう拾えるかが重要になってきます。相場観に頼らないのであれば、淡々と買うのでOKです。淡々と買っているならS&P500は3,700〜3,800台で買えた可能性が高く、そうであればスルスル上がる相場で恩恵を受けており、足元のパウエル発言で株価が反落しても、まだ十分に利が乗っていると思います。とは言え、資産形成は長期的な視点で行いますので、短期的な上げ下げには振り回されないようにしましょう。それと同時に、足元でなぜこういうことが起こっているかについては、私のレポートでしっかり追いかけて、資産形成を進めていただけたらと思います。

今週は、市場参加者の多くがダメージを受けている中、米国ではISM景気指数と雇用統計、中国ではPMIの発表があります。ISMやPMIが景気後退の可能性を示唆する一方、労働市場や賃金が高止まりを続けるようだと、株式相場の下落が続く可能性があるため要注意です。

引き続き楽しく増やす資産形成をしていきましょう。

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