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『猪木伝説の真相 天才レスラーの生涯 』を読みました。

猪木伝説の真相 天才レスラーの生涯

著者: アントニオ猪木。佐山聡。前田日明。藤波辰爾。藤原喜明。蝶野正洋。武藤敬司。藤田和之。グレート小鹿。北沢幹之。天龍源一郎。石井和義。大仁田厚。サイモン・ケリー。ターザン山本。


内容紹介
アントニオ猪木とはいったい何者なのか?
佐山聡、前田日明、武藤敬司、蝶野正洋、天龍源一郎ら因縁の13人が証言する“燃える闘魂”の光と影。
そして、猪木自身にもインタビューを敢行!
舌出し失神、1・4事変、UWF、新日本身売。
プロレス界「最大の謎」を猪木本人に問う!!


不思議だ。
佐山聡にしろ、前田日明にしろ、藤原喜明だってUWFに行ったのだから、一度はアントニオ猪木と袂を分かったのに、いまではすっかり良好な関係になってしまっている。

そんな印象しか受けない。

それは単純に、時間が解決してくれる、といったたぐいの言葉ですまされる感じがしないのだ。

皆まるで新弟子の頃の感覚が、いつまでも残っていて、一度も縁の切れていないかのような印象すら受ける。

そこまで人を魅了するアントニオ猪木とは何者なのか?
不思議でならない。

猪木は懐が深い、とは聞く話だ。
それは猪木を裏切って全日に移籍した長州力やブルーザー・ブロディを再び新日本プロレスのリングに上げた、という事実を考えれば納得のいく話だ。

しかし、それだけでは説明がつかない魅力を持っている、としか思えない。

新日本プロレスが金曜8時に放送され高視聴率を叩き出していた時代、その裏では『太陽にほえろ』さらに『3年B組金八先生』まで放送されていた。
日本プレロス時代から名前は知られてはいたとしても、新日本プロレスが旗揚げしてから、おそらく10年ほどしかたっていない。

それがとんでもない人気、金脈となっていた。

これはいまでいうならIT企業のようなものだ。

降って沸いたような栄光を持続させるには、ファンの眼を引きつける必要がある。

それが事件を起こすこと。

と思っていたのかどうか知らない。

それでも、それが求心力を持っていたのは確かだろう。
試合結果に不満が爆発し、ファンが暴徒化し、施設を破壊どころか火まで着けちゃうような自体にいたることは、この先きっとないだろう。

そんな事件に巻き込まれ、袂を分かったのに、その人とまた再び良好な関係を築けることなどできるものなのだろうか?
不思議だ。

K-1やプライドなど、総合格闘技の台頭に猪木がからませようとしたことで新日本プロレスも巻き込まれ、プロレスをやりたいと当時人気絶頂の武藤敬司が全日本プロレスに移籍する事件まで起きてしまう。

新日本プロレスがユークスに身売りされるこの時代を『暗黒の時代』と呼ばれている。

本書での藤田和之、
『今現在の新日本が成功しているかどうかは知らないですけど、あの格闘技路線が失敗したから暗黒期といわれてるんであってね。いろんなことに挑戦したという意味では、刺激的な時代だったと思うんですよね』

の発言に、『なるほど』と思ってしまった。

けど、総合格闘技とプロレスは、また違った魅力をもっているものなので、やっぱり間違っていたんだと思う。

巻末の特別インタビュー、サイモン・ケリー
(猪木の元娘婿で暗黒期の最後の社長)のインタビューを読む限り、どうやら猪木一人が悪いわけでもないようだ。

本書では猪木と唯一関係が薄い人物がいる、それは大仁田厚。

嫌われたのか恐れられたのか、とことんまで猪木に無視された大仁田厚。
『あいつの毒は一度飲んだら消せないぞ』
とまで言われた大仁田厚、これはこれですごい話だ。



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