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大人になった女子高生。

9月最初の月曜日。都心へ向かう電車に乗る人の平均年齢がグッと下がった。

彼らはGWやお盆明けのサラリーマンほど絶望的な顔をしていない。なんならちょっと生き生きしているかもしれない。というか休み明けのサラリーマンの顔が酷すぎるんだ。自分もそうだけど。

高校生。JK。DK。果たして「DK」という言葉があるのかは置いておいて、今思うと彼らは最強だ。

体力、精神力、なんでも知っていると思っているが何も知らない彼らに怖いものなどない。

かつて私も最強だった。

寒さ知らずの生足を晒して真冬に自転車を漕いでいた。
体育の授業で平気でグラウンドを何周も走っていた。
化粧なんてしなくても外を歩けた。
歩きながら焼き芋を食べても変な目で見られなかった。
休日はサイゼリヤのミラノ風ドリアとドリンクバーで友人と何時間も話していられた。
学割のカラオケのフリータイムで新しい曲を覚えた。
スクールカバンの派手さでヒエラルキーを争った。
持ってくることを禁止されている分厚い携帯電話に届くメールをカバンの中で逐一チェックしていた。大したメールなんて来ていないけれど。
朝から夕方まで授業を受け、部活に出ても帰り道は騒いでいた。
「彼氏ほしい」と口癖のように言っていた。仲の良い友達がいればそれで十分だったのに、ただ「彼氏ほしい」と言いたいだけだったのだ。

しかし学生時代のバイト先にいた高校生達は自分で稼いだバイト代でファッションを研究し、表参道でパンケーキを食べ、彼氏とお泊まりをし、教習所に通っていた。
羨ましいな、とは思う。そんな華の高校生活を送ってみたかった。でも私は、自分の高校時代にきっと悔いはない。時代の移り変わりだとも思うし。

駅のホームに設置されていたSEVENTEENアイスのレモン味を一口食べただけで全部落としてしまい、親友と泣くほど笑ったあの日のあのベンチにはあの後何万人の人が腰掛けたんだろう。



9月最初の仕事が終わった後、恋人とLINEで「今日もお疲れ様」「気をつけて帰るんだよ」「電車混んでる」「家着いた」「おつかれ」とやり取りをした後、私は新たな話題も振らずに放置している。
今日会社でこんな事があったよ、今日はこんな楽しい事があったよ、今日はこんな美しい景色を見たよ…
驚くことに、伝えたい事が何一つも出てこない。これは彼に対する気持ちがないとかでは決してなく、口に出すほどの1日では無かったと言うことだ。良くも悪くもない1日。今日は何だったのだろう。大人になるって何なのだろう。

iPhoneからフジファブリックの「若者のすべて」が流れてくる。

そうだ、素直さだ。
大人になるにつれ私は自分らしさと素直さを失った。就職活動で身につけた、嘘を並べることと気を遣うことを武器に働くようになった。

せめて、大切な人には大切だと伝えよう。

明日はきっといい日になる。

最後まで読んで下さりありがとうございます。いい日になりますように。